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脊髄損傷後に歩行を獲得できるのか?

           

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この記事を読んでわかること

歩行に大きな影響を与える損傷の度合い
神経の信号が伝わらなくても歩行の獲得ができる損傷レベル
リハビリテーションで目指すその人に合った移動手段の獲得


脊髄損傷を負うと、損傷した部位よりも下に身体を動かす信号が伝わらなくなり、身体に様々な症状が出現します。
特に手足や体幹を動かしにくくなる運動麻痺が出現すると、歩行を行うことが難しくなることがあります。
この記事では脊髄損傷後に再び歩けるようになる可能性を障害の度合いに分けて説明します。
また、あわせてリハビリテーションで目指す移動方法の確立についても解説します。

歩行の可能性を左右する完全損傷と不全損傷の違い

介助者の手を借りて車いすから立ち上がろうとしている老人
脊髄損傷を受傷すると損傷した部分で脳からの信号が途絶えるため、障害されている部分より下の身体を動かすことが難しくなります。
特に受傷後に下半身が動かなくなると歩くことが困難になります。
そのため、病院でのリハビリテーションでは移動手段を再獲得することが一つの大きな目標になります。
そこで問題になるのが、歩行の再獲得ができるかどうかです。
歩行の再獲得には損傷した神経が一部残っている不全損傷か、全く信号を送れなくなった完全損傷のどちらであるかが重要です。

一部の神経が残っている不全損傷

脊髄損傷の重症度の分類でASIA Impairment Scale(AIS)があります。

この分類では、以下のように損傷度合いが分類されています。

GradeA 完全損傷、肛門周囲までの感覚・運動が完全麻痺
GradeB 知覚のみ残存、肛門周囲の感覚は残っており、運動は完全に麻痺
GradeC 運動の不全麻痺(実用性なし):損傷したレベル以下の運動ができるが、筋力低下が大きい
GradeD 運動の不全麻痺(実用性あり):損傷したレベル以下の運動ができ、筋力低下はあるものの実用的に使用できる
GradeE 正常、感覚・運動ともに後遺症が残らない

AISではGradeB〜Dが神経の一部が残存している不全損傷と分類されます。
不全損傷の中でも歩行が可能な分類はGradeDです。
脊髄損傷を受傷し入院直後のAISから、退院時のAISは不全損傷の方では改善する可能性があります。

特に60歳未満で入院時のAISがGradeCの方は退院時に55%の方がGradeDに移行します。
そのため、入院後のリハビリテーションでは歩行の再獲得を目指した治療を行います。
しかし、完全損傷のGradeAでは退院時もGradeAのまま留まる割合が高いです。

損傷した部位よりも下の身体が動かなくなる完全損傷

AISのGradeAに分類される完全損傷の方は神経が改善せず、動かなくなった部位が再度動き出す可能性がほとんどありません。
損傷した高さによっては通常の動作を行うことが難しく、身体の機能に合わせた方法を工夫する必要があります。
そのため、入院中のリハビリでは残存している機能を最大限に活かして可能な動作の獲得を目指します。

完全損傷でも実用歩行の獲得が期待できる損傷レベル

実用的な歩行の獲得を目指すことができるのは第3腰髄より上の機能が残存している場合です。
第3腰髄は膝を伸ばす筋肉を動かしており、体重を支えて安定した歩行を行うために必要な部位です。
一つ下の第4腰髄は主に足首を上に持ち上げる筋肉を動かしています。
そのため、第4腰髄が障害されている場合は歩行時の引っ掛かりが増えるため、足首を支える装具を使用した歩行の再獲得を目指します。
第3腰髄より上の機能が障害を受けた場合は、長下肢装具と呼ばれる大腿部まで長さのある装具を使用して訓練レベルで歩行練習を行うことがあります。
しかし、実生活で長下肢装具を使用した歩行を行うことは身体への負担も大きく、実用的ではありません。

自分らしい移動手段の獲得を目指す脊髄損傷後のリハビリテーション

脊髄損傷のリハビリテーションの目的の一つに移動手段の確立があります。
生活を営むためには何らかの移動手段がないと日常での制限が大きくなることから、移動手段を再獲得することは非常に重要です。
脊髄損傷を受傷した後は、不全か完全損傷か、受傷した脊髄の高さがどのレベルかなどによって退院後の移動手段を検討します。

歩行を再獲得することに越したことはありませんが、無理な歩行動作を繰り返して行うと変形性関節症や頚椎症などの障害を引き起こすことがあります。
そのため、実用的な歩行を獲得することが難しい場合は車椅子での生活を選択します。
車椅子は様々な種類があり、屋外でも駆動しやすいタイプや電動式などそれぞれの身体機能や生活スタイルに合わせて選択することができます。
病院でのリハビリテーションは、その人の身体の状態に合わせた生活スタイルを獲得できることを目指します。

まとめ

この記事では脊髄損傷後の歩行を含む移動方法について解説しました。
脊髄損傷はAISによって分類され、不全損傷の中でもGradeDまで改善した方が実用的な歩行の再獲得を目指すことができます。
完全損傷であってもL4以下の損傷であれば装具を使用した歩行動作の再獲得を行います。
リハビリテーションでは身体の状態と生活スタイルに合った移動手段の確立を目指します。
脊髄損傷で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄の治る力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。

よくあるご質問

実用的な歩行と訓練としての歩行の違いは何ですか?
実用的な歩行とは自宅内や屋外で、実際に使うことができる安全で効率的な歩行のことです。
訓練としての歩行とは移動手段として歩行を行うのではなく、健康維持・増進を目的に運動として歩行を行うことです。
長下肢装具を作れば家の中を歩いて移動することができますか?
長下肢装具を使って歩く際は両腕の力を大きく使い、足を振り子のように動かして歩行を行います。
そのため、実用的に家の中を移動する手段としては負担が大きく、実際には車椅子を使用した家の中の移動を選択される方が多いです。

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    1:急性期脊髄損傷における臨床評価に関するガイドライン 追補|PMDA:https://www.pmda.go.jp/files/000221655.pdf
    2:Alizadeh A, Dyck SM, Karimi-Abdolrezaee S. Traumatic Spinal Cord 脊髄損傷のリハビリテーション医療における帰結予測|J -stage Jpn J Rehabil Med 2019;56:537-540:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/7/56_56.537/_pdf/-char/ja
    3:脊髄損傷理学療法ガイドライン|理学療法ガイドライン第2版:https://cms.jspt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/2nd%20edition/p107-129_02.pdf

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    PROFILEこの記事の監修
    貴宝院 永稔
    貴宝院 永稔 医師
    (大阪医科薬科大学卒業)
    • 脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
    • 日本リハビリテーション医学会認定専門医
    • 日本リハビリテーション医学会認定指導医
    • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
    • ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

    私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
    リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
    このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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