この記事を読んでわかること
・MRIと超音波検査による診断方法の進化
・2つの疾患の基本的な違い
・共通するリスク要因と症状
今回は、潜在性二分脊椎と先天性皮膚洞の違いと共通点について解説します。
いずれも脊椎の形成異常が原因で起こる疾患ですが、違いがあります。
潜在性二分脊椎は、生まれた際には、脊髄が外に出ないタイプの二分脊椎の1つです。
一方、先天性皮膚洞は、皮膚から脊椎まで通じる管状の異常で、皮膚に穴が開いているため感染のリスクを伴います。
MRIと超音波検査による診断方法の進化
この記事ではMRIと超音波検査による診断方法の進化について解説します。
まずは、MRIよる診断方法の進化です。
高性能化により解像度が高度化し、脊髄や脊柱の微細な構造をより詳細に捉えることができます。
これにより、脊髄と脊柱の微妙な位置関係、小病変などの早期発見ができます。
さらに、従来の画像評価に加え、機能的MRIを用いることで、脊髄の機能障害を明らかにすることが可能となり、症状と画像との関連性をより正確に判断することが可能となりました。
治療方針の決定に役立ちます。
加えて、神経線維の走行を評価する拡散テンソル画像により、脊髄の損傷部位や程度をより詳細に評価できるようになりました。
次に、超音波検査による診断方法の進歩です。
高周波プローブの開発によって、深部組織の観察が可能となり、特に、新生児の病変評価が容易となりました。
3D/4D超音波により、脊柱の立体的な構造が可視化でき、病変の形態や大きさなどをより正確に捉えることができるようになりました。
さらに、血管の血流を評価するドップラー超音波により、脊髄への血流障害が計測可能となっています。
2つの疾患の基本的な違い
この記事では2つの疾患の基本的な違いについて解説します。
両疾患とも脊椎の形成異常が原因となりますが、違いがあります。
まずは、潜在性二分脊椎です。
二分脊椎には、開放性と閉塞性の2つがあります。
閉鎖性二分脊椎の中で、頻度が高いのが潜在性二分脊椎です。
脊椎の形成異常は、外見からは明らかでは無いため潜在性の名称がついています。
一般的に画像診断(MRI検査など)で偶発的に発見されることが多いです。
生まれてから乳幼児までは一般的に神経症状がみられることは少なく、治療を要することは少ないです。
しかしながら、成長とともに神経症状が現れる可能性があるので定期的なフォローアップが必要な疾患です。
次に、先天性皮膚洞です。
皮膚表面から脊椎または脳膜まで通じる管状の異常が認められ、皮膚に小さな穴が開いていることが特徴です。
穴の周囲には紅斑、多毛、色素沈着などの皮膚の異常所見を伴うことがあります。
穴が深いと髄膜との交通ができるので、細菌が侵入すると、髄膜への感染が起こり髄膜炎を起こします。
治療には、感染予防のための抗生物質投与や、必要に応じて外科的な切除が含まれます。
共通するリスク要因と症状
この記事では共通するリスク要因と症状について解説します。
共通するリスク要因として、遺伝的要因や環境要因が挙げられます。
家族内に同様の患者がいる場合、発症リスクが高まる可能性があります。
環境要因としては、妊娠中の母親の葉酸不足です。
この状態は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを高めるので、両疾患の発症に関与すると考えられます。
共通する症状として、まずは神経症状です。
脊髄神経に障害があるため、下肢の痺れや痛み、運動機能の低下、排尿・排便障害などの症状が現れることがあります。
また、皮膚症状も見逃せません。
外見上の異常所見です。
潜在性二分脊椎では、病変部位に毛が生えたり、色素沈着が見られたりすることがあります。
先天性皮膚洞では、皮膚に小さな穴やへこみが見られます。
それぞれの疾患の特徴的な症状は以下です。
潜在性二分脊椎では、多くの場合、出生時は無症状である場合が多いですが、成長とともに神経症状が現れることがあります。
その他、脊柱側弯症などを伴うこともあります。
一方、先天性皮膚洞は、皮膚の穴から細菌が侵入し、髄膜炎などの感染症を引き起こすことがあります。
皮膚の穴から髄液が漏出することもあります。
まとめ
今回の記事では、潜在性二分脊椎と先天性皮膚洞の違いと共通点について記載しました。
両疾患とも脊髄に損傷を与える疾患であり、損傷された神経組織はこれまでの治療では再生が難しいのが現状です。
そのため、新たな治療として再生医療には期待が持てます。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「再生医療×同時リハビリ™」があります。
これらの治療法は、脊髄損傷による後遺症が残った患者さんにおける、新たな治療法として期待が持てます。
よくあるご質問
- 脊髄係留症候群と二分脊椎症の違いは何ですか?
- 脊髄係留症候群は、腰の二分脊椎がある部位で周囲の組織に癒着している病態です。
そのため、成長期において、身長が伸びるにしたがって脊髄が尾側に引っ張られるため、神経障害が起こります。
二分脊椎症には、開放性と閉塞性の2つの分類がありますが、閉塞性二分脊椎で起こるのが特徴です。 - 潜在性二分脊椎の特徴は?
- 脊髄の形成異常による二分脊椎症の一つですが、外見からは明らかではない特徴があります。
生まれてから乳幼児までは一般的に神経症状がみられることは少ないです。
しかしながら、成長とともに神経症状が現れる可能性があるので定期的なフォローアップが必要な疾患です。
<参照元>
・日本小児神経外科学会:http://jpn-spn.umin.jp/sick/f.html
・慶応義塾大学脳神経外科学教室:https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/childhood/03.html
・日本脊髄外科学会:https://www.neurospine.jp/original35.html
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