この記事を読んでわかること
視床痛がなぜ起こるのか
鎮痛剤が効きにくい理由と有効な薬
リハビリテーションで目指す痛みを減らした生活
視床痛とは脳出血などで視床と呼ばれる部位の機能に異常をきたすことで発症する異常な痛みです。
視床痛が出現すると、様々な状況で痛みを感じやすくなり生活の質が低下してしまいます。
通常の鎮痛剤も効きづらく、薬剤調整やリハビリテーションが重要です。
この記事では視床痛が発生するメカニズムから治療、リハビリテーションまで解説します。
異常な痛みを感じる視床痛とは

視床痛とは脳出血などの脳の血管が障害される疾患によって発症する異常な痛みのことです。
症状として、何もしなくても手足がピリピリと痛い、そよ風や服が擦れるなどの軽い刺激でも痛みが走るなどの異常な痛みが出現します。
視床は嗅覚以外の感覚情報が全て集まっている感覚の中継地点としての働きがあります。
集められた感覚情報は視床を通過した後、脳の感覚情報を処理する部位へ運ばれます。
このような神経の通り道として重要な働きを持った視床の一部が障害を受けると、視床痛が出現することがあります。
視床の一部が脳出血などでダメージを受けると、神経の働きを修復するための反応が起こります。
しかし、機能の修復が不十分であると本来の視床が行っている働きが行えず、痛み感覚の伝え方や痛みを認識する部位の受け取り方が変化します。
その結果として、痛みの感覚を過剰に伝えたり、他の感覚を痛みとして感じ取ってしまうことで視床痛が起こります。
ちなみに、視床の機能自体が損なわれてしまうような大きな障害が出現する重度の脳出血などでは視床痛の出現頻度は低いです。
視床痛を和らげる治療の選択肢
視床痛は感覚情報の異常が原因のため、ロキソニンなどの一般的な鎮痛剤が効きづらいです。
そのため、脳内の神経の伝達に関連する物質を抑えるような薬物療法が行われます。
視床痛に一般的な鎮痛剤が効きづらい理由
ロキソニンなどの鎮痛剤は侵害受容性疼痛と呼ばれる種類の痛みに対して効果があります。
侵害受容性疼痛とは炎症に伴って発生する痛みのことです。
ロキソニンなどの一般的な鎮痛剤は炎症によって発生した痛みの原因物質を抑えることで、痛み止めとして効果を発揮します。
視床痛は神経の伝達の異常が原因のため、炎症が原因の侵害受容性疼痛に効果的なロキソニンなどの鎮痛剤は効きづらいです。
そのため、視床痛には神経の伝達を抑える薬剤や神経がダメージを受けた時に起こる痛みを抑える薬剤が有効です。
神経の異常な興奮を抑える治療
視床痛に対する薬物療法は主に神経のダメージによる痛みを抑える薬剤と抗うつ病薬などの薬剤を使用します。
プレガバリンをはじめとした神経のダメージが原因となっている痛みを抑える薬は視床痛を含む脳卒中が原因の痛みに有効です。
しかし、副作用として眠気やめまい、浮腫などがあり使用する際は注意をする必要があります。
抗うつ病薬として使用される薬剤はプレガバリンなどの薬剤を使用後に追加して使用を検討します。
抗うつ病薬は発症して1年以内の方が有効性が高いです。
また、抗てんかん薬として脳内の神経伝達物質の働きを弱める薬剤の使用を考慮する場合があります。
薬物療法以外にもrTMSという磁気刺激を頭部に当てて、脳の神経伝達のバランスを整える治療方法があります。
視床痛の治療は薬物療法から開始し、他にもrTMSなどの選択肢があるため、専門の医師と相談しながら進めましょう。
痛みとの付き合い方を獲得するリハビリテーション
視床痛に効果があるリハビリテーションとして、認知行動療法があります。
認知行動療法とは、考えと行動を結びつけることによって痛みなどの問題を改善する方法です。
視床痛があると、動くと痛みが出る不安や何をしても痛みが取れないのではないかという考え、自己効力感の低下などによって必要以上に痛みを感じやすくなることがあります。
その結果として、引きこもりや活動量低下、鎮痛剤の過剰な使用などのより痛みを助長するような行動を取ってしまう事があります。
認知行動療法では、どのような動作で痛みが強くなるか、どうすれば痛みが軽減できるかを整理して、無理のない範囲で少しずつ身体を動かしていきます。
動いても痛みが悪化しなかったという経験を積むことでご自身で痛みをコントロールできることを目指します。
リハビリテーションでは他の治療でコントロールが難しい痛みを改善できる可能性があるため、リハビリを希望される場合は専門のクリニックや病院の担当者に相談しましょう。
まとめ
この記事では何もしなくても痛い視床痛について病態から治療、リハビリテーションまで解説しました。
視床痛は脳卒中によって発症する異常な痛みで、発症すると生活の質を下げてしまいます。
治療では通常の痛み止めではなく、神経の痛みを抑える薬や抗てんかん薬などを使用します。
リハビリテーションではご自身で痛みのコントロールをできることを目指します。
脳出血で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄の治る力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 視床痛による痛みは天気や気温、ストレスなどで変わりますか?
- はい、影響を受けます。
特に寒い日や風の強い日などは皮膚への刺激が強くなりやすく、注意が必要です。
また、精神的なストレスは痛みをより感じさせやすくする傾向があるため、できるだけリラックスすることも痛みの予防になります。
- 痛くて動きたくないので、安静にしていても良いでしょうか?
- 過度な安静は関節や筋肉が硬くなる原因となり、むしろ痛みを悪化させてしまう可能性があります。
そのため、痛くなりにくい状況を作り、無理のない範囲で少しずつ身体を動かしていきましょう。
<参照元>
(1): 脳卒中後疼痛(視床痛)の病態と外科治療|J -stage) 平戸政史ら Jpn J Neurosurg vol.17 No,3 2008.3:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/17/3/17_KJ00004872867/_pdf/-char/ja
(2):視床の機能とその臨床応用|J-stage 嘉戸直樹 関西理学 6:47−49 2006:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/6/0/6_0_47/_pdf
(3):炎症性疼痛ー炎症は抑えた方がよいのかー|J-stage 日本ペインクリニック学会誌 vol.24 No.4 2017:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/24/4/24_16-0053/_pdf/-char/ja
(4)脳卒中治療ガイドライン2021:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf













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