この記事を読んでわかること
新しいリハビリの概念であるニューロリハについてわかる。
IVES治療・HANDS治療の概要がわかる。
FES治療と IVES治療・HANDS治療の違いがわかる。
脳出血による麻痺などの後遺症に対して、近年では神経ネットワークの再構築を目指すニューロリハという概念が確立されています。
ニューロリハを実践するリハビリ法として、FES治療、IVES治療・HANDS治療などの治療法が開発されています。
そこでこの記事では、IVES治療・HANDS治療の概要やFES治療との違いを紹介します。
脳出血に対するリハビリテーションの新たな概念

脳出血の急性期には安静や保存療法(血圧管理など)、さらには手術療法など、さまざまな治療の選択肢があります。
しかし、急性期以降の麻痺やしびれなどの後遺症に対して、現状では根治する術はなく、リハビリテーションによる機能の維持・改善を図るのが主な治療です。
従来のリハビリテーションは、「非麻痺側の機能を徹底的に高め、麻痺側の機能を代償することにより、日常生活動作を取り戻す」という考え方でした。
しかし近年では、リハビリに対する新たな考え方として、「麻痺側の筋肉を積極的に動かすことで、損傷した脳神経の再構築が促される」という概念が主流となりつつあります。
そこで、損傷した神経の機能回復促進を主目的とした「ニューロリハ」が登場し、さまざまな方法でのニューロリハが開発されています。
例えば、ミラー療法と呼ばれるニューロリハでは、目の前に鏡をおいて非麻痺側の運動を行うことで、あたかも麻痺側が運動しているように脳に錯覚させる治療法です。
脳は視覚情報から運動イメージを生成しやすくなり、結果として運動機能が有意に改善するという研究結果がこれまでにいくつも報告されています。
脳出血に対するIVES治療・HANDS治療とは
従来のニューロリハは、既存のリハビリテーションを工夫して行うようなものが多かったです。
しかし、近年ではコンピュータシステムを用いて、電気刺激を与えて効率的にニューロリハを行う手法も増えています。
最新のニューロリハとして、主に下記の2つの治療が代表的です。
- IVES治療
- HANDS治療
IVES治療
IVES治療とは、Integrated Volitional Control Electrical Stimulatorの略で、日本語で随意運動介助型機能的電気刺激という意味です。
IVES治療では、単に筋肉に刺激を与えるのではなく、脳からの運動指令によって生じる筋肉の活動を電気信号として読み取り、患者さんの随意運動を介助するように電気刺激を与えます。
これまでの研究で、単なる反復運動だけを行っても神経の再構築は促されないことがわかっていますが、IVES治療であれば患者さんの随意運動が元になるため、より効率的な神経の再構築が期待できます。
また、緻密な制御と運動学習が可能で、装着・操作が容易である点もIVES治療のメリットです。
HANDS治療
HANDS治療とは、Hybrid Assistive Neuromuscular Dynamic Stimulationの略で、日本語でハイブリッド随意運動介助型電気刺激という意味です。
IVES治療を行いながら、上肢に特殊な装具を1日8時間装着し、作業療法士の指導のもとで3週間のリハビリを行う治療プログラムを指します。
IVES治療に加えて、装具や作業療法を併用する点から、ハイブリッドと名付けられています。
鹿児島大学の報告によれば、HANDS治療を行った10名の患者において、コントロール群(HANDS治療を行わなかった患者群10名)と比較して、有意な運動機能の改善を認めています。
FES治療とIVES治療・HANDS治療の違いとは
実は、IVES治療・HANDS治療の前にはFESという治療もあり、これはFunctional Electrical Stimulation(機能的電気刺激)の略です。
FES治療はIVES治療の元となる治療であり、「筋肉に電気刺激を流す」という意味では同じですが、下記のような点で異なります。
| IVES治療・HANDS治療 | 患者さんの随意運動を感知して電気を流す |
|---|---|
| FES治療 | 歩行や何かを掴む動作など、決まった動作を再現するために電気を流す |
FES治療はあくまで電気刺激によって、事前にプログラムした動作を再現するリハビリであり、患者さんの随意運動には連動していません。
そのため、IVES治療・HANDS治療と比較して脳機能の再構築を促す作用が乏しいと考えられています。
以上のことから、IVES治療・HANDS治療はFES治療の中の1つであり、より脳機能の再構築に特化した治療であることを知っておきましょう。
まとめ
この記事では、脳神経の再構築を主目的としたニューロリハの中でも、最新治療の1つであるIVES治療・HANDS治療について詳しく紹介しました。
どちらも、FES治療から進化した治療法であり、患者さんの随意運動に合わせて電気刺激を送り、その運動をサポートすることでリハビリの促進・運動学習の向上、神経回路の再構築を促すと考えられています。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
脳出血による神経学的後遺症に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- 感覚障害を認める場合もIVES治療は行えますか?
- 軽度の感覚障害であればIVES治療は行えますが、感覚障害の程度が重度の場合、電気刺激による異常感覚や疼痛を招く可能性があるため、使用できません。
他にも、ペースメーカー装着や妊婦の方は治療は行えません。
- TENS療法とはなんですか?
- FES療法が運動神経に刺激を流すのに対し、TENS療法では感覚神経を持続的に刺激し、その感覚神経が伝達する痛みを鈍麻させることで、疼痛緩和を図る治療法です。
主に肉離れや腰痛、頚椎症など、慢性的な整形外科疾患に対して行われます。
<参照元>
(1):機能的電気刺激を用いた脳可塑性を生かすニューロリハビリテーション|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/53/6/53_452/_pdf
(2):運動イメージの想起が難しい 脳卒中上肢運動麻痺患者へのミラーセラピーの効果 ─ 2 症例での検討─|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/44/5/44_568/_pdf
(3):電気刺激療法(IVES/アイビス|旭川医科大学病院リハビリテーション科:https://www.asahikawa-med.ac.jp/hospital/rehab/index.php/topics/elect
(4):亜急性期の脳卒中患者におけるHANDS療法の効果(ランダマイズされた比較試験)|日本理学療法士学会:https://www.jspt.or.jp/eibun/2015/1502_1.html
(5):経皮的電気神経刺激(TENS)の疼痛軽減効果に関する検討─生理学的指標およびTENSの刺激強度に着目して─|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/30/1/30_63/_pdf













コメント