・構音障害とは何か、またその症状について
・構音障害の種類について
・構音障害に対してのリハビリテーション方法
構音障害とは、言葉を正常にはっきり発音する能力が失われる障害です。
話し言葉がぎこちなくなったり不明瞭になったりしますが、言葉の理解は正常であり、正しく使用することができます。
この記事では、構音障害の症状やリハビリ、構音障害の予後について説明します。
目次
構音障害とは
構音とは、音声を構成する声・発音・韻律を作り出すことです。
呼吸器・喉頭・咽頭・口腔に至る諸器官の運動と定義されています。
構音障害とは、口、舌、声帯など声を出すために重要な役割を持つ部位が障害され、上手く発声出来なくなった状態を指します。
構音障害の症状
構音障害の症状は以下のようなものがあります。
構音障害の症状
- 呂律が回らない
- 声が出ない(かすれ声、力んだ声、よわよわしい声、しゃがれた声など)
- 特定の音がはっきり言えない
- 音が長く続かず、終わりが小さくなる
- 声が高くなる、または低くなる
- 常に鼻から息が漏れてしまい、聞き取りづらい
- 発話の速度が遅すぎる、または速すぎる
- リズムが不自然
- 抑揚がない
- 「さしすせそ」が「しゃししゅしぇしょ」になるなど、音の誤りがある
- 嚥下障害を合併することがある(手べ物を上手く飲み込めない)
このような症状により、「なかなか言えずにもどかしくなる」「相手に何度も聞き返される」といったことが見られ、コミュニケーションを取ることをあきらめてしまう人もいます。
構音障害の種類
構音障害には以下の3つの種類があります。
音を作る時に使う器官が欠損したり、形の異常により起こる発音の問題をいいます。
先天的なものとしては、口蓋裂、粘膜下口蓋裂、鼻咽腔閉鎖不全などの形態の異常があります。
後天的なものとしては、癌などの切除手術によるものが代表的です。
舌癌の術後では舌の一部がなくなって動きが悪くなります。
脳梗塞によって脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受けて、その結果として唇や舌などに麻痺が出て、思い通りに舌や口を動かせず、発音に支障をきたします。
子供の頃に身に着けた発音の誤り、癖が大人になっても治らないなど、脳や神経、聴覚に異常がないにも関わらず、発音が上手く出来ない状態をいいます。
脳梗塞の構音障害は運動性構音障害に分類されます。
リハビリテーションの重要性
脳梗塞後のリハビリはできるだけ早期から始めることが望ましいです。
構音障害のリハビリは、早期に開始するほど効果が高いです。
特に脳梗塞の急性期には、リハビリを始めることで後遺症の重篤化を防ぐことが可能です。
家族や専門家との協力が、回復を加速させる重要な要素です。
しかし、発症まもない急性期では、全身状態が安定しない時期なので、その状態にあわせて慎重に進める必要があります。
全身状態が安定して回復期段階になると、座っていられる時間も長くなり、回復が望める時期です。
言語訓練、コミュニケーション訓練を集中的に行います。
そして、日常生活のコミュニケーションに活かし、社会参加の機会を増やせるように環境調整を行います。
言語療法における構音練習のアプローチ方法
構音障害に対してのアプローチは言語聴覚士によって行われます。
構音障害に必要な要素の訓練を以下にご紹介します。
呼吸訓練
声を出すためには、ある一定量の息を吸う・吐く力が必要です。
声を出すために必要な呼吸の力を高めます。また、呼吸のコントロール、胸郭の可動域を高める事も重要です。
例)ブローイング訓練:コップに入れたストローを吹き、呼気を強くする(吐く息を強くする)運動を行います。
発声訓練
自由自在に発声できることを目標に、20秒以上の発声持続、声質の改善、声域や声量変化の拡大など、喉頭諸筋の運動機能の再調整を行います。
声を出す時は腹筋を高めることが有効な場合があるので、腹部の筋肉を使う訓練を取り入れる事も重要です。
例)プッシング法:声帯の機能(開け閉めの力)強を化し、かすれ声の改善を図る。
また、声が小さくなってしまった場合は、声を大きく出すための意識づけをします。
鼻咽腔閉鎖機能訓練
鼻咽腔とは鼻の奥の空間を指します。
通常は鼻咽腔への通路は閉じていますが、脳梗塞で閉鎖できなくなると、常に声が鼻から抜けている状態となります。
そのため、鼻咽腔への通路を閉じる練習をして発話の改善を目指します。
口腔機能訓練
構音の基礎となる口や舌を実際に動かしてもらい、運動機能を高めます。
音読訓練
音読を行い、実際の会話を想定した訓練を行います。
話すスピードのコントロールが出来ていない時は、その方の症状に合わせたスピードでの会話を提示し、発話の明瞭度を高めます。
リハビリ期間と回復の見込み
Urbanらによると、一側性の脳血管障害患者62名における構音障害からの回復については、39.5%が10ヵ月以内に完全回復しており、残りの 61.5 %も構音障害 の程度は軽度であったそうです。
構音障害は比較的予後が良く、失語要素がなければ日常生活にもそれほど困難を感じないことが多いです。
しかし、本人は自分の発話について気になるので、QOLの視点から構音障害に対するリハビリのニーズが多く聞かれます。
病院でのリハビリは回復期病院においては最大150日間です。
構音障害は150日より長期間のリハビリ継続にて回復する可能性もあります。
退院後もリハビリを継続し、本人のコミュニケーションにおける自信を取り戻せるようにしていくのが望ましいです。
脳梗塞による構音障害についてのまとめ
脳梗塞後の構音障害は、唇や口の麻痺の影響で思ったように話すことが出来ず、ストレスが溜まることがあります。
話すことをあきらめてしまい、他者とのコミュニケーションを取らずに孤独を感じる方もいるでしょう。
早期からのリハビリテーションにより機能改善に向けて取り組むことは非常に重要です。
ニューロテックメディカルでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
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再生医療だけではなく、リハビリも行うことで(神経再生医療×同時リハビリ™)、より治る力を高めていくのです。
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よくあるご質問
構音障害のリハビリの目的は?
障害された舌、唇、喉、呼吸などの機能改善にむけた訓練を実施し、日常生活におけるコミュニケーションを行えるようにすることが目的です。
構音障害のリハビリ期間はどれくらいですか?
脳卒中になった場合、入院でのリハビリは回復期病院においては最大150日です。しかし、構音障害は150日より長期間のリハビリ実施による回復も見込まれます。
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<参照元>
・高次脳機能研究 第30巻第3号:_pdf:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/30/3/30_3_413/_pdf
・リハビリテーション医学Vol.28 No.6 1991年6月:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/28/6/28_6_477/_pdf
・歯科医師のための構音障害ガイドブック:9258.pdf:https://www.shien.co.jp/book/sample/s3/9258.pdf
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