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脳卒中と神経因性膀胱の関係

           

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この記事を読んでわかること

排尿や蓄尿の正常なメカニズムがわかる
脳卒中に伴う神経因性膀胱のメカニズムがわかる
神経因性膀胱のタイプや、それに応じた管理法がわかる


血液から不純物をろ過して作られる尿は、腎臓から尿管を通り膀胱に貯められます。
しかし、脳卒中や脊髄病変・末梢神経障害などによって正常な膀胱や尿道の機能が失われると、神経因性膀胱と呼ばれる排尿障害をきたすため注意が必要です。
そこでこの記事では、脳卒中による神経因性膀胱の発症メカニズムや、症状・管理法などについて解説します。

脳卒中による神経因性膀胱の発生メカニズム

脳卒中と神経因性膀胱の関係
そもそも膀胱の機能とはどのようなものでしょうか?
腎臓に流入した血液がろ過されると尿が生成され、左右の尿管を経由して膀胱に流入します。
膀胱は容量300〜500ml程度の袋状の器官であり、150〜300mほど尿が蓄積すると尿意を自覚し、膀胱が収縮して尿道から体外に排尿される仕組みです。
この時、膀胱や尿道の機能には複数の神経が関与しており、尿の蓄積と排出を効率よくおこなっています。
しかし、脳卒中などを引き起こすと、これらの神経回路が乱され、正常な蓄尿・排尿が得られなくなります
脳卒中による神経因性膀胱の発生メカニズムを理解するためには、まず正常な膀胱機能を知る必要があるため、蓄尿と排尿、それぞれのメカニズムを理解しましょう。

蓄尿

尿が膀胱に溜まり始めると膀胱が徐々に伸展し、その伸展刺激は脊髄を経由して脳に伝達されます。
まだ十分尿が溜まっていないため、脳は延髄→仙髄を経由して膀胱が収縮しないように下腹神経を刺激します。
下腹神経が刺激されると、膀胱の筋肉である排尿筋が弛緩・内尿道括約筋が収縮することで、膀胱は広がり、出口となる尿道が閉まるため、蓄尿されるわけです。

排尿

尿が十分膀胱に充満すると、再びその情報は膀胱から脳に伝達され、橋と呼ばれる部位を経由して仙髄に排尿刺激が入ります。
仙髄の興奮は骨盤神経を刺激し、排尿筋が収縮・内尿道括約筋が弛緩することで、膀胱が収縮し、出口である尿道が開くため、排尿が起こります。
この時、随意筋(自分の意思で収縮させることができる筋肉)である外尿道括約筋を収縮させることで、排尿を一時的に止めることが可能です。
このように、正常な蓄尿・排尿には多くの神経・筋肉の連動した働きが必要であり、これらの神経回路のいずれかに障害が出ると、膀胱の動きをうまくコントロールできなくなり神経因性膀胱に至ります。
脳卒中に罹患して脳幹(中脳・橋・延髄)や大脳が障害されれば、排尿障害が起こるのはこのためです。

脳卒中後の神経因性膀胱の症状と管理

神経因性膀胱の症状は、障害される神経の位置によって2つに大別されます。

  • 中枢型神経因性膀胱:仙髄より上位、つまり脊髄や脳が障害される場合
  • 末梢型神経因性膀胱:仙髄以下、末梢神経が障害される場合

このうち、脳卒中に伴う神経因性膀胱は中枢型神経因性膀胱に分類されます。

中枢型神経因性膀胱

中枢型神経因性膀胱の主な原因疾患は、頸髄や胸髄・腰髄などの脊髄の損傷や、脳卒中・パーキンソン病・アルツハイマー型認知症・多発性硬化症などの脳疾患です。
この場合、排尿の反射の抑制が効かなくなり、十分蓄尿できていないにもかかわらず排尿の刺激が入ってしまうため、頻尿・尿意切迫感・尿失禁などの蓄尿障害が生じます。
蓄尿障害が日常生活に与える影響としては、夜間の頻尿による不眠や、意図していない尿失禁などが挙げられ、膀胱の運動をコントロールするような管理が求められます。
具体的には、下記のような管理方法です。

  • 膀胱の活動を抑える内服薬を使用する
  • 膀胱や骨盤底筋群の訓練をおこなう
  • 電気を流して膀胱に関連する神経の働きをコントロールする

中でも、内服薬の使用は一般的な治療であり、抗コリン剤やβ3受容体刺激剤が使用されます。

末梢型神経因性膀胱

一方で、末梢型神経因性膀胱の主な原因は、二分脊髄や脊髄髄膜瘤などの仙髄機能障害や、癌転移・糖尿病などに伴う下腹神経・骨盤神経などの末梢神経障害です。
この場合、正常な排尿反射が失われるため、効果的な膀胱の収縮が得られず、尿道括約筋も弛緩しないため、尿が出にくい・出ても線が細いなどの排尿障害が出現します。
排尿障害が日常生活に与える影響としては、膀胱内圧上昇に伴う腎後性腎不全や、尿滞留に伴う尿路感染症などが挙げられ、膀胱の運動を活性化するような管理が必要です。
具体的には、下記のような管理方法です。

  • 尿道に管を入れて定期的に導尿をおこなう
  • 膀胱を収縮させる内服薬を使用する

このうち、最も推奨される管理方法は自己導尿ですが、原因疾患によって尿意を自覚できないこともあるため、時間や回数を決めておこなうことが一般的な管理方法となります。

まとめ

今回の記事では、脳卒中と神経因性膀胱の関係について解説しました。
脳卒中に伴う神経因性膀胱の場合、蓄尿障害が主な症状であり、うまく膀胱に尿を溜めることができないため、頻尿や尿失禁などの原因となります。
神経細胞は一度損傷すると回復・再生が得られにくい細胞のため、現状では神経因性膀胱を根治することは難しく、膀胱の運動をコントロールする内服治療や膀胱・骨盤底の筋肉トレーニングが必要です。
しかし、最近では再生医療の発達もめざましく、損傷した神経細胞の機能が再生する可能性もあります。
神経因性膀胱が改善すれば、日常生活の質(QOL)も改善するため、今後のさらなる知見が待たれるところです。

よくあるご質問

神経因性膀胱の原因は?
神経因性膀胱とは、その名の通り膀胱の運動・機能を支配する神経回路に障害が生じることが原因となり、蓄尿障害や排尿障害がおこる病気です。
主に、脳卒中やパーキンソン病などの脳疾患・脊髄損傷などの脊髄疾患・糖尿病や癌転移に伴う末梢神経障害などが原因となります。

神経因性膀胱と低活動膀胱の違いは何ですか?
神経因性膀胱とは、神経が障害されることで排尿や蓄尿などの膀胱機能が障害されることを指します。
そのうち、膀胱の収縮がうまく得られず、尿をうまく排出できなくなる病態を低活動膀胱と言います。

<参照元>
・名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科教室 神経因性膀胱:
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/uro08/sick/neurogenic-bladder/index.html#:~:text=神経因性膀胱と,きたす病気の総称です%E3%80%82
・MSDマニュアル 神経因性膀胱:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/05-腎臓と尿路の病気/排尿の障害/神経因性膀胱
・排尿の神経支配:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol1989/80/9/80_9_1257/_pdf
・日本神経学会 神経内科と膀胱 〜排尿の神経機序と排尿障害の見方・扱い方〜:
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/053030181.pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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