この記事を読んでわかること
背中の痛みの原因がわかる。
多発性硬化症の病態や症状がわかる。
多発性硬化症で病院を受診すべきサインがわかる。
背中の痛みはさまざまな病気で生じる症状であり、大動脈解離や急性膵炎のような危険な病気の可能性があります。
また、多発性硬化症も背中に痛みが生じる疾患の1つで、緊急性が高いわけではありませんが、放置すれば症状が悪化する可能性があります。
この記事では、背中の痛みの原因や多発性硬化症の病態・症状について解説します。
背中の痛みを引き起こす疾患
「数日前から背中に持続的な痛みを認める」「突然背中に電気が走るような痛みを感じる」
一言に背中の痛み(背部痛)といっても、脊椎や脊髄など骨・神経から生じる痛みもあれば、大動脈などの血管、膵臓や胃などの内臓など、痛みの原因はさまざまです。
ここでは、背中の痛みを引き起こす疾患を原因別に示します。
| 原因となる部位 | 代表的な疾患 |
|---|---|
| 骨や脊椎、神経など |
・ぎっくり腰やすべり症、椎間板ヘルニアなどの整形外科疾患 ・脊髄腫瘍、多発性硬化症などの中枢神経疾患 |
| 胃、胆嚢、腎臓などの臓器 |
・尿管結石、腎盂腎炎などの尿路系疾患 ・胃十二指腸潰瘍、胆嚢炎、胆石発作などの胃腸疾患 |
| 心臓や肺、大動脈など |
・急性心筋梗塞、大動脈解離などの心血管系疾患 ・気胸などの呼吸器疾患 ・急性膵炎 |
上記のように、背中に痛みが生じる疾患は多岐に渡り、ぎっくり腰のような比較的低リスクな疾患もあれば、中には発症から数時間で死に至る疾患もあるため、注意が必要です。
また脊髄腫瘍、多発性硬化症などの中枢神経系の場合は、急性期のリスクは決して高くないものの、放置すれば時間経過とともに症状が悪化する可能性があるため、早期発見・早期治療が肝要です。
多発性硬化症による背中の痛み
背中の痛みを伴う疾患として多発性硬化症が挙げられます。
多発性硬化症とは、中枢神経系(脳や脊髄)における脱髄疾患(神経を守る鞘のような構造物が免疫細胞に破壊される)のことです。
神経細胞を保護する髄鞘と呼ばれる構造物に対し、自身の免疫細胞が異物と誤認して攻撃してしまうことで、神経機能が障害されてさまざまな症状をきたします。
多発性硬化症を発症すると脊髄の神経細胞も障害される可能性があり、その結果感覚神経も障害されて背部痛をきたします。
多発性硬化症で生じる背部痛以外の症状は主に下記の通りです。
- 視神経の障害:視力低下、目のかすみ、視野欠損(見えない部分ができる状態)など
- 脳幹部の障害:複視(物が二重に見える)、眼振(目が揺れる)、構音障害(話しづらさ)、嚥下障害(飲み込みづらさ)など
- 小脳の障害:平衡感覚の低下、振戦(手指のふるえ)など
- 大脳の障害:四肢の麻痺やしびれ、認知機能低下など
- 脊髄の障害:体幹や四肢のしびれや痛みや麻痺、背部痛、膀胱直腸障害など
上記のように、多発性硬化症は中枢神経系が多発的に障害される疾患であるため、出現する神経症状も多彩です。
また、多発性硬化症に伴う背部痛はレルミット徴候と呼ばれる特徴的な症状をきたすこともあります。
レルミット徴候とは、首や頭を前方に動かすことで誘発される電気ショックのような突発的な痛みのことで、背中や腕、下肢などに広く伝わります。
要注意!多発性硬化症の危険なサインとは

多発性硬化症は治療をしなければ症状が悪化し、仮に治療をしたとしても再発と寛解を繰り返すこともある病気であるため、早期発見・早期治療が重要です。
特に、下記のような症状を認める方は多発性硬化症の可能性があるため、注意が必要です。
- 数日かけて進行する視力低下や視野障害
- 数時間〜数日かけて進行する麻痺やしびれ
- 膀胱直腸障害(排尿困難や排便困難)
- ふらつき
上記のような症状を複数認める場合、多発性硬化症の初期症状である可能性があるため、早急に医療機関を受診しましょう。
一方で、認知機能の低下や歩行障害などの症状は進行例で出現しやすい症状であるため、すでにこれらの症状を認める方はより注意が必要です。
ただし、多発性硬化症は上記のような症状が必ずしも生じるわけではなく、多彩かつ非典型的な経過を辿る例も少なくないことは知っておきましょう。
まとめ
この記事では多発性硬化症を含む背中の痛みの原因や、多発性硬化症の症状について詳しく解説しました。
背中が痛くなる原因は多岐に渡りますが、もし多発性硬化症を発症している場合、放置すれば症状は徐々に悪化していく可能性があるため、疑わしい場合は早期に医療機関を受診することが重要です。
また、背部痛をきたす疾患の中には多発性硬化症よりも緊急性の高い疾患も少なくないため、特に急激に痛みが走った場合は医療機関の受診を勧めます。
ニューロテック
多発性硬化症の後遺症である視覚障害や麻痺・しびれなどの症状は、患者さん自身の生活の質(QOL)を大きく左右します。
適切なリハビリテーションや日常生活での工夫、家族や介護者による支援を通じて、生活をより快適にすることが可能です。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄の治る力を高める」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
多発性硬化症による神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- 多発性硬化症は完治する病気ですか?
- 多発性硬化症は現代の医療では完治することが困難な病気です。
そのため継続的な治療が必要ですが、早期に治療を開始することで予後が改善することも報告されているため、いかに早く治療を行うかが重要です。
- 背中の痛みの対処法は?
- 背中の痛みの対処法は原因によって異なりますが、基本的には安静にすることが重要です。
一方で、原因が骨や筋肉ではなく内臓や血管による痛みの場合、安静では改善が望めず、早期に医療機関を受診する必要があります。
<参照元>
(1)頸部痛および背部痛の概要|MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/06-%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%A0%B8%E9%83%A8%E7%97%9B%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%83%8C%E9%83%A8%E7%97%9B/%E9%A0%B8%E9%83%A8%E7%97%9B%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%83%8C%E9%83%A8%E7%97%9B%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
(2)多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)|難病情報センタート
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3806
(3)4章 症状|日本神経学会
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/msgl/koukasyo_onm_2017_05.pdf













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