この記事を読んでわかること
・脊髄損傷による神経因性膀胱の発生メカニズム
・脊髄損傷後の神経因性膀胱の管理と治療法
・膀胱機能の回復に対する再生医療の可能性
神経因性膀胱は、脳・脊髄の中枢神経、あるいは脊髄から膀胱にいたるまでの末梢神経の様々な病気により、膀胱や尿道の働きが障害され、排尿障害をきたしてしまう病気の総称です。
今回の記事では、脊髄損傷と神経因性膀胱の関連性について、そして治療における再生医療の可能性について述べていきます。
脊髄損傷による神経因性膀胱の発生メカニズム
膀胱には、尿を貯める機能と出す機能があり、そのどちらの機能にも脳、脊髄などの神経が関係しています。
神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)は、脳・脊髄の中枢神経、あるいは脊髄から膀胱にいたるまでの末梢神経の様々な病気により、膀胱や尿道の働きが障害され、排尿障害をきたしてしまう病気の総称です。
脊髄損傷の場合は、脊髄がダメージを受けることで神経の伝達が上手くいかなくなるため、神経因性膀胱が起こるというメカニズムが考えられています。
排尿をつかさどる中枢は、脳と仙髄という腰のあたりにある脊髄との2つがありますので、この仙髄の排尿中枢よりも上のレベルで損傷が起こったか、それよりも下のレベルで起こったかによって、症状が異なります。
脊髄損傷が起こるのは仙髄よりも上のレベルでのことが多いとされています。
脊髄損傷後の神経因性膀胱の管理と治療法
脊髄損傷が仙髄の排尿中枢よりも上のレベルで起こった場合には、怪我などが起こり脊髄損傷が起こった直後には、尿意もなくなり、膀胱の収縮もなくなります。
脊髄損傷から時間が経過し、慢性期になると、反射的に尿失禁が起こったり、尿がすべて出ずに膀胱の中に残尿が生じるという症状が起こります。
すると、膀胱の中の圧力が高まり、膀胱尿管逆流症や、水腎症、腎機能障害や、重症の尿路感染症が起こってしまうリスクがあります。
神経因性膀胱の治療の目標としては、重要度の高いものから、
- 上部尿路機能の保持
- 尿路感染の防止
- 良好な蓄尿機能の獲得(尿失禁がない)
- 自排尿での管理(間歇導尿を必要としない)
となります。
1の上部尿路機能障害というのは、簡単にいうと腎不全や水腎症など、腎臓が悪くなってしまうことです。
これらの4つの目標を達成するため、脊髄損傷の場合には間欠導尿(かんけつどうにょう)という、定期的に膀胱の中からカテーテルをもちいて尿を外へ出すということを行います。
また、尿を出しやすくするために抗コリン薬という薬を使うこともあります。
導尿や内服でも上手くいかない場合には、経皮的電気刺激療法という方法も用いられます。
また、おむつなどの尿パッドを使う場合もあります。
感染症のリスクがあるため、膀胱内にカテーテルを留置、つまり入れたままにしておくという方法は、できる限り避けるべきとされています。
その他には、恥骨上膀胱ろうという、尿を出すための管(膀胱ろうカテーテル)を恥骨の上のお腹の皮膚や腹壁から、直接、膀胱内に留置する尿路管理法もあります。
脊髄損傷リハビリテーションと膀胱機能の回復に対する再生医療の可能性
一般には、脊髄損傷でダメージを受けた神経は、修復は難しいとされています。
一方、2018年には、間葉系幹細胞を用いた再生医療が、脊髄損傷に対する治療として公的に承認されました。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しています。
また、脳卒中・脊髄損傷を専門として、脳・脊髄の損傷部に対する同時刺激×再生医療(リニューロ™)にて、『脳・脊髄の治る力(可塑性)』を高めること、引き続いての再生医療リハビリの効率を高めることを目指しています。
障害を少しでも軽減させるために、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ™』をご活用下さい。
リニューロの中で重要な役割を占めるのが、リハビリテーションです。
ニューロテックメディカルでは、再生医療に磁気刺激や電気刺激など先進的なリハビリを組み合わせた治療を実践しています。
今後、膀胱機能の回復にも同時刺激×再生医療™が大きな役割を果たすことが期待されます。
まとめ
今回は脊髄損傷と神経因性膀胱の関連性について解説しました。
神経因性膀胱は尿失禁や残尿などの排尿障害をきたし、QOLの低下にもつながります。
再生医療を脊髄損傷のリハビリテーションに組み合わせることで、排尿障害が改善する可能性もありますので、さらなる技術の発展や研究が望まれます。
よくあるご質問
脊髄損傷で排尿障害が起こりやすいのはなぜですか?
膀胱に尿をためたり出したりする機能は、脊髄の一番下の部位にある排尿中枢というところで制御されています。排尿中枢は、大脳や脳幹部からの指令によって調節されているので、脊髄のどの部位に障害を受けても、排尿障害は必ずおこるのです。脳から脊髄の一番下の部位までは、ほぼ腰のあたりまでと長い距離となっていますので、脊髄損傷で排尿障害が起こりやすいといえるでしょう。
神経因性膀胱の原因は?
神経因性膀胱は、神経の働きが上手くいかず、膀胱の働きが正常でなくなる病気の総称です。そのため、排尿にまつわる神経がダメージを受けると、神経因性膀胱となります。脊髄の障害(外傷による脊髄損傷、血管障害、腫瘍性病変、変性疾患など)の他、二分脊椎(先天的な脊髄の異常)、神経難病(多系統萎縮症、パーキンソン病など)、末梢神経障害(糖尿病、骨盤内手術による合併症)などの神経障害などがあります。
<参照元>
脊髄損傷における 下部尿路機能障害の 診療ガイドライン:https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/36_lower-urinary_dysfunction_2019.pdf
排尿障害のリハビリテーションの進歩:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/48/2/48_2_87/_pdf
神経因性下部尿路機能障害(神経因性膀胱) の機序と治療の最新知識:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/27/1/27_4/_pdf
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