この記事を読んでわかること
1型糖尿病の病態がわかる。
1型糖尿病と2型糖尿病の違いがわかる。
1型糖尿病の治療法がわかる。
1型糖尿病は膵臓の一部が破壊されることで、インスリンが分泌できなくなり、血糖コントロールが著しく悪化する病気です。
脱水や昏睡、意識障害などの症状をきたし、放置すれば死に至る可能性もあるため、早期治療が必要な病気です。
この記事では、1型糖尿病の病態や2型糖尿病との違い、新たな治療法などを解説します。
1型糖尿病の原因や症状

高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の1つである糖尿病は2型糖尿病のことを指し、それ以外にも全く異なる病態の1型糖尿病という病気もあります。
では、1型糖尿病とはどのような病気なのでしょうか?
1型糖尿病とは、何らかの原因で膵臓のβ細胞が破壊され、β細胞から分泌されるインスリンと呼ばれるホルモンの分泌が減少する病気です。
インスリンは、血液中の糖質(グルコース)を細胞内に取り込む能力をもつホルモンであり、細胞にとってはエネルギー源の確保ができ、血液中のグルコースが減ることで血糖値を下げる効果を持ちます。
なぜ膵臓のβ細胞が破壊されてしまうのか、その原因は明らかにはなっていませんが、約90%が自己免疫性、残り10%が特発性(原因不明)です。
自己免疫性とは、本来体内に侵入した異物を攻撃するはずの免疫細胞が、誤って自身の正常な細胞を異物と認識して攻撃してしまうことを指し、何らかの原因で生じた抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗インスリン抗体、抗ZnT8抗体などの自己抗体によって破壊されます。
インスリン分泌が枯渇すると、血糖値の上昇と細胞内飢餓(細胞がエネルギー源のグルコースを取り込めないため)が生じ、主に下記のような症状が出現します。
- 体重減少
- 多飲・多尿
- 急激な高血糖
- 昏睡や意識障害
特に、細胞内飢餓が進行すると全身の細胞が十分な機能を果たすことができなくなり、意識障害や昏睡、さらには急速な死を招く可能性もあるため、注意が必要です。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い

1型糖尿病と2型糖尿病の違いは主に下記の通りです。
| 1型糖尿病 | インスリン分泌そのものが枯渇する |
|---|---|
| 2型糖尿病 | インスリンの効果が得られにくくなる |
先述した通り、1型糖尿病はインスリン分泌そのものが枯渇する病気ですが、2型糖尿病は生活習慣などが原因でインスリンが効きにくい身体になり、インスリンは分泌されるものの、その効果が得られにくくなる病気です。
また、2型糖尿病の場合、初期はインスリンの効きが悪いことから、インスリンが多量に分泌されますが、徐々にβ細胞が疲れてしまい、最終的にはインスリン分泌量が低下します。
一度インスリン分泌能が低下すると、元に戻すことは困難であるため、いかにインスリンの効果が効きにくくなること(インスリン抵抗性と呼ぶ)を予防するかが重要です。
インスリン抵抗性改善のためには、規則正しい食事摂取や定期的な運動習慣が非常に重要であり、日々の生活に注意することで2型糖尿病の予防・改善が期待できます。
逆に言えば、不摂生や運動不足が続けばインスリン抵抗性が悪化し、誰しもが2型糖尿病を発症する可能性があり、その病気の成り立ちからも若年者よりは中高年に多い病気です。
一方で、1型糖尿病の場合は生活習慣によるものではなく、自己免疫性や特発性であるため、比較的若年者に多いという違いがあります。
また、日々の生活習慣が強く影響する2型糖尿病とは異なり、1型糖尿病はどんなに生活習慣に注意しても発症する可能性があり、発症後の治療も生活習慣の改善よりは、インスリン補充療法が必要不可欠です。
1型糖尿病の治療
1型糖尿病はインスリン分泌を担うβ細胞が破壊される疾患であるため、主に下記のような治療が選択されます。
- インスリン補充療法
- 膵臓移植
- 再生医療
インスリン補充療法
1型糖尿病の最も代表的な治療が、インスリン補充療法です。
1型糖尿病では絶対的なインスリン不足が問題となるため、体外から注射でインスリンを補充することで血糖の安定化や細胞内飢餓の予防が図れます。
また、最近では患者さんが自宅で自己管理しやすくなるよう、血糖の自動測定機器(CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続血糖測定)や、それと連動したインスリンの投与デバイスなど、より管理しやすいように治療も進化しています。
また、1型糖尿病に対して運動療法や食事療法は無意味なわけではなく、インスリン補充療法と併用することで、より高い血糖安定効果が得られるため、併用がおすすめです。
膵臓移植
1型糖尿病の根治を目指せる治療として、膵臓移植が挙げられます。
ドナーから採取した膵臓の細胞を自身に移植することで、体外から補充することなくインスリン分泌が行えるようになるため、根治が目指せる治療法です。
しかし、自身と適合するドナーの検索は容易ではなく、移植後に自身の免疫細胞が他者の膵臓細胞を破壊しないよう免疫抑制剤を継続する必要もあり、多くの1型糖尿病患者が選択できる治療法ではありません。
新たなる治療としての再生医療とは
近年では、1型糖尿病に対する新たなる治療としての再生医療の分野も注目が高まっています。
これまでは、枯渇したインスリンを体外から補充することが治療の柱でしたが、近年の再生医療分野の発展により、移植なしでも根治できる治療法の開発が進んでいるのです。
例えば、中国の研究では患者さん由来のiPS細胞(人工的に作られた幹細胞)をインスリンを合成する細胞に分化させ、それを患者さんの腹直筋(お腹の筋肉)に移植することで、インスリン分泌の再生を促します。
実際に、その研究では糖尿病の重症度の指標となるHbA1cと呼ばれる検査値(過去1〜2か月の平均血糖を反映する指標)が改善し、血糖値も安定して推移したそうです。
PMID: 39326417 DOI: 10.1016/j.cell.2024.09.004)
本研究は単例報告であり、治療法が普及するまでにはまだまだ時間を要します。
仮に実用化すればインスリン補充療法は不要になり、ドナーや免疫抑制剤の問題も解決されるため、今後の臨床試験結果が重要です。
まとめ
2型糖尿病と異なり、1型糖尿病は不可逆的に膵臓β細胞が破壊されるため、一度発症すると治療なしでは血糖値をコントロールできなくなり、最悪死に至る可能性もある病気です。
そのため、発症したらインスリンなしでは生活できなくなる病気でしたが、近年では再生医療という新たな治療の選択肢も登場し、根治できる可能性が高まりつつあります。
また、糖尿病は長期化すると末梢神経障害や脳卒中の発症リスクを上げることが知られており、これらの疾患も一度発症すると麻痺やしびれなどの後遺症が残ってしまいます。
これらの神経学的後遺症に対して、これまではリハビリしか対応策がありませんでしたが、再生医療はこれらの後遺症に対しても新たな治療手段となり得ます。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
糖尿病による神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- 1型糖尿病は完治しますか?
- 現代の医療では、1型糖尿病は完治困難です。
一度破壊されたβ細胞は基本的に再生しないため、インスリンの補充療法が主な治療となります。
しかし、近年では再生医療によるβ細胞の再生の研究が進んでいます。
- 1型糖尿病の最大の死因は?
- 1型糖尿病発症者が死に至る最大の理由は、若年期から動脈硬化が進展することによる心血管系障害などが挙げられます。
高血糖状態によって動脈硬化が進み、大動脈解離や心筋梗塞のリスクが高まるため、注意が必要です。
<参照元>
(1):1型糖尿病ってどんな病気?|糖尿病情報センター:https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/050/010/01.html
(2):1型糖尿病|日本内分泌学会:https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=90
(3):2型糖尿病はどのように治療するのか?|日本糖尿病学会:https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=10
(4):持続グルコースモニタリングデバイス適正使用指針|日本糖尿病学会:https://www.jds.or.jp/uploads/files/document/cgm/CGM_usage_guideline_2024-05-15.pdf
(5):Shusen Wang, et al. Transplantation of chemically induced pluripotent stem-cell-derived islets under abdominal anterior rectus sheath in a type 1 diabetes patient. 2024 Oct 31;187(22):6152-6164.e18. doi: 10.1016/j.cell.2024.09.004. Epub 2024 Sep 25.
PMID: 39326417 DOI: 10.1016/j.cell.2024.09.004:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39326417/













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