この記事を読んでわかること
脳梗塞と脳出血の緊急性の違いがわかる
脳梗塞の治療法がわかる
脳血管障害の早期発見方法がわかる
脳梗塞と脳出血はどちらも脳血管の病気であり、脳細胞への血液供給が途絶することでさまざまな神経症状をきたします。
そのため、脳虚血に陥るまでに早期発見・早期治療することが重要です。
特に脳出血は発症後の致死率が高いため、より早期治療が重要です。
この記事では、脳梗塞と脳出血の“命の危険度”と初期対応について詳しく解説します。
致死率が高いのは?脳出血は初期重症化しやすい?
結論から言えば、致死率が高いのは脳梗塞よりも脳出血やくも膜下出血になります。
そのメカニズムを理解するためには、各疾患の病態を理解する必要があり、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血(総じて脳血管障害)はそれぞれ病態が異なります。
脳梗塞は脳の血管が閉塞する病気であり、その血管に栄養されている脳細胞が壊死してしまう病気です。
一方で、脳出血やくも膜下出血は頭蓋内の血管がなんらかの原因で破綻し、出血を引き起こすことで脳への栄養が途絶したり、蓄積した血腫によって他の脳が圧迫され、さまざまな神経症状をきたす疾患です。
一般的に、脳梗塞は局所的な虚血であり、被害はその梗塞部位に限るため、生命を脅かすケースは主に、重度で広範囲な場合に限ります。
重度で広範囲に脳梗塞を発症すれば、脳には広範に浮腫が生じ、頭蓋骨で囲まれた閉鎖空間で脳が圧迫されることで、呼吸や循環を維持する脳の部位が障害されると死に至る可能性があるため、注意が必要です。
一方で、脳出血やくも膜下出血は頭蓋骨で囲まれた閉鎖空間に激しい勢いで血液が充満していくため、脳梗塞と比較して脳が圧迫を受けやすく、その理由から致死率が高いです。
実際に、国立循環器病研究センターの研究では、2010年から2016年に、虚血性脳卒中、脳内出血、くも膜下出血で入院した患者の入院後30日以内の死亡率はそれぞれ、4.4%、16.0%、26.6%でした。
またこれまでの多くの研究で脳出血の予後増悪因子が報告されており、出血量・出血部位・患者年齢・既往歴などが挙げられます。
いかに早期に脳出血を発見し、早期対策できるかが生命予後にとって重要です。
脳梗塞はt-PAなど治療のタイミングがカギ
一方で、脳梗塞も決して予後のいい病気ではなく、いかに早期発見・早期治療できるかで、その後の予後や神経機能も大きく変わってきます。
特に脳梗塞において重要な点は、発症からの経過時間によって治療の選択肢が変わってしまう点です。
脳梗塞の治療方法は主に下記の通りです。
発症後4.5時間以内 | t-PAによる血栓溶解療法 |
---|---|
発症後24時間以内 | 血管内治療 |
それ以降 | 保存的治療 |
発症後4.5時間以内で、かつさまざまな適応条件を満たしていれば、t-PAによる血栓溶解療法が第一選択肢となります。
その名の通り、t-PAと呼ばれる血栓を溶解する薬剤を血管から投与し、原因となる血栓を直接的に溶解する治療ですが、その分出血傾向になりやすく、脳出血の併発リスクがあるため、超急性期にしか使用不可です。
発症後24時間以内であれば、太ももから挿入したカテーテルを脳の原因血管まで進め、そのカテーテルから特殊な道具を用いて、血栓の吸引・除去を行います。
この血管内治療はt-PA施行患者にも併用することでより高い効果が期待できます。
発症後24時間を超えた場合は治療の選択肢が保存的療法しかなく、抗血小板薬や抗凝固薬、脳保護剤、利尿剤などを用いて、新規血栓の形成や脳浮腫の予防・治療を行うことが一般的です。
しかし、保存療法はあくまで症状の再発・増悪を予防するものであって、原因となる血栓を除去できるわけではないため、神経症状が残るリスクはt-PAや血管内治療より高く、やはり早期治療が重要と言えるでしょう。
どちらも「時間との勝負」救急対応の重要性
脳梗塞・脳出血は、予後改善のためには時間との勝負であり、いかに早期から適切な救急対応を実施できるかが鍵となります。
脳細胞は非常に虚血に弱い細胞であり、虚血に陥ってから15分〜1時間程度で壊死し始めるため、いかに早期に虚血を解除できるかが重要なのです。
治療までの時間がかかれば脳細胞が壊死し、一度壊死した脳細胞は基本的に元には戻らないため、麻痺やしびれなどの後遺症が残ってしまいます。
そこで、早期発見のためには下記のような「脳卒中のFAST」に注意しましょう。
Face | 顔の片麻痺 |
---|---|
Arm | 腕が片方上がらない |
Speech | うまく話せない |
time | 疑わしい場合は躊躇せず救急車を |
まとめ
今回の記事では、脳梗塞と脳出血の重症度や緊急性について詳しく解説しました。
どちらの疾患も脳が虚血になる可能性が高く、早期発見・早期治療できなければ、麻痺やしびれなど様々な神経症状を残し、その後の日常生活に大きな支障を与えます。
これらの後遺症に対し、現状ではリハビリしか改善する術はなく、それでも後遺症を根治することは困難です。
そこで、近年では脳血管障害の後遺症に対する新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳血管障害の後遺症改善が期待できます。
よくあるご質問
- 脳出血と脳梗塞ではどちらが多い病気ですか?
- 脳出血と脳梗塞では脳梗塞の方が圧倒的に多いです。
2020年の厚生労働省の患者調査では、脳梗塞の発症者数は年間で119.9万人に対し、脳出血は20.1万人に留まりました。 - 脳出血の余命は?
- 脳出血の余命は一般的に発症から10〜15年程度とされますが、脳出血の発症年齢や重症度、出血量、出血部位など、予後はさまざまな要因で左右されます。
慢性期の死因としては誤嚥性肺炎や尿路感染症などが挙げられます。
<参照元>
(1):脳卒中の予後(死亡率)と脳卒中専門医師数の関係について -ビックデータを用いて初めて可視化に成功―|国立循環器病研究センター:https://www.ncvc.go.jp/pr/release/20210816_press/
(2):脳内出血患者における急性期病院退院時の機能予後とその要因|J STGAE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/advpub/0/advpub_11130/_pdf
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