この記事を読んでわかること
脊髄損傷の合併症である異所性骨化の概要
異所性骨化の初期症状と注意点
異所性骨化の予防方法と治療方法
脊髄損傷の合併症で本来骨がない部位に骨ができてしまう症状を異所性骨化といいます。
異所性骨化を発症すると、関節が硬くなるなどの症状が出現することがあり、日常生活動作に悪影響を及ぼすことがあります。
この記事では脊髄損傷における異所性骨化について、概要から発症時の初期症状、治療方法まで解説します。
脊髄損傷後に身体の中に骨ができる異所性骨化とは?

脊髄損傷を受傷した後の合併症には様々な種類があります。
その中でも急に本来は骨がない部分に病的な骨が形成されてしまう合併症が異所性骨化です。
異所性骨化の原因は脊髄損傷、事故後などの外傷、長期間の安静や股関節の骨折などがあります。
脊髄損傷における異所性骨化は約20%の確率で発症し、損傷した部位よりも下の身体が全く動かなくなる完全損傷で確率が上がります。
異所性骨化は身体の中でも股関節の周辺に起こりやすいです。
進行してしまうと関節を動かすことが難しくなり、日常生活に影響を与えてしまうことがあります。
過去の研究では、異所性骨化の有無が筋力などの身体の機能にはあまり影響を与えませんが、着替えや入浴・移動などの日常生活の動作に悪影響を与えることを報告しています。
脊髄損傷の方は車椅子での生活など、股関節を大きく曲げた状態で動作を行うことが多く、異所性骨化によって関節が硬くなると生活動作が獲得できなくなることがあります。
異所性骨化の初期症状と注意点
異所性骨化の初期症状は軽度の痛み・腫れ・皮膚の赤みなどがあります。
しかし、打撲などの他の症状でも出現するため、初期の段階で気づくためには注意を払う必要があります。
レントゲンなどの画像検査では3〜4週間程度経過した後にうっすらと写り始め、2ヶ月以降でもやもやした影が写るようになります。
脊髄損傷における異所性骨化で注意が必要な点は、症状として痛みや熱さに気が付きにくくなるなどの感覚障害が出現している場合、初期サインである痛みを感じにくいことです。
初期症状に気が付かないとある日突然、関節が硬くなりリハビリを進められない状況になることがあります。
また、異所性骨化が起こった場所や形によっては、脊髄損傷の合併症の褥瘡(いわゆる床ずれ)の原因になることもあります。
そのため、理学療法士などのリハビリテーション専門職や看護師と初期症状として出現する腫れや皮膚の赤みが出現していないかを確認することが重要です。
発症を予防するための正しいリハビリと治療方法
異所性骨化は局所的な炎症や過度な刺激が、筋肉などになる予定だった細胞を骨に変えてしまうことが原因の一つとして明らかになっています。
このことから、リハビリでの無理な関節が固くならないように動かす運動(関節可動域運動)やストレッチで異所性骨化を発症するリスクが上がってしまいます。
そのため、リハビリを行う際は炎症を起こさない程度の強さで運動を行うことが重要です。
また、異所性骨化の予防には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効であることが報告されています。
NSAIDsの代表的な薬はロキソニンで、痛みと炎症を抑える効果があります。
他の薬剤ではビスホスホネートという骨を分解する細胞の働きを抑える薬が使用されることもありますが、異所性骨化の予防に対する効果は明らかになっていません。
異所性骨化を発症した後の治療方法で最も有効な治療は手術です。
手術の合併症として感染などの問題が起こりやすいため、手術の傷口の清潔を保つなどの注意が必要です。
手術以外の治療方法としては放射線療法があります。
放射線療法のメリットは手術と違い、傷ができないため身体への負担が少ないことですが、再発率が手術よりも高いことに注意が必要です。
異所性骨化の予防には無理をしないリハビリとNSAIDs、治療は手術や放射線療法がありそれぞれにあった方法を選択して治療を行います。
まとめ
この記事では脊髄損傷後に起こる異所性骨化について解説しました。
異所性骨化とは脊髄損傷後に発症することがあり、本来ないはずの部位に骨ができる合併症です。
初期症状のサインとしては痛みや腫れ・皮膚の赤みがありますが、感覚障害の影響で進行するまで気がつかないことがあります。
予防としては無理をしないリハビリやNSAIDs、治療は手術や放射線があり、身体の状態に合った治療方法が選択されます。
脊髄損傷で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 異所性骨化は脊髄損傷を受傷してからどのくらいの時期に発症しやすいですか?
- 多くの場合、受傷後2〜3ヶ月以内の急性期に最も発症しやすいとされています。
この時期は特に身体の炎症反応が強いことが多いため、注意深く全身(特に股関節周囲)を観察することが大切です。
- 感覚麻痺で痛みがわからない場合、どうやって初期症状に気づけばいいですか?
- 痛みを感じなくても、足の付け根が腫れている、触ると熱がある、皮膚が赤くなっている等の見た目の変化が現れます。
また、足が開きにくくなったなどの動作時の違和感で気づくことも多いため、日頃から関節の動きを確認しましょう。
<参照元>
(1):Heterotopic ossification after central nervous system trauma|PMC|M P Sullivan et al Bone Joint Res. 2013 Mar 1;2(3):51–57. doi: 10.1302/2046-3758.23.2000152:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3626201/
(2):脊髄損傷患者における異所性骨化の検討|J-stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/38/1/38_1_406/_pdf/-char/en
(3):Impact of Heterotopic Ossification on Functional Recovery in Acute Spinal Cord Injury|PMC|Steffen Franz et al Front Cell Neurosci. 2022 Feb 9;16:842090. doi: 10.3389/fncel.2022.842090:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8864137/
(4):HETEROTOPIC OSSIFICATION AFTER SPINAL CORD INJURY: PREVENTION AND TREATMENT – A SISTEMATIC REVIEW|PMC Acta Ortop Bras. 2023 Jul 17;31(3):e267451. doi: 10.1590/1413-785220233103e267451:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10353873/













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