この記事を読んでわかること
SLEの病態と原因がわかる。
SLEが妊娠に与える影響がわかる。
SLEに対する最新治療がわかる。
SLEは自己抗体によって全身の臓器が障害される病気であり、特に若年女性で発症しやすいことから、妊娠に多大な影響を与えることが知られています。
これまで根治する方法はありませんでしたが、近年では再生医療による治療が開発されており、新たな治療法として注目されています。
この記事では、SLEの概要や最新治療を紹介します。
難病SLEの病態や症状
SLEとは、Systemic Lupus Erythematosusの略で、日本語で全身性エリテマトーデスと呼ばれる病気です。
Systemic=全身性という意味であり、その名の通り、全身のさまざまな臓器にさまざまな症状をきたすことが由来です。
次に、Lupus Erythematosusとは、ラテン語で「狼に噛まれた痕のような赤い紅斑」という意味であり、SLEに特徴的な皮膚症状を指します。
具体的には、下記のような症状がSLE発症によって生じます。
- 全身症状:発熱や倦怠感、易疲労感など
- 関節症状:四肢関節の関節炎
- 皮膚症状:蝶が羽ばたいているような顔面の赤み(蝶形紅斑)
- 日光過敏:紫外線被曝後の赤みや腫れ
- 多臓器障害:腎臓、神経精神症状、心病変、肺病変、消化器病変、血液異常など
- 口内炎
- 脱毛
次に、SLEの主な病態は、抗核抗体と呼ばれる自己抗体が体内で産生され、その自己抗体が正常な細胞を破壊することです。
本来、体内に侵入した異物を感知して攻撃する免疫細胞が、誤って自身の正常な細胞を異物と誤認してしまい、抗核抗体が産生されます。
その抗核抗体が、全身の細胞を攻撃することで多彩な症状が生じます。
難病SLEが妊娠に与える影響とは

SLEは20〜40代の女性で発症しやすいことが知られており、まさに妊娠適齢期に発症してしまう女性も少なくありません。
しかし、SLEは妊娠・出産に対して下記のようなさまざまな悪影響を与えることが知られています。
- 母体の病状が悪化する可能性が高い
- 抗リン脂質抗体症候群を合併すると流産しやすい
- 抗SS-A抗体陽性の場合は胎児にも症状が生じる
- 治療に用いるステロイドが妊娠糖尿病のリスクを増大させる
SLEは妊娠を契機に症状が悪化する可能性があり、それによって母子ともに健康被害が報告されています。
また、SLE発症者では抗リン脂質抗体と呼ばれる自己抗体も産生されやすく、抗リン脂質抗体によって胎盤に血栓が形成されやすくなるため、流産の確率が高まる点で注意が必要です。
他にも、抗SS-A抗体と呼ばれる自己抗体も産生されやすくなり、この自己抗体は胎盤を通過して胎児の身体を攻撃してしまうため、心疾患や貧血などの症状を引き起こす原因となります。
以上のように、さまざまな悪影響を及ぼす可能性があり、場合によっては妊娠そのものを推奨できない場合もあります。
難病SLEに対する従来の治療法と最新治療

SLEが難病指定されている理由は、根治的に自己抗体を身体から消す方法がないためであり、現状では主に下記のような治療が行われます。
- ステロイド
- 免疫抑制剤
これらの治療はどちらも免疫細胞の機能を抑えることで、自己抗体の産生を抑えて、症状を緩和する治療です。
一方で、これらの長期使用は高血圧や糖尿病、骨粗鬆症や感染症など、さまざまな合併症リスクが上がってしまいます。
そこで、近年では新たな治療法として、骨髄由来間葉系幹細胞を用いた再生医療が注目されています。
北海道大学の研究によれば、SLE発症マウスには骨髄の自律神経が障害されており、それによって多臓器の障害が生じていることを発見しました。
そこで、神経再生効果が期待できる骨髄由来間葉系幹細胞を投与したところ、皮膚炎、腎炎などの多臓器障害や生存率の改善が報告されています。
同様に、間葉系幹細胞をSLEの治療に応用する研究は世界中で行われており、今後の実用化が待たれるところです。
まとめ
今回の記事では、SLEの病態や妊娠への影響、最新の治療法を紹介しました。
SLEは自己免疫性疾患の1つであり、一度発症すると基本的に根治することは困難な病気です。
また、進行すると中枢神経系も障害され、痙攣や意識障害、脳血管障害の発症を引き起こすことが知られています。
そこで、近年では幹細胞を用いた治療の開発が進んでおり、SLEへの新たな治療法として注目されています。
また、再生医療はSLEによる神経障害に対しても改善できる可能性がある治療法です。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
SLEによる神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- SLEになりやすい人は?
- SLEは20〜40代の女性で発症しやすいことが知られており、男女比は1:9と圧倒的に女性に多い病気です。
他にも、遺伝的要因や紫外線、ストレスなどが発症の要因となることが報告されています。
- SLEの余命は?
- SLEはステロイドがない時代には5年生存率約50%と非常に予後不良な疾患でした。
しかし、ステロイド登場後は予後が大幅に改善し、現在では5年生存率95%以上と報告されています。
<参照元>
(1):全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)|難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/53
(2):妊娠と全身性エリテマトーデス(SLE)|国立成育医療研究センター:https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-sle.html
(3):(2)全身性エリテマトーデス(SLE)|日本産婦人科医会:https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89%E5%85%A8%E8%BA%AB%E6%80%A7%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%9E%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%B9%EF%BC%88sle%EF%BC%89/
(4):全身性エリテマトーデスマウスに対する間葉系幹細胞治療~3次元ファイバー基材で培養した細胞で骨髄の自律神経障害と多臓器障害を改善~|北海道大学:https://www.hs.hokudai.ac.jp/archives/35175













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