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脊損の症状は手足だけじゃない?生活に影響する膀胱直腸障害

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷における膀胱直腸障害の原因と症状
膀胱直腸障害の生活への影響
タイプに合わせた対処方法


脊髄損傷では運動麻痺症状がイメージされやすいですが、生活への影響の大きさでは膀胱直腸障害も大きな問題になります。
膀胱直腸障害とは、神経の損傷によって尿や便の排泄コントロールが難しくなる症状で生活に大きな影響を与えます。
この記事では膀胱直腸障害の原因や症状、生活へどのような影響があるか、対応策について解説します。

脊髄損傷で出現する膀胱直腸障害とは

トイレのイラストを持つ人
脊髄損傷とは背骨の中を通っている脊髄神経が、外傷や病気などで障害を受けることで発症する疾患です。
一般的によく知られている症状では損傷した神経が支配している領域より下のレベルでの運動麻痺や感覚障害が有名ですが、膀胱直腸障害という症状があります。
膀胱直腸障害とは神経が障害を受けることで、尿や便のコントロールができなくなる症状をいいます。
脊髄損傷における膀胱直腸障害は、仙髄と呼ばれる部位より上で障害が起こる核上型と仙髄が直接損傷する核型に分けることができます。

どちらの型でも尿意や便意などの感覚は低下・消失しますが、核上型では尿が出しづらく膀胱内圧が上がってしまうため、尿路感染症や腎不全などのリスクが高くなります。
また、第6胸髄より上の損傷では核上型の症状に加えて、自律神経過反射に注意が必要です。
自律神経過反射とは、膀胱や腸が尿や便によって圧がかかった時に起こる自律神経の過剰な反応のことで、急激な血圧の上昇、心拍数の低下、頭痛、動悸などの症状があります。
自律神経過反射は急激に血圧が上昇することで脳や心臓に負担がかかり、脳出血や心不全などの原因になることがあり、注意が必要です。
核型は尿失禁を防ぐ役割のある尿道括約筋に力が入りづらくなり、尿失禁を起こしやすくなります。
膀胱直腸障害が出現すると生活への影響が大きいため、生活の質(QOL)を下げる原因となります。

膀胱直腸障害が生活に及ぼす影響

トイレの上にある時計
膀胱直腸障害は生活に大きな影響を及ぼします。
核上型では、尿や便を出すことが難しくなるため、時間を決めてカテーテルを使用した排尿方法や尿道カテーテルを留置するなどの対策が必要になります。
特に尿道カテーテルを入れたままにする場合は、見た目の問題があるだけでなく、不意に抜けてしまった際に尿道を傷つけてしまうことがあるため注意が必要です。
また、便を出しにくいため、自宅で排便できるまで数時間かかることがあり、排便コントロールにかかる時間で活動時間が減ってしまうこともあります。
もし便秘の状態が長く続いてしまうと、便が漏れてしまう可能性もあるため、時間がかかっても排便コントロールは行わなければなりません。
核型では失禁や便が漏れてしまうことがあるため、外出や仕事に復帰する際に障害になります。
特に便が漏れてしまうと匂いが気になるだけでなく、皮膚のトラブルの原因になることがあり、最悪の場合は皮膚に深い損傷ができてしまう褥瘡を引き起こすことがあります。
褥瘡とは、姿勢の偏りなどで血流が悪くなった部分に傷ができることで、傷が大きくなると治癒にかなりの時間がかかります。
このように、どちらのタイプでも膀胱直腸障害があると生活に大きな影響があります。

日常生活での膀胱直腸障害の対処方法

膀胱直腸障害は生活への影響がありますが、適切な対処方法を行うことで影響を最小限にすることができます。
核上型では尿が出ない症状や便秘が問題になります。
尿が出ない症状に対しては腹圧をかけることで尿をどの程度出すことができるかが判断のポイントになります。
腹圧をかける自然排尿を行った後に膀胱に残っている尿の量が、100ml以下まで減っているのであればそのまま経過を見ます。
100ml以上の尿が残っている場合はカテーテルを使用して尿を排出します。

腹圧をかけて尿を出せない場合は、ご自身もしくは介護者が2〜3時間おきにカテーテルを使用した導尿を行います。
もし、上肢の麻痺などの原因でカテーテル操作が難しい場合は尿道カテーテルの留置を行います。
便に関しては何日おきに排便を行うか、どの時間帯に排便を行うかなどを事前に決めておきます。
普段から薬を使用して、便の硬さをコントロールし腹圧をかけて排便できる場合は自然排便を中心に行います。
腹圧や内服によるコントロールが難しい方は坐薬や浣腸を使用したり、摘便を行います。
核上型では適切にコントロールすることで膀胱や腸にかかる負荷を下げ、体調管理やQOLの維持が行いやすくなります。

核型では尿失禁や便の漏れが問題になります。
尿失禁に対する対策としては、定期的な排尿のスケジュールを立てることや飲む水の量の調整、骨盤底筋群のトレーニング、内服でのコントロールがあります。
定期的に排尿のスケジュールを立てることや飲む水の量を調整して尿の量をコントロールすることで尿失禁の回数は減らすことができます。
骨盤底筋群とは、骨盤の下部にある筋肉のことで排尿をコントロールするために重要な機能を果たしています。
骨盤底筋体操を行うことで骨盤底筋を鍛えることができる他、電気を使用したトレーニングなどもあります。
便漏れ対策として、不規則な食事はできるだけ避け、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
特に脂肪分を多く含む食品は下痢の原因になりやすいため、摂取する量に注意しましょう。
他に行える対策として、出かける際は事前にトイレの場所を把握しておくことも重要です。
このような対策を行うことで、膀胱直腸障害の生活への影響を最小限にしましょう。

まとめ

この記事では脊髄損傷における膀胱直腸障害について、原因や生活への影響、対策を解説しました。
膀胱直腸障害は神経の損傷によって、排尿や排便のコントロールが難しくなる症状です。
尿が出づらくなったり、便失禁を起こしてしまうなど生活の質に大きく影響します。
規則的な生活を心がけ、適切な対応策を行うことで生活へ与える影響は最小限にすることができます。
脊髄損傷で残存した神経障害の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療を行なっていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。

よくあるご質問

膀胱直腸障害がある場合、食事で気をつけることはありますか?
食事はバランスが良いものを摂取するように心がけましょう。
水分は適度にとり、食物繊維を意識して取りましょう。
脂肪分の多い食事、つまり油分の多い食事を多量に摂取すると便が緩くなり、便失禁の原因になるため注意が必要です。
膀胱直腸障害があっても仕事や外出はできますか?
膀胱直腸障害の症状を適切にコントロールすることで可能です。
規則正しい生活を心がけ、排尿方法や排便方法を確立しておきましょう。
また、トイレの場所を把握しておくことも重要です。

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    1:脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン[ 2019 年版 ]:https://japanese-continence-society.or.jp/_cms/wp-content/uploads/2025/01/Guidelines_for_theTreatment_of_LowerUrinaryTractDysfunction.pdf
    2:脊髄損傷における排尿管理|J-stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/60/8/60_60.673/_pdf/-char/ja
    3:脊髄損傷の排便マニュアル|国立障害者リハビリテーションセンター:https://www.rehab.go.jp/application/files/4815/2039/6868/07_29_01_PDF3.7MB.pdf

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    PROFILEこの記事の監修
    貴宝院 永稔
    貴宝院 永稔 医師
    (大阪医科薬科大学卒業)
    • 脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
    • 日本リハビリテーション医学会認定専門医
    • 日本リハビリテーション医学会認定指導医
    • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
    • ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

    私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
    リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
    このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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