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脳出血後でも長生きできるのか?

           

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この記事を読んでわかること

脳出血は治るのか
どのような治療法があるのか
脳出血の後遺症


脳出血を発症すると、溜まった血液によって脳が圧迫されるため、麻痺や嚥下障害など様々な神経症状をきたし、場合によっては日常生活に支障をきたすような重い後遺症を残します。
そのため、急性期はもちろん慢性期でも後遺症に伴う合併症で早く死亡することがあります。
そこで、この記事では脳出血でも長生きできるかについて解説していきます。

脳出血は治るのか

脳出血の治療方法
脳出血=危険な病気というイメージをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか?
脳出血とは、脳を栄養する血管が破綻することで頭蓋骨の中で出血し、貯留した血腫によって脳が圧迫されて様々な神経症状をきたす病気です。
脳細胞の血流が途絶すると壊死するため、例え治療して出血が落ち着いても脳細胞の機能は元に戻らず、重い後遺症を残してしまうこともあります。
そのため、脳出血の患者に対しては脳細胞が壊死する前に早急に治療を施す必要があります。
そもそも脳出血の治療にはどのような治療法があるのでしょうか?

保存療法

脳出血に対する治療として、点滴によって血圧を低く維持する保存療法が挙げられます。
血圧が高いと出血が止まらないため、血圧を下げて出血を抑えるよう点滴から降圧剤を投与する治療です。
また、炎症によって脳が浮腫んでしまうとさらに脳が圧迫されてしまうため、浮腫を軽減するような薬を使用することもあります。

手術療法

脳出血に対する治療として、直接出血を止める手術療法が挙げられます。
保存療法を行っても出血のコントロールがつかない場合や十分な効果が得られない場合に選択されます。
具体的な手術法は2種類あり、頭の骨を外して顕微鏡を使って出血を治療する「開頭術」と、頭の骨に小さな穴をあけてそこから内視鏡(数ミリの細いカメラ)を挿入して血液を取り除く「内視鏡手術」があります。

脳出血は治療して治るのか

ボスニア&ヘツェゴビナ
気になるのは治療によって患者がどういった経過を辿るのかです。
具体的なデータとして、ボスニア・ヘルツェゴビナと日本で行われた研究を紹介します。
ボスニア・ヘルツェゴビナの研究では、初発の脳梗塞および脳出血を起こした836人が研究対象となり、5年後の生存率を分析しています。
その結果、脳出血発症後1年では38%が生存し、さらに5年後には24%が生存しており、脳出血を起こした人の約4分の1が5年後も生存していたということになります。
一方で、1998年4月から1999年3月までの栃木県における脳出血患者を対象に行われた研究では、5年生存率は57.9%とボスニアの研究とは大きくデータの乖離を認めました。
致死性の高い脳出血の場合、その国の医療技術や医療資源によって致死率にも差が出る印象です。
これらのデータからもわかる通り、適切な治療を行えば、脳出血は治ることもある病気と言えます。
しかし、たとえ血腫を除去して出血を止めたとしても、一度損傷した脳細胞は基本的に元に戻ることはなく、なんらかの後遺症を残してしまいます。
厚生労働省の報告によれば、脳卒中患者1584名のうち後遺症を残さなかった患者数は344名(約21.7%)であり、多くの患者でなんらかの後遺症を残すことがわかっています。
人によっては後遺症が原因で死に至ることもあり、決して治ったとは言い切れません。
では、死を招くような脳出血の後遺症とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

長生きできない脳出血の後遺症

嚥下と誤嚥の様子
前述した日本の研究では5年後生存率は57.9%であり、脳出血の平均余命は10〜12年程度と考えられています。
脳出血の好発年齢が50〜60歳であることを鑑みると、その10〜12年後に死亡した場合、日本人の平均寿命よりも短い人生となります。
これは、急性期の死亡はもちろんのこと、脳出血の後遺症による慢性期の死亡が影響していると考えられます。
ここでは、脳出血の後遺症のうち、特に最終的に死につながる後遺症をご紹介します。

麻痺

後遺症として重度の四肢麻痺を持つ患者は長生きできない可能性があります。
重度の四肢麻痺によって体の筋肉を使うことができなくなると、筋肉がどんどん萎縮していきます。
その結果、四肢以外に呼吸の筋肉も萎縮し、肺炎のリスクとなります。

嚥下障害

後遺症として嚥下障害を持つ患者は長生きできない可能性があります。
嚥下障害とはうまく食事を飲み込むことができなくなる症状であり、飲み込みの際に食べた物や水分が食道ではなく気管に入り込んでしまいます。
通常であれば強くむせ込んで気管から排出しますが、むせ込む力も低下しているため、そのまま食べ物が気管に残ってしまい誤嚥性肺炎に至ります。
脳卒中患者にとって、誤嚥性肺炎は死亡する最大の原因となる後遺症と考えられており、注意が必要です。

排尿障害

後遺症として排尿障害を持つ患者は長生きできない可能性があります。
排尿障害とは膀胱に貯留した尿をうまく排出できない後遺症のことで、尿道から侵入した細菌も排出できなくなってしまいます。
その結果、細菌が逆行性に腎臓に到達すると腎盂腎炎を来たし、重症化すれば死に至ることもあります。

まとめ

今回の記事では、脳出血でも長生きできるかについて解説しました。
脳出血の場合、急速な出血に伴う脳の圧迫による発症数日間のうちの死と、重篤な後遺症に伴う慢性期の死の2つの理由で、健常者と比較して長生きできるとは言えません。
急性期であれば、頭蓋内の出血を早期にコントロールして、脳の圧迫を解除する必要があります。
もし対応が遅れて重篤な後遺症を残した場合、現状ではリハビリなどを行い少しでも機能回復を図るほか、手段はありません。
特に、嚥下障害は誤嚥性肺炎のリスクを増加させ、死に至る可能性が高くなるため注意が必要です。
しかし、近年では機能回復の治療法として再生医療の分野が非常に発達しています。
再生医療によって損傷した脳細胞の機能が回復すれば、重篤な後遺症からの回復も見込まれるため、現在のその知見が待たれるところです。

よくあるご質問

脳出血後でも長生きはできますか?
脳出血後の平均余命は10〜12年程度と言われています。
たとえ急性期を乗り越えても、嚥下障害や四肢麻痺、排尿障害などの重篤な後遺症によって誤嚥性肺炎や腎盂腎炎などの合併症を引き起こすと、死亡する可能性が高くなります。

脳出血の生存率は?
研究によって報告される生存率にも差がありますが、発症から5年後の生存率は日本では50〜60%程度です。
また発症が高齢の方や再発までの期間が短い方ほど余命が短いことも知られています。

<参照元>
・ Smajlovic D, et al. Five-year Survival after first-ever stroke. Bosn J Basic Med Sci. 2006; 6(3): 17-22
・厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-06.html
・脳卒中患者の生命予後と死因の 5 年間にわたる観察研究: 栃木県の調査結果とアメリカの報告との比較:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/6/32_6_572/_pdf/-char/ja

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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