この記事を読んでわかること
・全身性エリテマトーデスとは
・全身性エリテマトーデスの原因
・全身性エリテマトーデスの診断と治療
全身性エリテマトーデス(SLE)は、若い女性に多く発症して、全身の臓器に障害を生じる自己免疫疾患です。
ステロイドを主とする免疫を抑制する治療により、生命予後は比較的良い疾患とされています。
この記事では全身性エリテマトーデスの概要について、有名人・芸能人と関連させながら解説します。
全身性エリテマトーデスとは
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は、若い女性に発症する自己免疫疾患の一つです。
自己免疫の異常によってさまざまな臓器に炎症を引き起こします。
初期症状には、発熱、関節痛、皮膚に現れる蝶形紅斑などがありますが、これらは他の一般的な病気と類似しているため、診断が難しいことが多いです。
日本では6万人の患者さんが難病申請を行って診療されており、医療機関を受診せず診断に至っていない例を含めると12万人ほどが罹患していると考えられています。
男女差でみると、1:9で女性に多い病気です。
様々な年齢で発症することが知られていますが、特に多いのは20-40歳の比較的若い人に多いです。
2014年には石原さとみさん主演のドラマ「ディアシスター」でSLEが話題になりました。
全身性エリテマトーデスの主な症状
SLEは非常に多彩な症状を示すことが知られています。
症状や重症度は個人差が大きく、別の疾患との鑑別が難しいことも多いです。
代表的な症状は以下の通りです。
- 全身症状
- 比較的長期間の発熱、倦怠感などがあります。
- 皮膚症状
- 左右対称に頬が赤くなる「蝶形紅斑」が有名です。日光にあたると症状が悪くなります。
- 腎症
- 50%の人に腎炎(正常の腎臓の機能が働かない)が起きてしまい、人工透析になる方もいます。
- 関節症状
- 筋肉や関節が痛むことがあります。関節リウマチと異なり、骨そのものには変形が少ないことが特徴です。
- 肺症状
- 胸膜炎(肺の外側の膜の炎症)や間質性肺炎(肺胞の外側の壁で炎症が起こる)を起こすことがあります。
- 神経症状
- 抑うつや妄想などの精神症状や痙攣や脳血管障害が多いです。SLEに伴う中枢神経症状をCNSループスといい、発現する場合は重症と判断します。
- 血液減少
- 白血球、赤血球、血小板のどれもが減少する可能性があります。白血球減少が特に一般的です。
- 口腔内潰瘍
- 口の中に潰瘍ができます。口内炎と異なり、痛くないのが特徴です。
全身性エリテマトーデスは美人病?
「全身性エリテマトーデスは美人がなる病気」に近いことを聞いたことがある方もいるでしょう。
これには明確なエビデンスはありません。
あくまで推測の域を出ませんが、やはり若い女性に多く疾患があることが一つの要因でしょう。
蝶形紅斑があればチークを塗ったように頬が赤くなりますし、日光による症状増悪があるので日光を避け、色白にもなりそうです。
炎症が長期間続けば、体重も減少し、ほっそりとしていくことでしょう。
全身性エリテマトーデスの原因
抗DNA抗体という自己抗体が産生され、自身の細胞を誤って攻撃してしまう自己免疫性が考えられています。
その要因としては遺伝性(背景として考えられており、必ずしも遺伝するわけではない)、感染、紫外線などが考えられています。
全身性エリテマトーデスの診断と治療法
診断
以下の11項目の基準のうち、4項目以上を満たした場合をSLEと診断します。
①顔面紅斑、②円板状皮疹、③光線過敏症、④口腔内潰瘍、⑤2関節以上の関節炎、⑥漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)、⑦腎病変、⑧神経学的病変、⑨血液学的異常、⑩免疫学的異常(自己抗体を示唆する所見)、⑪抗核抗体陽性
治療
自身の免疫の暴走を抑える治療が行われます。
主にステロイドが用いられ、効果がない場合には他の免疫抑制剤が用いられます。
その他、高血圧がある場合には降圧剤、関節炎がある場合には解熱鎮痛剤、腎機能が高度に悪化した場合には血液透析など、症状に応じて治療が行われます。
再生医療
近年では様々な分野で再生医療が注目され、SLEにおいても研究が進んでいます。
2022年には北海道大学、札幌医科大学の研究グループにより報告された研究では、モデルマウスに対し、間葉系幹細胞の髄腔内投与で多臓器障害を改善させることが分かりました。
まだ人体に対しての研究にはなっていませんが、ぜひ期待したいです。
当院ではSLEなどの膠原病に対する再生医療は導入しておりませんが、脳卒中後遺症や脊髄損傷の後遺症に対してニューロテック®という幹細胞点滴を導入しております。
さらに、並行してリハビリテーションを行う「神経再生医療×同時リハビリ™」でより高い効果を得られるような工夫も実施しています。
全身性エリテマトーデスと芸能人
岡村咲
プロゴルファーの岡村咲さんは、プロとして活躍中に発症しました。
関節炎が初期症状であり、診断までに約2年かかっています。
セレーナ・ゴメス
アメリカで活躍する女優、歌手のセレーナ・ゴメスさんは2015年にSLEであることを雑誌で発表しました。
発表後も多くの映画やテレビ番組で活躍なさっています。
夏目亜季
現役政治家アイドルの夏目亜季さんは、SLEと闘いながら政治家として活動しています。
SLEだけでなく、二次性シェーグレン症候群や自己免疫性貧血なども合併しているそうです。
全身性エリテマトーデスについてのまとめ
この記事では全身性エリテマトーデスについての概要を、芸能人などを挙げながら解説しました。
ステロイドによる治療で比較的予後がよいとは言っても、多臓器に症状が出てくる疾患であり、生活の質にも大きく影響を与えます。
再生医療など少しでも完治に近づけるような、今後の研究に期待したいす。
よくあるご質問
SLEの生存率は?
SLEの5年生存率は95%と言われています。皮膚や関節炎だけの症状の場合は、発症していない人と予後はほとんど変わりません。一方で臓器障害が思い場合やステロイドが効きにくい場合の予後は悪くなります。
全身性エリテマトーデスで貧血になるのはなぜ?
全身性エリテマトーデスでは自己免疫性溶血性貧血を合併することがあり、それにより貧血になります。また、血球貪食症候群の合併でも極端な貧血が起こります。末梢組織での破壊により白血球が減少したり、免疫性血小板減少性紫斑病で血小板が減少したりすることもあります。
<参照元>
全身性エリテマトーデスマウスに対する間葉系幹細胞治療(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220510_pr.pdf
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