この記事を読んでわかること
・解離性健忘とはどのようなものか
・解離性健忘と普通の物忘れはどういった点が異なるか
・解離性健忘は具体的にどのように診断を進めていくか
解離性健忘とは、強いストレス反応やトラウマによって引き起こされる健忘、つまり記憶障害のことです。
記憶に空白が生じ、これによって日常生活に支障が出たり、人間関係をうまく作ったり維持したりするのが難しくなる場合もあります。
今回の記事では、解離性健忘の症状とその診断について解説していきます。
解離性健忘症とは?ストレスとの関連性
解離性健忘とは、脳の器質的損傷ではなく、精神的ストレスや外傷をきっかけに発症する疾患のことで、いわゆる記憶喪失といわれるような状態です。
言い換えると、心的外傷やストレスによって引き起こされる健忘、つまり記憶障害です。
WHOが定めている病気の診断基準であるICDというものがあります。
こちらの1992年のバージョンでは、ストレス関連障害および身体表現性障害の一つとされていました。
なお、2024年1月現在では最新版のICD-11というものに改正されており、解離性健忘は独立した障害群として記載されています。
解離性健忘は、「重要な個人的情報の想起(思い出すこと)が不可能になり、それがあまりにも広範囲に渡るために、通常の物忘れでは説明できない状態、と定義されています。
さて、器質的な脳の損傷にはアルツハイマー病や血管性認知症、前頭側頭葉型認知症、レビー小体型認知症などを含む認知症、ビタミンB1(チアミン)欠乏症によるウェルニッケーコルサコフ症候群、頭部外傷に起因する外傷後健忘、くも膜下出血や脳梗塞などの脳卒中、脳卒中などが含まれます。
一方、解離性健忘はこうした脳の障害ではなく、心因性あるいは精神疾患に関連した記憶障害なのです。
解離性健忘と他の健忘症の違い
それでは、解離性健忘と物忘れの違いと症状の見分け方について解説していきます。
解離性健忘症と物忘れは異なる状態であり、主に原因や症状に違いがあります。
以下に、それぞれの違いと症状の見分け方を説明します。
さらに、ケーススタディについても述べていきます。
解離性健忘
- 原因
- 解離性健忘は、通常、精神的なトラウマやストレスの影響を受けたときに発生することがあります。
例えば、強いストレスを感じた過去の出来事からの逃避や保護反応として起こることがあります。 - 症状
- 突然の記憶の喪失が特徴的で、特定の期間や出来事に関する記憶が欠落します。
解離性健忘症の期間中、患者は通常、自分の行動や出来事を全く覚えていないか、不完全にしか覚えていません。 - 健忘に伴う症状
- 解離性健忘症は、他の解離性障害と一緒に現れることがあります。
これには解離性同一性障害などが含まれます。 - ケーススタディ
- 幼い頃に、数ヶ月から数年にわたり虐待を受けていた方がいました。しかし、大人になってから、その期間の記憶が抜け落ちていることに気づきました。
これは、強いストレスを感じた経験を思い出すことに対する防御反応としての側面もあります。
物忘れ
- 原因
- 物忘れは通常、年齢の進行や生活習慣、ストレス、疲労などが原因となります。
一般的には軽度であり、認知症や精神的なトラウマがない限り、経過観察してもそこまで問題となることはありません。 - 症状
- 物忘れは、通常、短期記憶の喪失や注意力の低下などの軽度な症状を伴います。
忘れっぽいことは、普通の生活の一環として発生することがあります。 - 物忘れに伴う症状
- 物忘れが重症化する場合、認知症や他の健康問題が原因である可能性があります。
症状の見分け方
それでは、解離性健忘症と物忘れの症状の見分け方を解説していきます。
解離性健忘症では、トラウマや過度なストレスが関与した、突然の記憶喪失がみられることがあります。
一方、通常の物忘れは一時的なもので、日常生活の忘れっぽさに関連しています。
年齢が高くなったり、睡眠不足や生活状況などが物忘れに影響を与える可能性があります。
正確な診断を受けるためのステップ
解離性健忘は、以前は主に精神医学的な観点で調べられてきましたが、現在では神経心理学や認知神経科学の視点から検討されるようになってきました。
解離性健忘を正確に診断するためには、医師による評価や、その他の脳の疾患を否定することが必要です。
解離性健忘の診断は、精神科医などの専門医によって、患者の症状に基づいて下されていきます。
具体的には、アメリカ精神医学会の精神障害診断および統計マニュアル(DSM-5)に基づき解離性健忘症の基準に合致するかどうかを確認され、診断が下されます。
解離性健忘の症状は、例えば、以下のようになります。
- トラウマやストレスと関連している個人的な情報を思い出すことができない
- その症状によって強い苦痛を感じているか、その症状のために社会的な状況や職場で役割を果たすことができない。
そして、認知症などが隠れていないかを、身体診察などから行っていきます。
さらに、脳腫瘍や血管性認知症などの他の脳の構造上の問題がないかを調べるために、脳のMRIやCT検査を行います。
日常生活でのストレスが原因の記憶障害の対策
ストレスは、私たちの心身に様々な影響を与えます。
特に、長期間にわたる慢性的なストレスは、脳にダメージを与え、記憶障害を引き起こすリスクを高めます。
ストレスを感じると、コルチゾールというホルモンが分泌されます。
このコルチゾールが過剰に分泌されると、脳の海馬と呼ばれる部分が萎縮し、新しい記憶を形成する能力が低下してしまいます。
記憶障害を予防するためには、ストレスを効果的に管理することが重要です。
深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラックス法や、運動、バランスの取れた食事など、生活習慣の見直しも効果的です。
また、認知行動療法など、専門家のサポートを受けることもおすすめです。
解離性健忘に対するケアと予防策
ストレスが原因の健忘症は、日常生活でのケアが重要です。
特に、ストレスの緩和を目的としたカウンセリングや心理療法が有効です。
さらに、リラクゼーション法や定期的な運動も効果的で、これにより自律神経が整い、症状の改善が期待できます。
家族や信頼できる人と過ごし、社会的なつながりを保つことも回復を促します。
解離性健忘についてのまとめ
今回の記事では、解離性健忘とその症状、診断について解説しました。
健忘とは物忘れのことですが、脳梗塞などの脳卒中の後遺症として記憶障害が生じることもあります。
今まで、こうした脳卒中の後遺症に対する根本的な治療法はありませんでした。
そこで、当院では、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®として開発、定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×再生医療、骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリによって『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
脳卒中後の記憶障害などの後遺症にお悩みの方は、ぜひ一度当院までご相談いただければと思います。
よくあるご質問
解離性健忘の診断基準は?
解離性健忘は、アメリカ精神医学会の精神障害診断および統計マニュアル(DSM-5)に基づき、診断が行われます。解離性健忘症の基準に合致するかどうかを確認します。
解離性健忘の自覚症状は?
解離性健忘がある場合、日常生活の最中でも自分の行動や発言について忘れてしまうことがあります。 こうしたことが続くと、不安に感じてしまい、抑うつ症状に繋がることもあります。しかし、自覚のない人もいます。
<参照元>
解離性健忘の神経基盤.高次脳機能研究.2011;31(3):319-327.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/31/3/31_319/_pdf
ICD—11 におけるストレス関連症群と解離症群の診断動向 p677:https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1230100676.pdf
解離性健忘 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版:https://www.msdmanuals.com/ja-jp
記憶障害.認知神経科学.2011;13(1):118-132.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/13/1/13_118/_pdf
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