幹細胞点滴治療の最中にリハビリを実施します
これらの神経回路を元の状態に戻すためには、傷ついた神経を治したり、血管や神経を再生したりする自分を治す力(再生医療)が必要になります。
この力(自己の細胞)を清潔な環境下で培養することで何万倍にも増やし、点滴で大量に患部に補給することが出来るようになりました。
この幹細胞点滴は脳卒中・脊髄損傷だけでなく、動脈硬化・認知症・心不全・腎不全・神経変性疾患・糖尿病といった疾患にも効果があるという報告が増えてきています。
将来的には、この治療が色々な疾患でリハビリ時期にある方に一般的に投与されるだけでなく、誰もが行える予防治療として普及していく筈であると考えています。
現在の幹細胞点滴には、骨髄や脂肪由来の細胞を培養したものが利用されています。
その中でも脳卒中や脊髄損傷の治療に関しては、最も歴史が長く安全性・効果が報告されているのは骨髄を元とした幹細胞点滴だけです。
実際、札幌医大や民間病院にて臨床研究が複数行われ、保険で使用出来る薬剤への認可を目指した治験中の段階まできています。
当院では、現在もっとも安全性・効果とも期待されている自己の骨髄細胞を元とした幹細胞点滴を実施しております。
骨髄由来幹細胞点滴とは?
今までは根本的な治療がない(困難)と言われていた病状に対して、損傷された細胞を修復させる、新たな細胞を体内に収着させる、再構築させる事を目指す治療です。
◆ 効果を高める組み合わせ治療【ニューロテック®】
血管新生・神経再生を促すためには、最適なタイミングでのリハビリが必要
幹細胞点滴治療は、3つの相性の効果があるとされています。
1つめは導入してすぐに効果を発揮する液性作用で、神経回路の伝達の改善が期待できます。
2つめは1週間から数ヶ月かけて効果を発揮する血管新生作用。3つめの神経再生作用も同程度持続します。
この血管新生作用と神経再生作用をさらに高めるため、当クリニックではリハビリを併用しています。
脳卒中等の後遺症で動きにくくなった手足を動かすと、それに対応した脳の部位の血流量が上がり、幹細胞や上清液が集中して修復効果を高めるからです。
再生医療の本来の効果を得るために、リハビリはなくてはならないものと言えるでしょう。
リハビリ中には脳脊髄損傷部の血流が30%UPします。
右中大脳動脈領域の脳梗塞による左不全片麻痺患者様の血流量の様子。
患側左手の運動時には、fMRIにて損傷部周囲(右頭頂葉)の血流の増加。
損傷部位とは反対の左脳(一次運動野から運動前野,補足運動野)の血流の増加が広範に認められました(加藤宏之.,脳循環代謝 16:290 ~ 294, 2004)。
◆ 神経再生医療
幹細胞は歳を重ねるごとに減少し、自己修復能力も低下する
人間の体は約60兆個もの細胞で構成されていて、常に新陳代謝を繰り返しており、古くなった細胞は新しい細胞へと入れ替わっています。
ただし、年齢を重ねていくとともに、自分を治す力(自己治癒力)はどんどん減少していってしまうのです。
身体に外傷を負った際に、体が傷を自己修復してくれますが、傷の回復の為には新たな細胞を作る必要があります。
その際に新たな細胞を生み出す役目をするのが「幹細胞」です。
つまり、自分の体を治す力=幹細胞の数となります。
新生児を1とすると80代では、新生児の1/200~1/700にまで減少してしまいます。
その為、加齢とともに自分を治す力(幹細胞の数)が徐々に低下していくことで、傷が治りにくくなったり、老化してしまうのです。
幹細胞が働いてくれるからこそ、私たちは健康な体を維持する事が可能になっています。
「ニューロテック」の再生医療では、加齢により減少した幹細胞を補うため、脳卒中や脊髄損傷の治療に関して最も歴史が長く、安全性・効果が報告されている骨髄由来の幹細胞を採取・培養し、点滴で体内に戻す再生医療を提供しています。
傷ついた神経回路の修復には幹細胞を何万倍にも培養し患部に補給する「再生医療」が必要
間葉系幹細胞の特徴
間葉系幹細胞というのは、ヒトが持つ幹細胞のひとつでMSC(MSC mesenchymal stem cell)とも呼ばれています。
間葉系幹細胞は成体幹細胞の一つで、人の骨髄・脂肪・皮膚・臍帯・滑膜(関節の周囲組織)など体内の様々な部分に存在しています。
特徴は骨・軟骨・脂肪等・血球をはじめ、組織細胞(肝細胞、神経細胞等)と多様に分化できる細胞と定義されています。
体内の部分によって、間葉系幹細胞の性質や特性が少し異なるのですが多様な細胞に分化できる「間葉系幹細胞」が今注目されています。
その中でも骨髄由来間葉系幹細胞は、研究の歴史は古く、特に各種神経損傷モデル(脳卒中、脊髄損傷など) に対する治療効果では、人における臨床研究でも多数報告されております。
◆ 骨髄由来の幹細胞のほか脂肪細胞からの採取も選択可能
脂肪採取は体の負担が少ないが骨髄由来の方が信頼性が高い
再生医療に使用する幹細胞は主に骨髄から採取しています。
穿刺等の施術をご負担に感じられる場合は脂肪細胞からの採取も選択できますが、ただし脂肪由来の幹細胞は神経細胞に分化しにくいという研究結果が報告されています。
脊髄損傷の治療薬として厚生労働省の認可を受けている薬剤では骨髄由来の間葉系幹細胞が使われていることからも、骨髄由来の方が信頼性が高いと言えるでしょう。
また当クリニックは骨髄由来の間葉系幹細胞による再生医療の基盤特許を取得していることもあり、骨髄からの採取をお勧めしています。
◆ 安全面・倫理面の問題が少なく30年以上の実績がある治療
自分の体性幹細胞は安全
幹細胞の中には、体性幹細胞の他にiPS細胞とES細胞があります。
iPS 細胞は血液など簡単に採取できる細胞に、細胞を初期化する遺伝子を導入したもの。
ES細胞は受精卵の初期胚から様々な細胞に分化する能力を持った細胞を分離したものです。
これらは際限なく増殖するため、腫・瘍化する懸念が指摘されています。
また、ES細胞は受精卵を犠牲にしており、生命倫理の観点からも問題があります。
対して体性幹細胞は安全面・倫理面、どちらもクリアしており、なおかつ30年以上にわたり臨床で使用されてきた実績があります。
◆ 骨髄由来の幹細胞点滴治療は世界中で治験が行われ有効性が示されている
骨髄由来幹細胞点滴の臨床研究【脳梗塞・脊髄損傷】
脳梗塞患者様12名に対して自己骨髄性間葉系幹細胞の静脈投与を実施した結果、12人中7人でNIHSSスコア(脳卒中重症度スコア:高値は悪い)が改善しました。
(Honmou et al., Brain 134:1790-1807, 2011)
2015年にLiらは、脊髄損傷患者に対する対外培養した自己骨髄由来間葉系幹細胞投与に関する24件のRCT、456例の臨床研究のメタアナリシスを行い、治療に伴う重大な合併症は無かったこと、ASIAにて随意的な筋収縮、感覚、膀胱機能が有意に改善していたことを報告しました。
(Xiao Chuan Li Clin Transplant, 29 (9), 786-95 Sep 2015)
点滴療法のリスクと副作用について
骨髄穿刺時
局部麻酔薬
副作用・リスク:痛み、アレルギーによるショック症など
【副作用・リスクを回避・軽減する為の対策】
・針を刺入する時の痛み
できるだけ極細の針を使用し麻酔を行ないます。
・注入の時の痛み
神経の走行を考え、注入する麻酔薬を可能な限り少量にするように心掛けています。
骨髄穿刺
副作用・リスク:皮下出血、皮下血腫、感染症、穿刺部の不快感
【副作用・リスクを回避・軽減する為の対策】
・皮下出血・皮下血腫
当院では事前に、現在内服されている血をサラサラにする薬(抗血小板や抗凝固薬)を中止することは絶対ありません。また、皮下出血・皮下血腫を予防するために、骨髄穿刺の針のサイズを小さくし、手圧や砂嚢にての圧迫止血に十分な時間をかける様にしております。
・感染症
処置室にて、帽子・マスク・ガウンを着用する清潔操作にて行ない、骨髄穿刺部にも十分な消毒を行なうようにしております。
・穿刺部の不快感症
骨髄穿刺実績2000件を超える血液内科医2名の指導の下、骨髄穿刺時の不快感を最大限に抑える取り組みをしております。
また、骨髄穿刺時に幹細胞がより多くとれる様に特殊な技術を用いることで、幹細胞の分裂回数を最小限に抑えながら目標の幹細胞数を得ることができております。
骨髄幹細胞投与時
骨髄幹細胞投与
副作用・リスク:肺血栓塞栓症、アレルギーによるショック症状、感染症、点滴刺入部の発赤、熱感
【副作用・リスクを回避・軽減する為の対策】
・肺血栓塞栓症
死細胞が混じらない様に生細胞数をカウントしています。
また、幹細胞には幹細胞マーカー(CD73、CD90、CD105)が90%以上認められていることを毎回チェックしています。
そして、点滴時には幹細胞が塊にならない様に生理食塩水に溶かし、塊を除去するフィルターを使用して一定のスピードで投与することで肺梗塞を予防します。
あまり遅くなりすぎると、投与できる幹細胞の量が少なくなってしまうことが分かっています。
・アレルギーによるショック症状
患者様の状態に応じて、完全オーダーメイドの細胞培養を行うことができ、アレルギーの可能性を最大限に少なくする様に努めております。
・感染症
当院は唯一、骨髄由来幹細胞治療の基盤特許を取得している診療所であり、院内製造と比較にならない清潔度環境下での細胞培養が可能です。勿論、細胞を培養する細胞培養加工施設は、厚生労働省令で定められる細胞GMP基準(製造管理・品質管理等に関する基準)を満たしております。最終製品に関しては、無菌検査、エンドトキシン検査、マイコプラズマ検査といった検査を行い、十分な安全性を確保しております。また、投与時にも医師により必要なチェックを行なっております。
・点滴刺入部の発赤
感染やアレルギーを防止するために、アルコール消毒をしっかり行なった上、滅菌手袋等を着用し、(ナイロン性)留置針を使用し点滴を行います。
・熱感
幹細胞を十分に洗浄することで、幹細胞以外の不純物を除去しています。
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