この記事を読んでわかること
高次脳機能障害患者の服薬管理が難しい理由
段階的な服薬管理の自立への手順
服薬管理に対するチーム医療
脳が障害されることで出現する高次脳機能障害があると服薬管理に影響を与えます。
主な問題として、薬を飲み忘れたり、決められた手順で管理できなかったりすることがあるため医療チームでの包括的なアプローチが必要になります。
この記事では高次脳機能障害が服薬管理に与える影響や自立までのステップ、チームでの関わり方について解説します。
なぜ高次脳機能障害の服薬管理は難しい?症状別のアセスメント

頭部外傷や脳卒中などで高次脳機能障害が出現すると服薬管理を含めた日常生活に影響を及ぼします。
特に注意障害や遂行機能障害が出現すると服薬管理が難しくなります。
薬の見落としや飲み忘れを引き起こす注意障害
注意障害が出現すると服薬に集中することが難しくなり、薬を見落としてしまったり、飲み忘れてしまうことがあります。
注意障害は持続性・選択性・配分性・転換性の4つに分けられますが、特に選択性と転換性注意障害が起こると服薬管理に影響を与えます。(注意障害の臨床|J-stage)
選択性注意障害とはテレビや周りの生活音などがある際に、これらの雑音を無視して作業に集中する注意機能が障害されている状態です。
服薬をする際に選択性注意が障害されていると、他のことに気を取られてしまい飲み忘れや見落としに繋がります。
転換性注意障害は作業を切り替える能力が障害されている状態です。
内服時では一つの薬を飲み終わった際に次の薬を飲む作業に取りかかれないなどの問題が起こります。
注意障害に対しては環境調整を行うことで内服忘れなどの問題の対策を行います。
服薬管理の手順が分からなくなる遂行機能障害
遂行機能障害があると目標に対する計画を立てたり、計画を実行する際に動作に移ることができないなどの問題が出現します。(生活に結びついた遂行機能障害のリハビリテーション|J -stage)
服薬管理では再発を予防するために毎日内服を行う必要がありますが、自発的に内服を行うことが難しくなったり、時間通りに服薬ができないなどの問題が起こります。
遂行機能障害に対しては家族からの声かけや動作を反復して練習するなどの対策を行います。
病棟や退院指導で行う服薬管理のステップと環境調整
病棟で退院に向けた服薬管理の指導を行う際は段階を踏んで行います。
まずは患者の現状把握から開始し、手伝う量を徐々に支援を減らしていきます。
患者の現状の管理能力の評価
服薬管理の支援にあたり、患者の現状の管理能力を把握することは重要です。
チェックする項目として、以下が挙げられます。
- 内服をする認識があるか
- 飲み忘れがないか
- 時間通りに内服ができるか
- シートから薬を取り出せるか
- 落とした際に気がつくか
これらの項目をチェックし、できていない部分に対してアプローチを行います。
自己管理を確立していくためのステップ
服薬の自己管理方法を確立するためには、入院中から少しずつ患者が自分で管理を行えるように促していくことが大切です。
まずは先ほどのチェックリストを使用して、服薬管理の中で苦手な部分を確認します。
作業療法士や言語聴覚士と相談し、反復して練習を行うことで自立ができるのか、それとも難しいのかを判断します。
もし反復練習で自立が難しいと判断した場合、環境調整を行って難易度を下げるように支援を行います。
服薬管理の期間に関しても、まずは毎食ごとに全ての薬を飲めるか確認し、1日配薬・1週間配薬など徐々に期間を伸ばして練習します。
退院後の生活を見据えた環境調整やチーム医療でのアプローチ
入院中に行う服薬管理の練習は、退院後の生活を見据えて行います。
退院後の生活を想定した服薬管理は環境調整を行ったり、チーム医療でアプローチして自立を目指します。
カレンダーやピルケースを利用した環境調整
服薬管理を自立するためには環境調整を行うことが重要です。
代表的な環境調整は服薬カレンダーやピルケースを使用した管理方法です。
服薬カレンダーとは、曜日や時間帯ごとに薬を入れるポケットがついているカレンダーです。
事前にカレンダーのポケットに薬をセットしておくことで、視覚的に飲み忘れを確認できることがメリットです。
ピルケースは薬を小分けにして管理することができる入れ物のことです。
種類により、1日ずつ小分けにできるタイプや時間ごとに分けていれることができるタイプなどがあります。
ピルケースを使用することで、薬を飲むタイミングが視覚化できるため飲み忘れの防止に役立ちます。
多職種で包括的にアプローチを行うチーム医療
高次脳機能障害がある患者が服薬管理を自立するためにはチーム医療での関わりが不可欠です。
服薬指導の最初のステップである評価の段階で作業療法士や言語聴覚士と高次脳機能障害による影響を確認することで適切な考察に繋げることができます。
さらに作業療法士とは薬をシートから取り出せるか、適切な物品の選定にも関わります。
他の職種としては、たくさんある薬の飲み忘れを防ぐために薬剤師と相談して一包化などの選択を取ることがあります。
また、近年はチーム医療の中に家族と役割を分担することが推奨されています。(チーム医療のあり方|厚生労働省資料)
家族指導を行い、患者が服薬管理の苦手な部分を介助できるようにします。
例えば、服薬カレンダーへの薬のセットや飲み忘れがないかの確認を家族が行うなどの方法があります。
このように、医療チームで関わることで患者の服薬管理方法の確立に繋げることができます。
まとめ
この記事では高次脳機能障害がある患者に対する服薬管理の支援について解説しました。
高次脳機能障害が出現すると服薬管理に大きな影響を与えます。
服薬管理を自立するためには段階を踏んで、アプローチを行うことが必要です。
チームで関わり、環境を整えることが服薬管理方法の確立に有効です。
頭部外傷や脳卒中で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄の治る力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 何度も服薬を行ったかを聞いてくる患者にはどう対応すべきですか?
- 記憶障害がある場合、何度言葉で飲んだことを伝えても納得できず、不安が強まることがあります。
その都度、服薬カレンダーの空になったポケットを一緒に見て、視覚的な証拠を提示すると安心しやすくなります。
- 退院後、毎回薬のセットや確認をするのが負担ですが、何かいい方法はありませんか?
- 家族の介護負担軽減のためには、地域の訪問看護や薬剤師による居宅療養管理指導の導入があります。
専門職が週に1〜2回訪問して薬のセットや残薬確認を行うだけでも、家族の心理的負担は大きく軽減されます。
<参照元>
(1)注意障害の臨床|J-stage 高次脳機能研究 第28巻 第3 号 2008https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/28/3/28_3_320/_pdf/-char/ja
(2)生活に結びついた遂行機能障害のリハビリテーション|J -stage 高次脳機能研究 第39巻 第 2号 2019https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/39/2/39_196/_pdf/-char/ja
(3)チーム医療のあり方|厚生労働省資料https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000wyk3-att/2r9852000000wymt.pdf













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