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ナイダス破裂による脳出血の原因と症状を解説

           

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この記事を読んでわかること

ナイダスができる病態が理解できる
ナイダスと脳出血の関係が理解できる
ナイダスに対する治療がわかる


先天奇形である脳動静脈奇形という病気では、ナイダスと呼ばれる脆弱な血管が頭蓋内で形成されるため、脳出血のリスクが高いです。
徐々にナイダスが巨大化していくとさまざまな症状をきたし、一度破裂すれば死に至る可能性もあるため、危険な病気です。
この記事では、ナイダス破裂による脳出血の原因や症状、治療法について詳しく解説します。

ナイダス破裂の主な原因とは?

ナイダス破裂の主な原因とは?
脳出血の原因の1つにナイダス破裂が挙げられます。
ナイダスとは脳動静脈奇形と呼ばれる病気に見られる典型的な異常血管のことで、通常の血管と比較して壁が脆く破綻しやすいため、脳出血の原因となる可能性があり注意が必要です。
本来、心臓から駆出された血液は脳の動脈に入り、そこから毛細血管と呼ばれる細い血管に入ることで流速を低下させ、十分な時間をかけて脳に酸素や栄養分を渡し、逆に脳から老廃物や二酸化炭素を回収します。
毛細血管を通過した血液は脳の静脈に入り、そのまま心臓に返っていくのが通常の流れです。
しかし、脳血管の形成が行われる妊娠初期の胎児の時に、異常が生じて脳の動脈と静脈が毛細血管を経由することなく直接繋がってしまった状態が脳動静脈奇形です。
高圧の動脈血が毛細血管で減速することなく静脈系に流入するため、バイパスとなるナイダスにも高い圧がかかり、少しずつナイダス自体が巨大化していくこともあります。
ナイダスが巨大化すると周囲の正常な脳を圧迫するため、頭痛や認知症、てんかん発作などを引き起こす可能性があり、注意が必要です。
また脆弱化したナイダスの血管壁に、動脈系から高圧の血液が流入するため、ナイダスは破裂しやすく、くも膜下出血や脳出血を引き起こす可能性もあります。
では、なぜ脳動静脈奇形が生じるのでしょうか?
脳動静脈奇形は先述の通り、あくまで先天的な奇形であり、特定の原因などは認められません。
多くの場合、遺伝することもないですが、一部に遺伝性の脳動静脈奇形であるHHT(Hereditary Hemorrhagic Telangiectacia)またはオスラー病といった病気も存在します。
どちらにせよ、ナイダスがあれば脳出血のリスクが高いため、十分注意すべき病態です。

脳出血が引き起こす具体的な症状

ナイダス破裂に伴う症状は主に下記の通りです。

  • 麻痺
  • しびれ
  • 言語障害
  • 意識障害

動脈が破綻して生じる通常の脳出血と比較して、脳動静脈奇形の破裂に伴う脳出血の場合は静脈性の出血であることも多く、出血の程度は軽いと考えられていますが、出血量が多いと重症化して死亡する可能性もあります。
また、脳動静脈奇形の破裂は20〜40代の男性に多く、通常の脳出血よりも発症年齢が若いため、後遺症が残らないように早期から適切な対応を行うことが重要です。
また、一度破裂したAVMが1年以内に再出血する可能性は6〜17.8%と高率であり、再出血すればさらに神経学的予後は悪化する可能性が高いため、安全に治療できる場合であれば積極的に治療を行うべきです。

幹細胞による脳動静脈奇形の治療と展望

幹細胞による脳動静脈奇形の治療と展望
脳動静脈奇形に対する標準的な治療は下記の通りです。

  • 経過観察
  • 開頭による脳動静脈奇形の摘出
  • 血管内治療による塞栓術
  • 体外からの定位放射線照射

まず、脳動静脈奇形のナイダスの位置によっては手術そのもののリスクが高く、手術侵襲によって出血を引き起こしてしまう可能性もあるため、ハイリスクな場合は経過観察となることもあります。
ただし、放置すると出血してしまうリスクがあるため、安全に治療できる可能性が高いと判断された場合は、上記3つの治療法の単独実施、もしくは併用が検討されます。
開頭による脳動静脈奇形の摘出は基本的に再発リスクがないですが、手技自体が高難度で、手術によって正常な脳を傷つけてしまう可能性もあり注意が必要です。
一方で、血管内治療による塞栓術は再発リスクがあり、定位放射線照射では被曝リスクもあります。
そこで、最近では新たな治療法として幹細胞治療も注目されています。
自身の体から採取した幹細胞を培養・増幅して体内に戻すことで、幹細胞が損傷した組織の細胞へと分化し、さまざまな機能を発揮するという治療法です。
特に、脂肪細胞から採取した脂肪由来幹細胞は血管内皮細胞に分化しやすく、血管の修復や抗炎症作用をもたらすことで、ナイダス破裂を未然に防いでくれる効果が期待され、今後の知見がまたれるところです。

まとめ

今回の記事では、ナイダス破裂による脳出血の原因と症状について詳しく解説しました。
脳動静脈奇形によって形成されるナイダスは脆弱であり、50%が脳出血で発症する病気です。
一度脳出血になれば、正常な脳細胞が破壊されて麻痺やしびれなどの重篤な後遺症を負う可能性があります。
現状、後遺症に対してはリハビリテーションが主な治療法であり、根治することは困難です。
一方で、最近では脳細胞や血管内皮細胞の再生を目指す再生医療の発達も注目されています。
さらに、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、ナイダス破裂に伴う神経学的後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

ナイダスとはどういう意味ですか?
ナイダス(Nidus)はラテン語で「巣」という意味です。
脳動静脈奇形によって形成されたトグロを巻いたような異常な血管の集合体のことを指し、造影するとまるで巣のように見えることからナイダスと呼ばれます。

脳動静脈奇形は生まれつきですか?
脳動静脈奇形は生まれつき血管に奇形が生じる病気ですが、最初はナイダスも小さく、特に症状を認めません。
加齢とともにナイダスが大きくなり、10〜30代で発症することが多いです。

<参照元>
・MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-脳、脊髄、末梢神経の病気/脳卒中/脳動静脈奇形(avm)
・慶應義塾大学医学部外科脳神経外科学教室:https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/angiopathy/03.html
・小児慢性特定疾病情報センター:https://www.shouman.jp/disease/details_next/11_15_036/

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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