脊髄損傷でも歩行可能!?最新の人工神経接続システムとは? 脳梗塞・脊髄損傷の幹細胞治療|ニューロテックメディカル
脊髄損傷・脊椎疾患

脊髄損傷でも歩行可能!?最新の人工神経接続システムとは?

脊髄損傷でも歩行可能!?最新の人工神経接続システムとは?

この記事を読んでわかること

脊髄損傷の病態がわかる。
脊髄損傷の最新治療がわかる。
人工神経接続システムの最新の知見が得られる。


脊髄損傷に陥ると四肢麻痺や半身麻痺によって歩行困難に陥る可能性が高く、その改善のため、リハビリや再生医療など、さまざまな角度からの治療が開発されてきました。
近年では、人工神経接続システムと呼ばれる新しい治療法も開発されており、注目されています。
この記事では脊髄損傷に対する人工神経接続システムによる治療を詳しく紹介します。

脊髄損傷で歩行困難になるメカニズム

横転する車
交通外傷や転倒・転落、もしくは何らかの脊髄疾患(腫瘍や梗塞、解離など)によって脊髄損傷が生じた場合に歩行困難になるメカニズムは、錐体路が障害されるためです。
錐体路とは、脳から発せられる運動の指令が脊髄を介して身体に伝達されるまでの神経経路のことであり、下記のような順に辿ります。
大脳運動野→内包後脚→中脳大脳脚→橋→延髄の錐体→錐体交叉→脊髄側索(一部は前索)→脊髄前角
このように、脊髄は脳から発せられる運動の指令を身体に、身体から伝わる痛みや温度などの感覚を脳に伝える架け橋のような組織であるため、脊髄損傷によって身体に運動の指令が届かなくなるのです。
頸髄を損傷すると四肢麻痺(手足ともに麻痺)、腰髄を損傷すると下肢麻痺(両足のみ麻痺)に陥り、いずれにしても歩行が困難になります。

脊髄損傷による歩行困難に対する従来の治療

脊髄損傷による歩行困難に対する従来の治療は主に下記の2つです。

急性期 安静や固定、手術
慢性期 リハビリや装具療法

急性期には脊椎が不安定になっており、動かすと不安定になって脊椎が動いて脊髄をさらに圧迫する可能性があります。
そこで、急性期は安静や装具による固定、必要に応じて手術による直接的な脊椎固定術が選択されます。
急性期を経過したあとは、残存する神経学的後遺症や筋力低下、ADL(日常生活動作)低下に対し、リハビリや装具療法による機能回復を目指すのが一般的です。
しかし、慢性期の治療はあくまで機能回復を目指す治療であり、元の歩行機能にまで改善するケースは稀です。
一方で、近年では再生医療の発展が目覚ましく、再生医療の技術を用いて損傷した脊髄の機能を再生させ、神経機能の改善を目指す治療も開発されています。
その代表例が札幌医科大学が中心となって開発した「ステミラック」であり、患者さん自身の骨髄から採取した間葉系幹細胞を培養・増幅させ、点滴によって身体に戻す治療法です。
この治療は急性期の外傷性脊髄損傷に対してすでに安全性や有効性が確認されており、すでに保険適用で多くの医療機関での実用化が始まっています。

最新の人工神経接続システムとは

近年では、神経機能回復のための新たな治療法として、再生医療以外にも「コンピュータ・インターフェイス」と呼ばれる分野の発展も目覚ましいです。
コンピュータ・インターフェイスとは、コンピュータを介して損傷していない神経回路に運動の指令を送り込み、失った運動機能の再獲得を目指す治療法です。
冒頭に記載の通り、脊髄損傷では錐体路の一部が破壊されて運動機能が障害されますが、この際、損傷部位より上流の大脳皮質や、損傷部位より下流の脊髄内神経回路自体は機能を有したまま存在しています。
そこで、コンピュータを介して機能の温存されている大脳皮質と脊髄内神経回路を人工的に接続し、大脳からの運動の指令を末梢神経や筋肉に伝達することで、従来の運動機能を取り戻せる可能性が高まります。
コンピュータ・インターフェイスによる治療は以前からも開発が進められてきましたが、これまでの方法では脳や脊髄に電極を埋め込む外科手術が必要で、大変侵襲的な方法でした。
しかし、近年では非侵襲的に神経回路を人工接続できるシステムの開発も進んでいます。
実際に、国内で報告されている研究では、非侵襲的な磁気を利用して脳や脊髄を刺激し、電極などを植え込む必要なく、四肢の運動のコントロールに成功しています。
また、この磁気刺激を繰り返し与えると、本来持ち合わせていた運動機能も刺激され、磁気刺激を与えなくても四肢を動かせる範囲が大きく改善したと報告されています。
今後も更なる開発が進めば、脊髄損傷後でも非侵襲的に歩行可能になる可能性が高く、今後の期待が待たれるところです。

まとめ

脊髄は脳と身体をつなぐ非常に重要な組織であり、損傷することで運動能力や感覚機能が著しく毀損されます。
それに対し、従来までは手術やリハビリなどによる悪化の予防、もしくは機能の再獲得が主な治療でしたが、この記事でも紹介したように再生医療やコンピュータ・インターフェイスなど、新たな治療法が徐々に確立されつつあります。
特に、コンピュータ・インターフェイスでの治療は非侵襲的に運動機能の改善を図ることができる可能性があり、今後さらなる研究が必要です。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。

よくあるご質問

脊髄損傷になった後も歩けるようになる?
結論から言えば、脊髄損傷になった後も歩けるようになる可能性は、損傷の程度によります。
一部分のみの損傷であれば、その後のリハビリなどで改善が見込めますが、完全に損傷した場合は一般的には改善困難です。
脊髄損傷になった場合の注意点は?
脊髄損傷になった場合の注意点は、特に急性期は安静が重要であり、安静にしないと二次被害の可能性が高まります。
一方で、慢性期には褥瘡予防や呼吸訓練など、継続的なリハビリが必要となります。

<参照元>
(1):脊髄損傷|日本脊髄外科学会:https://www.nsj-official.jp/general/diseasename/08_damage/sekizui.html
(2):脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック注」を用いた診療について|札幌医科大学附属病院:https://web.sapmed.ac.jp/hospital/topics/news/stemirac.html
(3):Toshiki Tazoe,et al.Non-invasive closed-loop spinal stimulation restores leg stepping control in humans with paraplegia.Brain. 2026 Jan 8;149(1):274-289. PMID: 41290222 PMCID: PMC12782173 DOI: 10.1093/brain/awaf230):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41290222/

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この記事の監修

監修医師 貴宝院永稔医師

貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)

脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医

リニューロの治療概念図
リニューロ®最大の特長は、幹細胞点滴投与中に集中的かつ反復的に狙った神経回路に適した刺激を与えることです。
身体の治る力を高める再生医療で土台を作り、狙った神経回路に同時刺激を与えることで、神経回路の再構築・強化を目指していきます。

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