要点脳の血管が詰まることで発症する脳梗塞。
梗塞部位(血管の詰まった場所)によっては、重大な後遺症が残る場合があります。
この記事では、脳梗塞の基本知識をはじめ、脳梗塞の後遺症を改善するためのリハビリについて解説します。
当院で実施可能な再生医療についても記載しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
脳梗塞とは?
脳梗塞は、脳内の血管が詰まり血流が阻害されることにより脳が損傷を受け、意識障害や片麻痺(片側上下肢の運動麻痺)、言語障害、記憶障害など様々な障害を生じる疾患です。
早期発見により施すことが可能な治療法があり、早期治療により予後が大きく異なるため、片方の腕が上がりづらい、顔の半分が動かしづらい、呂律が回りにくいなどの症状に気づいたら、すぐに救急車を呼び治療することが大切です。
脳梗塞の種類
- ラクナ梗塞
- 脳の太い血管から分岐する細い血管の梗塞により発症する。
片側の麻痺やしびれ、脱力感などが症状として挙げられるが、中には無症状の方もいる。
日本人の脳梗塞の中でもっとも発症者数が多い。 - アテローム血栓性脳梗塞
- 中大動脈をはじめとする、脳内の比較的太い血管の梗塞により発症する。
ラクナ梗塞よりも大きな梗塞で、太い血管が障害されるため影響範囲が広く重症化しやすい。
意識障害や片側の運動麻痺、呂律が回らないなどの言語障害等の症状を生じる。
障害が24〜48時間かけて緩徐に進行する。 - 心原性脳塞栓症
- 主に心臓でできた血栓(血の塊)が血管を流れ、脳に詰まって発症する。
心臓の血栓は、心房細動や心不全、弁膜症などが原因。
アテローム血栓性脳梗塞と同様、重度の障害を生じる。
他から飛んできた血栓が脳につまるため、突発的に意識障害や片側の運動麻痺、感覚障害、言語障害などを生じる。 - 原因不明の脳梗塞
- 原因不明の脳梗塞は約1/4にも上ると言われている。
塞栓源の特定や適切な治療の選択が出来るかどうかは予後に大きく関わるため、あらゆる可能性を考慮し検査することが重要。
ラクナ梗塞は脳の深部にある細い血管(穿通枝)が閉塞することで起きる小さな脳梗塞です。動脈硬化が主な原因です。体の片側の運動麻痺や感覚障害が起きることがあり、後遺症として残る可能性があります。生活習慣の改善と急性期治療、再発の予防が重要であり、再生医療の可能性にも注目が集まっています。
脳梗塞後の後遺症を改善するためのリハビリプログラム
脳梗塞後のリハビリには、様々な職種が関わりながら、発症からの期間を急性期・回復期・維持期と分けて各時期に必要なリハビリを実施します。
脳梗塞後に関わる職種
- 医師(脳神経外科医、神経内科医やリハビリテーション専門医)
- 全身状態を把握し、理学療法士などのリハビリ専門職にリハビリ内容の指示を出す。
- 看護師や介護士
- 入院中は関わりが多い。
リハビリで出来るようになった動作を、病棟生活に汎化出来るよう他職種と連携を図り実施する。 - 理学療法士
- 起き上がりや立ち上がりなどの起居動作、バランス、歩行訓練を実施する。
- 作業療法士
- 食事や着替え、トイレや入浴動作など日常生活動作の訓練を実施する。
記憶や注意機能といった高次脳機能障害に対しても、言語聴覚士と連携して対応する。 - 言語聴覚士
- 話しにくい、言葉が出ないなどの言語障害や、飲み込みにくさが出現する嚥下障害、顔面麻痺による噛みにくさ、動かしづらさなどの機能障害に対するリハビリを実施する。
- ソーシャルワーカー
- 医療・介護・福祉の相談員。
患者さんに関わる他職種と連携を図りながら、日常生活上の困りごとに対して、支援を行う。 - ケアマネージャー
- 特に退院後のケアプランの作成や介護・医療サービスの提案を実施する。
自宅に帰った後もリハビリが継続出来るようサポートしてくれる。
脳梗塞発症後の各期間のリハビリテーションプログラム
脳梗塞後のリハビリは、急性期・回復期・維持期に分けられ、各期間で実施するリハビリ内容が異なります。
各期間ごとのリハビリ内容は以下の通りです。
急性期(発症後から約2〜4週間)
病後や術後に安静にすることにより生じる廃用症候群を防ぎ、全身管理をしながらリハビリを進める。
離床を進めるため、関節可動域訓練や起き上がり・立ち上がりなどの起居動作が中心。
回復期(約2〜4週間から約3〜6ヶ月
急性期の治療・リハビリを終えても体の麻痺や話しづらさなどが残り、自宅で日常生活を送ることが困難な場合、回復期リハビリ病院等に転院して回復期のリハビリを行います。
回復期は、症状の回復能力が最も高まる時期であるため、積極的にリハビリが行われます。
- 手足の関節可動域訓練
- 手足の機能向上訓練
(適切な運動を反復して行う反復促通療法や筋肉の収縮をアシストする電気刺激を含む) - 歩行訓練や食事・更衣・入浴動作などの日常生活訓練
- 記憶や注意障害に対する高次脳機能訓練
- 発語訓練、嚥下訓練
- 自宅環境の調節やアドバイス(住宅改修プランの作成や福祉用具の選択)
維持期(回復期以降)
回復期リハビリ病棟を退院後、自宅に戻った場合はリハビリを実施しているクリニックや病院、転院した場合は老人介護施設などでリハビリを実施します。
回復期に比べてリハビリの頻度は少なくなりますが、リハビリを継続しないと機能維持が困難な場合や、維持期もリハビリを実施することで機能向上や生活の質の向上が見込める場合などに実施されます。
リハビリ内容は、回復期リハビリに引き続き手足の関節可動域訓練や機能訓練、歩行や日常動作訓練など安全に生活するために必要な動作の訓練が中心です。
心原性脳塞栓症とは、不整脈や弁膜症によってできた血栓(血の塊)が脳の血管に詰まることで起こる脳梗塞です。意識障害や麻痺などの症状が突然起こることが特徴です。梗塞範囲が広いため重い後遺症を残すことがありますが、再生医療とリハビリを組み合わせることで機能改善が期待できます。
まとめ
脳梗塞の後遺症改善、生活レベルの向上にはリハビリが不可欠です。
ひと昔前までのリハビリは、麻痺がない方の手足や麻痺側の残存している機能を使って、上手く生活できるように動作方法を学ぶものが主流でした。
しかし近年は、麻痺した手足そのものの機能回復を目指す訓練も積極的に取り入れられており、その1つが再生医療です。
当院では、脳梗塞をはじめとする脳卒中や脊髄損傷などに対して「ニューロテック®︎」という幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みをしております。
神経再生医療とリハビリを適切に組み合わせることで、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高め脳梗塞に対する最大限の機能回復を目指します。
再生医療の介入は早いほど良いとされているため、脳梗塞の後遺症でお悩みの患者さんやご家族の方はぜひ1度ご相談ください。
よくあるご質問
脳梗塞に良くない食べ物は?
牛や豚、鶏肉の脂肪部分、マーガリンやショートニングは控えましょう。脂質の多い食事、特にトランス脂肪酸を多く含む食事は血液をドロドロにして、脳梗塞の原因となる脂質異常症や心疾患の発症率を高めてしまいます。またラーメンやうどん、丼物など塩分が多く含まれる食事は、脳梗塞の最も大きな原因となる高血圧のリスクを高めるため、汁を飲まない、少量にするなど工夫が必要です。
脳梗塞になった人は納豆はダメですか?
脳梗塞の予防・治療目的でワーファリンを服用している方は、納豆を避ける必要があります。
これは、納豆のもつビタミンKがワーファリンの薬効を打ち消してしまうためです。納豆の他にも青汁や海苔などの海藻類はビタミンKの含有量が高いため、ワーファリンを服用しながら摂食する際には、医師と相談しましょう。
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<参照元>
厚生労働省 e-ヘルスネット:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html
脳梗塞の様々な後遺症を改善する具体的なリハビリ方法と期間の目安:https://fuelcells.org/topics/20728/
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