・脊髄損傷者の環境調整について
・ロコモーショントレーニングについて
・脊髄損傷者の退院後の継続したトレーニングの重要性について
脊髄損傷は損傷した神経より下位の神経域が麻痺してしまいます。
残存機能をトレーニングして、今ある機能でいかに生活動作を行えるようにするかが非常に重要です。
また、環境の調整も重要となってきます。
この記事では、脊髄損傷者の生活するにあたっての環境調整と能力を維持するためのトレーニングについてご紹介します。
目次
病院から在宅への移行と生活環境の調整
脊髄損傷者の日常生活動作を活かすには、環境整備が不可欠です。
特に、頚髄損傷者は動作方法や数センチ単位での設定が異なるだけで能力を発揮できなくなることが多いのです。
損傷部位が高位になるほど、環境に適応できる能力は低くなり、本人に合わせた環境を整えなければ動作が困難となる場合が多くあります。
環境整備によって能力が十分に発揮できるかどうかが決まります。
住宅改修箇所については、トイレ、浴室、洗面所、居室の順に多いとの報告が聞かれます。
ここでは、トイレと浴室の住宅改修についてご紹介します。
トイレ
排便動作は動作能力により方法が異なります。
座位保持が困難な場合はベッド上での介助での排便が適応になります。
動作能力が高く、自力動作が可能な場合は、以下のような動作方法があります。
- 高床式トイレ
- 車椅子とほぼ同じ高さの台を便器の周りに設置し、プッシュアップにて移動できるようにする
- 足を伸ばした姿勢で排便を行うため、着替えや座薬挿入などの動作を行う広さを確保する
- トイレ改修が困難な場合は、ポータブルトイレや市販のパイプを組み合わせて、簡易的に高床式のトイレを作成する方法もある
- 洋式トイレ
- 便座の高さは移乗しやすいように車椅子の座面と同じ高さにするとよい
- 姿勢保持や安全な動作の遂行のために、洋式便器の横に台を設置することもある
- トイレチェア
- 住宅改修が困難な場合や身体状況から端座位姿勢での排便が望ましい場合に選択する
- シャワーチェアを使用することが多い
排尿は膀胱直腸障害により自己導尿を行ったり、収尿袋への排泄を行います。
後始末のために汚物流しを設置することも視野に入れます。
浴室
自力で入浴動作が行えるレベルの方は、高床式浴室、ベンチ式浴室、自走式シャワーキャリーを使用します。
- 高床式浴室
- 車椅子とほぼ同等の高さの台を設置し、浴室内の移動はプッシュアップにて行う
- 洗体場と更衣場には背もたれを設置し、長座位姿勢を安定させるために使用する
- 浴槽の出入りは自力で行えるように洗い場と浴槽の縁を同じ高さにし、浴槽の出入りはプッシュアップ動作またはほふく動作にて行う
※介助の場合は吊り下げ式リフトを整備すると、介助者の負担を軽減できる - ベンチ式浴室
- 車椅子とほぼ同等の高さの長いベンチ台を用意し、端座位姿勢にて移動したり、洗体動作を行う
- 臀部を洗う時などは肘をベンチについて姿勢を保持することもあるため、横幅を広く要する
- シャワーキャリー
- 住宅改修が困難な場合や身体状況により、端座位での入浴を選択する場合、シャワーキャリーを使用する
ロコモーショントレーニングと転倒予防
運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を ロコモティブシンドローム(ロコモ)といいます。
人間が立つ、歩く、作業するといった、運動のために必要な身体の仕組みを運動器といい、運動器は骨・関節・筋肉・神経などから成り立っています。
脊髄損傷は完全に治す治療法がないため、予防することが大切です。
運動をしないと筋力をはじめとした身体機能が低下してしまいます。
ロコモーショントレーニング(ロコトレ)をしっかり行い、室内の電源コードの整理や段差をなくすなど環境も整え、転ばないように日頃から心がけましょう。
ロコトレはたった2つの運動、「片脚立ち」と「スクワット」です。
自身に合った安全な方法で、無理せず行いましょう。
片脚立ち
バランス能力をつけるロコトレ
- 床につかない程度に片脚を上げる
- 左右とも1分間で1セット、1日3セット行う
※転倒しないように必ずつかまる物がある場所で行う
※支えが必要な人は十分注意して、机に手や指をついて行う
スクワット
下肢筋力をつけるロコトレ
- 足を肩幅に広げて立つ
- お尻を後ろに引くように、2~3秒間かけてゆっくりと膝を曲げ、ゆっくり元に戻す
- 5~6回で1セット、1日3セット行う
※支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行う
日常生活でのリハビリテーションの継続の重要性
私たちの身体は筋肉を収縮させて手足を動かしていますが、運動不足や加齢による体力の低下に伴い、筋力の低下が起こります。
筋力を強化することは、ADL動作の獲得や維持のために大変重要です。
頸髄損傷者は、損傷部位以下の神経域に麻痺による筋力低下が起こります。
リハビリでは、麻痺のない動かすことの出来る力(残存筋力)を最大限に生かして、生活動作を行う訓練をします。
獲得した動作を繰り返しても疲労せず、安全に動作が出来るように筋力をつけていく必要があるのです。
退院後の運動不足等による筋力低下から、今までできていた生活の動作が難しくなる場合もあります。
退院後も筋力トレーニングを継続して行い、動作に必要な筋力を維持していきましょう。
まとめ
脊髄損傷は、損傷部位以下の神経域に麻痺による筋力低下が起こります。
完全損傷の場合は完全な治癒は困難と言われており、残存機能をトレーニングして最大限に活かせるようにしていくことが重要です。
トレーニングをして生活環境を整え、その人らしい生活が出来るように調整していくのです。
また、近年再生医療も注目を浴びています。
ニューロテックメディカルでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
また、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』をニューロテック®と定義し、生命の再生を促す再生医療を取り入れています。
再生医療だけではなく、リハビリも同時に行うことで(神経再生医療×同時リハビリ™)、より治る力を高めていくのです。
ご興味ある方は是非、お問い合わせください。
よくあるご質問
- 脊髄損傷の治療方法は?
- 残念ながら、脊髄損傷を完治させる方法はありません。
損傷部位が不安定になり更に障害部位が伸びないように予防したり、神経圧迫を解除するための手術を行ったりする場合はあります。 - 脊髄損傷のリハビリはどのくらいの期間行うのですか?
- 受傷後4か月を過ぎれば慢性期となります。
麻痺の回復はその後も徐々に6か月から1年以上にわたって進みますが、6か月を過ぎると大きな回復は見られなくなり、リハビリテーション終了時期とされています。
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<参照元>
・ロコモONLINE:
https://locomo-joa.jp/check/locotre
・国立身体障害者リハビリテーションセンター:
http://www.rehab.go.jp/rehanews/japanese/No361/2_1_story.html
・別府重度障害者センター:
http://www.rehab.go.jp/beppu/book/pdf/livinghome_no16.pdf
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