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横隔膜と脊髄損傷後の呼吸障害について徹底解説

           

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この記事を読んでわかること

呼吸器系はどのように機能しているのか
脊髄損傷と呼吸の関係


私たちは、横隔膜や呼吸補助筋の働きによって呼吸することができますが、これらの筋肉は神経の支配を受けて制御されています。
脊髄損傷後は、神経が損傷されるために呼吸が障害されることがあります。
頚部の高い位置では完全に呼吸ができなくなり、下位に損傷部位が移動するに従い、障害の程度は軽くなります。

呼吸器系はどのように機能しているのか?

頸髄C1〜C7
普段私たちは何も考えずに呼吸をしています。
これは、私たちの脳神経システムが、呼吸活動を適切に調整しているからです。
では、どのように呼吸器系が機能しているのか、簡単に説明いたします。

横隔膜の役割

私たちの呼吸に、最も重要な役割を果たしているのが「横隔膜」です。
横隔膜は、胸郭の下端を形成しているドーム状の筋肉で、肺の下に位置しています。
特に息を吸い込むときに、特に重要な役割を果たしています。
横隔膜が収縮すると、横隔膜は下方に移動し、胸郭は広がります。
その結果、空気が鼻と口から肺に吸い込まれ、肺や胸郭は膨らみます。
空気は、気管を通って肺胞に移動します
十分な空気を吸い込むと、横隔膜は弛緩して元の位置まで移動します。
その結果胸郭は小さくなり、肺や胸郭は縮小します。
筋肉が弛緩する過程で、二酸化炭素を含む息が鼻と口から吐き出されます。
私たちの脳は、この横隔膜を収縮させるために必要なシグナルを、脊髄を通して送っています。
横隔膜の動きを支配する横隔神経は、頚椎の3、4、5レベルで脊髄から出ています。

横隔膜の支配神経とその重要性

横隔膜は、頸神経叢のC3~C5レベルの横隔神経によって支配され、呼吸運動の中心的役割を果たしています。
この神経支配が障害されると、横隔膜は正常に働かなくなり、呼吸困難や自発呼吸の停止が発生することがあります。
特に上位頸髄損傷では横隔神経が完全に機能しなくなり、人工呼吸器が必要になります。
横隔膜はまた、ストレス管理にも役立つ自律神経調整機能を持っています。

呼吸補助筋の役割

私たちは、激しい運動をすると通常よりも多くの酸素を必要とし、そのため呼吸も激しくなります。
呼吸が激しくなるときや咳をするときには、通常の呼吸よりも強い筋力が必要になります。
横隔膜だけではこの力を生み出すことができず、呼吸を補助するために、他の筋肉の力が利用されます。
例えば、腹筋や肋骨の間の肋間筋、また頚部にある胸鎖乳突筋などが呼吸を補助する役割を果たしており、総じて呼吸補助筋とも呼ばれます。
特に咳をするときには、勢いよく息を吐くために、脳は脊髄を通って胸椎からでる神経を通して、腹筋と肋間筋の収縮を指示する信号を送っています。
これらの筋肉が使えなくなると、私たちは簡単に呼吸することができなくなり、咳やくしゃみもうまくできなくなります。

脊髄損傷と呼吸の関係

それでは、脊髄損傷のレベル別に呼吸に与える影響を説明します。
脳から送られる信号は、脊髄が損傷されると損傷された部位を越えては伝わらなくなり、そのため脳は呼吸に使用する筋肉を制御できなってしまいます。
その結果、脊髄損傷後は急激に呼吸状態が悪くなることがあります。
筋肉を制御できなくなる程度は、損傷の程度によって異なります。
通常損傷の部位が高い位置、つまり腰部よりも頚部であるほど、呼吸への影響は大きくなります。
横隔膜が影響を受けるレベルで損傷が生じれば、肋間筋や腹筋も影響を受けます。

頚椎損傷:C3より上位

頚椎の上位、C3よりも高い位置に損傷が起こると、横隔膜が全く働かなってしまうため、完全に自力では呼吸ができなくなります。
また腹筋や肋間筋も収縮できなくなり、くしゃみや咳もできません。
生きるためには、人工呼吸器を利用して、絶えず呼吸をサポートする必要があります。

頚椎損傷:C4〜C5レベル

このレベルの損傷では、横隔神経が脊髄を出るレベルでもあるので、一部の横隔神経が損傷を受けることもあり、そのため横隔膜の機能が多少残っていることがあります。
しかし残念ながら肋間筋や腹筋は全く働かなくなっており、そのために咳やくしゃみがうまくできなくなります。
そのため常時人工呼吸器が必要になる場合や、睡眠時など特定の時間帯だけ、人工呼吸器が必要になったりする場合があります。

頚椎損傷:C6〜C8レベル

このレベルの損傷では、すでに横隔神経が脊髄を出るレベルを過ぎているため、横隔神経は損傷を受けません。
そのため、横隔膜はよく機能します。
しかし、残念ながら肋間筋や腹筋は全く働きません。
このレベルの損傷では、横隔膜にのみ頼った呼吸となるため、腹式呼吸となります。

胸椎損傷:T1~T5レベル

このレベルの脊髄損傷でも、横隔膜は正常に動きます。
肋間筋は機能しますが、完全ではありません。ただし腹筋を動かすことは困難です。
そのため、咳やくしゃみはできますが、弱々しい力でしかできません。

胸椎損傷:T6~T12レベル

このレベルの脊髄損傷では、横隔膜と肋間筋は正常に動きます。
腹筋は働きますが、まだ十分な力を発揮できないかもしれません。
したがって咳やくしゃみをすることはできますが、受傷前より弱い状態であることが一般的です。

腰椎・仙椎損傷:L1 – L5、S1 – S4レベル

このレベル以下の脊髄損傷では、すべての呼吸筋が正常に機能します。
また咳やくしゃみも普通にすることができます。

脊髄損傷と呼吸障害の程度についてのまとめ

脊髄損傷と呼吸障害の程度について、損傷部位別にご説明しました。
特に咳やくしゃみは、痰を排出するのに重要です。
痰を排出することで、肺を健康に保ち、肺炎などの感染症にかからないようにすることができます。
最新の再生医療では、このような脊髄損傷後の合併症にも効果が期待できます。
脊髄損傷による合併症で苦しまないで済むように、医学の進歩に期待したいところです。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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