この記事を読んでわかること
RCVSの病態がわかる
RCVSとストレスの関係がわかる
ストレス以外のRCVSの原因がわかる
RCVSとは、交感神経系の過剰興奮に伴い脳血管が過剰収縮と弛緩を繰り返し、一時的に激しい頭痛に襲われる病気です。
主な原因はストレスと考えられており、運動や息こらえ、入浴など、日常生活のさまざまな要因で発症しうる病気です。
この記事では、RCVSとストレスの関係や発症を予防するためのストレス緩和法についても解説します。
ストレスがRCVSを引き起こすメカニズム
RCVSとはReversible Cerebral Vasoconstriction Syndromeの略で、日本語で「可逆性脳血管収縮症候群」といいます。
その名の通り、脳血管の収縮に伴い可逆的に雷鳴頭痛(突然発症し、1分以内に痛みの強さがピークに達するもの)が生じる疾患です。
ストレスが原因で発症することが知られており、そのメカニズムは下記のとおりです。
- ストレスによって交感神経系が過剰活性化
- 血管内皮細胞障害や酸化ストレスなどによって脳血管の緊張障害が生じる
- 脳表の小血管の拡張と攣縮が生じる
- 上記反応が中血管→主幹動脈へと波及していく
この際、脳表の小血管の拡張によって血管壁が急激に進展し、血管壁に存在する痛覚の神経(三叉神経など)が刺激されることで雷鳴頭痛が生じると考えられています。
この頭痛は1回につき1〜3時間ほど続き、発症から1〜4週の間に平均して4〜5回程度繰り返すことが知られています。
発症から最初の1週間が頭痛のピークですが、徐々に痛みは漸減し、発症から3週ほどで痛みが改善していく点が特徴的な経過です。
これは、発症初期の脳表の小血管の拡張が頭痛に関係しており、時間経過とともに拡張・攣縮の主座が痛みと無関係の中血管・主幹動脈に移っていくため、頭痛が3週間ほどで改善してくと考えられています。
ストレス管理によるRCVS予防法
RCVSはストレスによる交感神経の活性化が発症のトリガーとなり得るため、発症を予防するためには身体的・精神的ストレスの緩和が重要です。
町田らによれば、町内会費の集金のために数時間近所を歩き回ったストレスによってRCVSを発症した可能性がある症例も報告されており、RCVSとストレスには深い因果関係があります。
そのため、下記のような方法で日常生活からストレスを緩和していくことが予防の観点において重要です。
- 規則正しく、過度な負荷のかからない有酸素運動を定期的に行う
- 自身の好みのリラックス方法(瞑想やアロマ・ヨガなど)を実践する
- 映画鑑賞やサウナなど、趣味に費やす時間を確保する
- 質の高い睡眠を最低でも1日6時間以上は確保する
- 1日の中で休憩時間を適宜確保する
- 過度に辛いものや苦いものは食べない
- 過度な飲酒や喫煙は控える
- 栄養バランスの良い食事を定期的に摂取する
リラックスできる方法は人によっても個人差があるため、上記はあくまで一例ですが、質の高い睡眠やバランスの良い食事摂取、運動習慣などは誰にとってもストレスを緩和する効果が期待できるため、ぜひ実践してみるとよいでしょう。
ストレス以外のRCVSのリスク要因とは?
実は、RCVSはストレス以外にも下記のようなリスク要因があることが知られています。
- 入浴やシャワー
- 性行為
- 労作
- 息こらえ
- 感情の激しい変動
- 排尿や排便
- 激しい運動
- 咳やくしゃみ
- 出産後
- 覚醒剤や大麻、コカインなどの違法薬物
- α交感神経刺激薬やセロトニン作動薬などの血管作動性物質の使用
詳しく病態が解明されているわけではありませんが、上記のような要因は交感神経系を刺激してしまうため、RCVSの発症リスクを増大させると考えられています。
なお、発症者の半数以上の場合は、出産後、覚醒剤や大麻・コカインなどの違法薬物、α交感神経刺激薬やセロトニン作動薬などの血管作動性物質の使用など、二次性の原因であることが多いです。
まとめ
今回の記事では、RCVSとストレスの関係性について詳しく解説しました。
RCVSは労作や運動などの身体的ストレス、もしくは感情の変動などに伴う精神的ストレスによって、交感神経系の過剰興奮が生じて脳血管の拡張と攣縮が繰り返し、激しい頭痛を来す疾患です。
一度発症すると数週間は電撃的な頭痛が継続するため、発症予防のためにも身体的・精神的ストレスを日頃から緩和しておくと良いでしょう。
また、RCVSは同じ脳血管の疾患である脳梗塞や脳出血を合併することがあり、もしこれらの疾患を合併してしまうと麻痺やしびれなどの後遺症が残ってしまう可能性があるため、やはりストレス緩和によってRCVSそのものの発症を予防することが重要です。
一方で、近年ではRCVSに伴う脳梗塞の後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であったRCVSに伴う脳梗塞後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 可逆性脳血管攣縮症候群は自然治癒しますか?
- 可逆性脳血管攣縮症候群は、その名の通り「可逆性」であり、自然治癒する病気です。
通常は症状は1〜3ヶ月で自然寛解し、脳梗塞や脳出血を合併しなければ特に後遺症なども残りません。 - ストレスで脳の血管が切れる原因は?
- 長期的に高血圧や糖尿病、喫煙など繰り返す場合、脳の血管は動脈硬化が進み、本来の本来の柔軟性を失ってしまいます。
ストレスが加わると交感神経が過剰に活性化し、血管に圧がかかるため、硬く脆い血管は破綻して出血します。
<参照元>
(1):可逆性脳血管収縮症候群(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome)|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/35/4/35_416/_pdf
(2):心因の関与する片頭痛が疑われた可逆性脳血管攣縮症候群の1症例|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/61/8/61_61.8_722/_pdf
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