この記事を読んでわかること
パーキンソン病におけるヤール分類についてわかる。
ヤール分類によって受けられる公的保険の違いがわかる。
ヤール分類と難病医療費助成制度の関係がわかる。
パーキンソン病は振戦や筋固縮、動作緩慢など、さまざまな神経症状によって日常生活に支障をきたす病気です。
重症度の評価にはヤール分類が用いられ、その重症度に応じて利用できる公的保険や公的助成も異なるため、注意が必要です。
この記事では、パーキンソン病におけるヤール分類や、重症度による医療保険の適応について解説します。
パーキンソン病におけるヤール分類とは

近年、高齢化の影響で世界的に患者数の急増が懸念されるパーキンソン病。
中脳の一部である黒質と呼ばれる部位が原因不明に変性してしまうことで、本来脳内で分泌されるはずのドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が枯渇し、主に下記のような症状が出現する病気です。
- 振戦(ふるえ)
- 筋固縮・筋強剛
- 動作緩慢
- 姿勢反射障害
これらの症状が出現することで、社会生活をこれまで通り営めなくなったり、症状が進行すれば歩行や食事などの基本的な日常生活動作も障害され、生活に大きな影響を及ぼします。
パーキンソン病はその症状の程度によって重症度分類されますが、その評価には主にHoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)重症度分類、もしくは生活機能障害度分類が用いられます。
Hoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)重症度分類と生活機能障害度分類はそれぞれ下表のとおりです。
| Hoehn-Yahr(ホーエン・ヤール)重症度分類 | |
|---|---|
| 重症度 | 状態 |
| 0度 | パーキンソン病の症状なし。 |
| 1度 | 体の左右片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる状態。 日常生活への影響は軽微。 |
| 2度 | 体の左右両側に手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる状態。 日常生活がやや不便になる。 |
| 3度 | 小刻み歩行・すくみ足・姿勢反射障害など、軽度〜中等度の症状がみられる状態。 日常生活に支障が出るが、介助は不要で、社会活動も継続できる。 |
| 4度 | 高度障害によって生活のさまざまな場面で介助が必要となる。 歩行だけは介助不要でどうにか可能な状態。 |
| 5度 | 全ての動作に介助が必要で、車椅子かベッド上での生活になる。 |
| 生活機能障害度分類 | |
| 重症度 | 状態 |
| 1度 | 日常生活、通院にほとんど介助を要しない。 |
| 2度 | 日常生活、通院に部分的介助を要する。 |
| 3度 | 日常生活に全面的介助を要し、単独では歩行起立不能。 |
どちらの分類も数字が大きくなるほど重症度が増していき、分類によって治療方針の決定や薬の調整、受けられる支援や介護の内容も変わってきます。
ヤール分類と医療保険・介護保険の関係性
パーキンソン病の症状が進行して、日常生活における介護や看護が必要になると、看護師が自宅に訪問して医療を提供する訪問看護が必要となります。
この際、訪問介護は医療保険、もしくは介護保険のいずれかが適用されますが、どちらの適応になるかで受けられる利用条件が下記のように異なるため、注意が必要です。
| 利用条件 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 支給限度額 | 上限なし | 上限あり |
| 利用回数 | 週3回が上限 | 制限なし |
| 利用時間 | 1回30〜90分 | 20分未満、30分未満、30分以上60分未満、60分以上90分未満の中から選べる |
パーキンソン病においては、「厚生労働大臣が定める19の疾病と1つの状態」に該当するため、ホーエン・ヤール重症度分類がステージ3以上で、生活機能障害度が2度または3度である場合、医療保険が適用されます。
またこの場合、通常は週3回の訪問が上限であるところ、より高度な看護が必要になると判断され、週4回以上の訪問が可能であり、さらに複数の訪問看護事業所の利用も可能となります。
一方で、医療保険を適応させるためには、主治医が訪問看護指示書に「ホーエン・ヤールの重症度分類かつ生活機能障害度」を記載する必要があるため、注意が必要です。
訪問看護指示書に重症度の記載がない場合や、これらの重症度に満たないパーキンソン病患者においては、介護保険が適応され、その利用条件の範囲内で訪問看護を利用することができます。
ヤール分類と指定難病の関係性
上記と同様に、ホーエン・ヤール重症度分類がステージ3以上で、生活機能障害度が2度または3度である場合、難病医療費助成制度の対象となります。
難病医療費助成制度とは、今だに根治的な治療法が確立されていない指定難病において長期的に生じる治療・介護等の医療費の負担を軽減するための制度です。
主な助成内容は、医療費の自己負担割合が原則2割に軽減され、さらに所得に応じて月毎の自己負担上限額も設定されています。
パーキンソン病の進行を完全に食い止める根治治療は今だ存在せず、時間の経過とともに症状は少しずつ進行します。
症状が軽症であることに越したことはありませんが、もし重症化したとしても、自己負担を軽減するために国の助成や公的保険をしっかり理解し活用することが重要です。
まとめ
パーキンソン病はそこまで予後不良な病気ではなく、平均余命は健常者と比較して2〜3年短くなる程度ですが、症状が進行すれば生活する上でさまざまな支障をきたします。
働けなくなったり、食事や歩行などの基本的な動作も困難に陥る可能性があるため、注意が必要です。
この記事で紹介したように、症状が進行した方は医療保険や難病医療費助成制度を利用することで、さまざまな支援やサービスを受けることができるため、ぜひ活用することを勧めます。
また、パーキンソン病に対する根治療法は現在に至るまで確立されていませんが、近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
パーキンソン病による神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- パーキンソン病のヤール分類の評価方法は?
- パーキンソン病のヤール分類では、症状のでている部位や日常生活動作への影響、さらには介護の必要性の有無などを総合的に評価し、医師が分類します。
その分類によって受けられる支援や助成も異なります。
- パーキンソン病におけるヤール分類とは?
- ヤール分類は正式にはHoehn-Yahr重症度分類といい、1967年にHoehn氏とYahr 氏が医学雑誌「Neurology」内の論文で用いたのが始まりです。
その簡便さから国内外問わず世界中で認知され、現在でも臨床の現場で広く利用されています。
<参照元>
(1)パーキンソン病(指定難病6).難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/314
(2)訪問看護の仕組み.厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000123638.pdf
(3)介護保険制度の概要.厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/001512842.pdf
(4)指定難病患者への医療費助成制度のご案内.難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460
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