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前脊髄動脈症候群の原因と症状を解説

           

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この記事を読んでわかること

前脊髄動脈症候群の原因がわかる
前脊髄動脈症候群の症状がわかる
前脊髄動脈症候群の診断方法がわかる


前脊髄動脈症候群とは、脊髄の腹側2/3を栄養する前脊髄動脈が何らかの原因で閉塞し、脊髄の機能が障害される病気です。
出現する神経症状はさまざまですが、麻痺やしびれ、膀胱直腸障害など日常生活に与える影響は少なくありません。
この記事では、前脊髄動脈症候群の原因や症状、診断方法などについて詳しく解説します。

前脊髄動脈症候群の主な原因

前脊髄動脈症候群の主な原因
前脊髄動脈症候群とは、脊髄を栄養する動脈である前脊髄動脈が閉塞、あるいは虚血に陥ることで、脊髄の腹側2/3の機能が障害されてしまう病気です。
脳の血管が閉塞する脳梗塞であれば、その原因は高血圧や糖尿病・高脂血症・喫煙などに伴う動脈硬化であることが多いですが、前脊髄動脈症候群の原因としては動脈硬化の関与は少ないとされています。
また脊髄は脳と異なり栄養する血管が多岐に渡り、側副血行路が豊富であることから虚血に陥りにくいとされています。
では、なぜ前脊髄動脈症候群が生じるのでしょうか?
主な原因は下記の通りです。

  • 大動脈瘤による圧迫
  • 手術・カテーテル操作に伴う医原性
  • アテローム塞栓症
  • ベーチェット病や結節性多発性動脈炎などの血管炎
  • 左房粘液種などの腫瘍塞栓
  • 血圧低下
  • 何らかの感染症

前脊髄動脈症候群の原因は多岐に渡りますが、近年では大動脈に対する手術の普及や大動脈にカテーテルを通すような血管内手術の普及に伴い、心血管系の手術による医原性の発症が増加傾向です。
また大動脈瘤とは血管壁が脆弱化して瘤状に膨らむ疾患であり、それによって脊髄外にある血管が圧迫を受けることで、脊髄への血流が低下して前脊髄動脈症候群に至ります。
他にも、上記で示したようにさまざまな疾患・病態で発症する可能性がありますが、一方で原因を断定できないケースも少なくありません。

症状の現れ方と診断方法

前脊髄動脈症候群においては、神経症状の出現の仕方が特徴的であり、主に下記のような症状です。

  • 虚血レベル以下の運動麻痺
  • 虚血レベル以下の解離性感覚障害
  • 膀胱直腸障害

前脊髄動脈は脊髄の腹側2/3を栄養しており、そのため腹側2/3が担っている機能が障害されます。
脊髄の腹側には脳から身体への運動の指令経路が上から下に走行しているため、障害された部位から下位レベルでの麻痺が生じます。
例えば、頸髄で発症した場合は上肢も下肢も、腰随で発症した場合は下肢のみに麻痺が生じるわけです。
次に、身体から脳への感覚の情報は、脊髄内部を下から上に向かって上行して伝達されますが、感覚の種類によって脊髄のどの部分を走行するかが異なります。
例えば、触覚や位置覚、振動覚などの深部知覚は脊髄背側を走行するため、前脊髄動脈症候群を発症したとしても影響を受けません。
一方で、痛い・熱いなどの温痛覚は脊髄の腹側を走行するため、前脊髄動脈症候群によって障害されます。
このように、知覚の種類によって機能が温存されるか障害されるか異なる状態を解離性感覚障害と呼びます。
また、脊髄腹側には膀胱や直腸の運動を調整する神経も走行しているため、前脊髄動脈症候群では膀胱・直腸の機能が障害され、尿閉や失禁などの症状が出現するため注意が必要です。
このような特徴的な症状をきたすため、診断においては患者への問診や神経診察が非常に重要です。
また、画像診断としては、脊髄を解剖学的にも、また血流の有無でも評価可能なMRI検査が非常に重要であり、脊髄を圧迫するような病変の有無、脊髄の髄内病変を明らかにするとともに、虚血に伴う脊髄の浮腫状変化や壊死の有無などを評価する必要があります。

再生医療の未来:幹細胞治療の希望

脊髄を構成する神経細胞は一度壊死に陥ると、基本的に再生することができません。
そのため、前脊髄動脈症候群によって麻痺やしびれが生じた場合、現状ではリハビリテーションによる機能の維持・改善が基本的な治療法です。
しかし、近年では幹細胞を用いた再生医療が非常に注目されています。
自身の身体から採取した幹細胞を体外で増幅させ、体内に戻すことで幹細胞が損傷した神経細胞に分化・増殖し、神経細胞の再生を促す効果が期待されます。
現状ではまだ前脊髄動脈症候群に対する再生医療の効果について知見に乏しく、今後の更なる知見が待たれるところです。

まとめ

今回の記事では、 前脊髄動脈症候群の原因と症状、診断方法について詳しく解説しました。
医原性、もしくは何らかの病気によって前脊髄動脈が閉塞・解離する前脊髄動脈症候群では、脊髄の腹側2/3の機能が障害されることでさまざまな神経症状を来します。
麻痺やしびれの程度にもよりますが、重度の神経症状の場合はその後後遺症として残ってしまい、日常生活や社会生活に大きな支障を来します。
もし後遺症が残った場合、現状リハビリテーションなどが主な治療法ですが、完全に根治することは困難なケースが多いです。
そこで、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、前脊髄動脈症候群による神経学的後遺症の改善も期待できます。

よくあるご質問

前脊髄動脈症候群の原因は?
前脊髄動脈症候群は、大動脈の外科的手術や血管内治療に伴う医原性原因であることが主です。
脳梗塞と異なり動脈硬化が原因となることは少なく、また原因を特定できないことも少なくありません。

前脊髄動脈は脊髄のどこを支配していますか?
前脊髄動脈は脊髄の腹側2/3を支配しており、腹側2/3の部位では運動機能や温痛覚・膀胱直腸の機能などを担います。
そのため、前脊髄動脈症候群では四肢麻痺や解離性感覚障害・膀胱直腸障害を来します。

<参照元>
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/45/2/45_2_472/_pdf
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/42/4/42_4_1552/_pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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