この記事を読んでわかること
脳梗塞の初期症状
一時的に脳梗塞と似た症状が出現するTIAについて
脳梗塞を疑った時に取るべき行動
脳梗塞の初期症状は軽い手足の動かしにくさであることも多く、受診を躊躇される方も少なくありません。
しかし、脳梗塞や一時的に神経症状が出現する一過性脳虚血発作(TIA)などを発症した場合はできるだけ早く受診して治療を開始することが必要です。
この記事では、脳梗塞の初期症状や脳梗塞を疑った際にとるべき行動について解説します。
少し動かしにくいだけに潜む脳梗塞の初期症状
脳梗塞は運動麻痺が出現し、手足が大きく麻痺して、生活が大きく変わる重篤な疾患というイメージがあるかもしれません。
しかし、実際には症状が軽微な場合もあり、脳梗塞の発症に気が付かないことも多くあります。
そのため、脳梗塞の初期症状について正しく知っておくことは重要です。
完全に動かなくなるわけじゃない不全麻痺とは?
脳梗塞を発症すると、運動麻痺が出現することが多くあります。
運動麻痺のイメージは手足が完全に動かなくなるような印象がありますが、実際には症状が軽度なことも多いです。
いわゆる全く動かなくなる状態は完全麻痺といい、少しでも手足に力が入る場合は不全麻痺といいます。
運動麻痺は脳の中でも運動の指令を出す部位や指令が通る神経が損傷することによって出現しますが、損傷の大きさや部位によって完全麻痺になるか不全麻痺になるかが決まります。
脳梗塞を発症してすぐでは脳卒中の重症度を表したNIHSSの点数の中央値が3点であり、ほとんどの方が不全麻痺です。(脳卒中データバンク2024|日本脳卒中データバンク)
そのため、軽度の不全麻痺が出現した場合は脳梗塞が起きている可能性があります。
日常生活で見落としがちな不全麻痺のサイン
脳卒中では発症してからできるだけ早いうちに病院を受診することが大事ですが、症状が軽度で気が付かないと受診が遅れてしまうことがあります。
不全麻痺でありがちなサインとしては、急に字が汚くなった、お箸で物を掴みにくくなった、スリッパが片方だけ脱げやすくなったなどがあります。
これらのサインは加齢による変化として捉えられてしまう場合があり、注意が必要です。
症状が消えても安心できない一過性脳虚血発作(TIA)
脳梗塞によく似ている一過性脳虚血発作(TIA)という疾患があります。
TIAは脳梗塞の様な症状が一時的に出現する病気で、軽い不全麻痺などの症状が出現することが多くあります。
一時的にだけ症状が出現するTIAとは?
TIAは脳の一部分に血液が十分に回らなくなることによって、神経症状が出現することです。(TIA定義について|日本脳卒中学会)
原因は脳の狭くなっている血管が一時的に詰まるなどして血行が途絶えた後、血栓が流れたり溶けたりして、再度開通するためです。
一度、血行が途絶えると麻痺症状などの神経症状が出現し、脳への血行が戻ると元の状態に改善します。
TIAを発症する背景には脳梗塞を引き起こす原因の動脈硬化などがあり、発症後は本格的な脳梗塞へ移行するリスクが上がります。
TIAを放置すると上がる脳梗塞になるリスク
TIA自体は症状が残らない疾患ですが、発症すると90日以内に脳梗塞になるリスクが上がります。(Early Risk of Stroke After Transient Ischemic Attack A Systematic Review and Meta-analysis|JAMA Internal Medicine)
しかし、TIAの発症から早期(24時間以内を目安)に治療を受けた場合は脳梗塞が発症するリスクを減らすことができます。(Effect of urgent treatment for transient ischaemic attack an minor stroke on disability and hospital costs (EXPRESS study):a prospective population-based sequential comparison|Lancet)
そのため、TIAを発症した際はできるだけ早く病院を受診して脳梗塞を予防するための治療を開始することが重要です。
脳梗塞かな?と疑問に思った時に取るべき行動

TIAや脳梗塞はできるだけ早いうちに治療を受ける必要があります。
しかし、症状が軽かったり消失すると受診をためらう方も少なくありません。
ここからは、もしも不全麻痺などの症状が出現した時にとるべき行動について解説します。
まずはFASTでセルフチェックを
脳梗塞を疑った際はまずFASTと呼ばれる脳卒中の症状を確認する方法を行います。
- Face(顔):笑顔になった際に左右差はないか
- Arm(腕):両手を上げた際に片手のみ下に下がってこないか
- Speech(言葉):話すときに呂律が回りにくくなっていないか
- Time(時間):何時に症状が出現したかをチェックし医療機関で報告する
これらの症状があれば迷わずに医療機関を受診しましょう。
少し動きにくい程度でも救急車を呼ぼう
TIAや脳梗塞を発症した際は少しの不全麻痺でも受診をすることをおすすめします。
脳梗塞では発症してから4.5時間以内であればrt-PA療法という血栓を溶かして、症状を軽くする治療を行うことができます。
しかし、受診してすぐに治療を受けられるわけではなくCTやMRIなどの画像検査を受けた後に治療を受けます。
そのため、不全麻痺が出現してからできるだけすぐに受診しないとrt-PA療法を受けるタイムリミットに間に合わなくなる可能性があります。
また、TIAであっても症状が出現してから様子を見ている間に新たな脳梗塞を発症するリスクがあり、できるだけ早く受診して予防治療を行いましょう。
まとめ
この記事では脳梗塞の不全麻痺のサインを見逃さないためのチェック方法やリスクについて説明しました。
不全麻痺とは手足の動かしにくさはあっても動く状態で、脳梗塞やTIAの症状で出現します。
TIAとは一時的に神経症状が出現する疾患ですが、発症後の脳梗塞のリスクが上がるため早期からの治療が重要です
不全麻痺を疑ったときはFASTを使用して、できるだけ早く医療機関を受診する必要があります。
もし、不全麻痺が出て不安がある際は病院を受診し、早期から治療を行いましょう。
よくあるご質問
- TIAの症状が消えてから病院に行っても、検査で異常は見つかるのでしょうか?
- TIAの段階では脳の細胞はまだダメージを受けていないため、頭部MRIを撮っても異常なしと出ます。
しかし、首の血管のエコー検査や心電図などを行うことで、血栓の元(首の血管のプラークや心臓の不整脈)を見つけ、本格的な脳梗塞を未然に防ぐ治療に繋げられる事があります。 - 症状が軽いのに救急車を呼ぶのは申し訳ない気がするので、タクシーや自家用車での受診はダメですか?
- 脳卒中を疑う場合は、遠慮せず救急車を呼んでください。
救急隊員はどの病院なら今すぐ脳卒中の専門治療が行えるかをリアルタイムで把握しており、タクシーで手当たり次第に病院を探すより圧倒的に早く、確実な治療に繋がります。
また、自家用車の運転は不全麻痺の影響もあり危険なため行わないでください。
<参照元>
(1)脳卒中データバンク2024|日本脳卒中データバンク:
https://strokedatabank.ncvc.go.jp/f12kQnRl/wp-content/uploads/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%84%B3%E5%8D%92%E4%B8%AD%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E6%A1%882024%E5%B9%B4_20250219.pdf
(2)TIA定義について|日本脳卒中学会:
https://www.jsts.gr.jp/img/tiateigi_201910.pdf
(3)Early Risk of Stroke After Transient Ischemic Attack A Systematic Review and Meta-analysis|JAMA Internal Medicine Wu CM, McLaughlin K, Lorenzetti DL, Hill MD, Manns BJ, Ghali WA Arch Intern Med 2007;167:2417-2422:
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/770035
(4)Effect of urgent treatment for transient ischaemic attack an minor stroke on disability and hospital costs (EXPRESS study):a prospective population-based sequential comparison|Lancet Ramon Luengo-Fernandez, Alastair M Gray, Peter M Rothwell Vol 8 March 2009 :
https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S1474-4422%2809%2970019-5













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