先進リハビリによる機能改善

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作業療法とパーキンソン病のリハビリテーション

パーキンソン病と作業療法の役割

パーキンソン病の治療は、薬物療法・リハビリがメインで、薬物療法の補助的な役割として、手術が適用となる場合もあります。

リハビリの中でも、日常生活動作の能力改善を目指す作業療法には、日常生活の質の向上や介護者の負担軽減といった役割があります。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、中脳の中にある黒質の変性によりドパミンの生成が減少し、様々な運動症状や非運動症状を引き起こす神経変性疾患です。

多くは50〜60歳代に発症し、性差はなく通常は遺伝性もないと言われています。

現段階で根治は困難ですが進行は緩徐で、薬の開発により自立した活動は発症から10〜15年可能となり、平均余命は発症から20〜30年と日々医学は進歩しています。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の主な症状は、三大症候と呼ばれる下記の症状です。

・安静時振戦

・筋強剛(筋固縮)

・無動

症状の進行とともに、三大症候に姿勢反射障害が加わります。

固縮や無動の影響から、すくみ足やすり足、小刻み歩行などの歩行障害や、細かい手指の巧緻運動障害、服の着脱やボタンかけ、書字動作などの日常生活動作能力の低下が引き起こされます。

パーキンソン病における作業療法の役割

パーキンソン病は、薬物療法と合わせてリハビリを行うことで運動機能が向上し、日常生活動作能力が改善することが知られており、パーキンソン病の治療においてリハビリは欠かせない存在です。

作業療法の役割は、症状の進行を抑えつつ、困難になってしまった日常生活動作を再び安全に行いやすくすることです。

作業療法による身体機能の維持・向上を目的としたリハビリの一例は下記を参照ください。

身体の柔軟性維持(伸展や回旋動作メイン)等を目的とした関節可動域訓練

筋力増強訓練

姿勢バランスの維持、向上訓練

基本動作や床上動作訓練 など

また、日常生活動作の維持・向上を目的としたリハビリの一例は下記の通りです。

日常動作訓練(服の着脱・洗顔や歯磨きなどの整容・食事・排泄・入浴動作など)

家事動作訓練(洗濯や調理など)

福祉用具の選定や、福祉用具を使用した動作練習

住宅改修の立案(浴室の改修など大掛かりなものから必要箇所への印つけなど簡易なものまで)

自主トレーニング指導

家族指導 など

パーキンソン病は症状の進行が緩やかであるため、発症当初は目立った症状が少ないこともありますが、転倒による骨折などの二次障害の予防や、将来への不安に対する心理的・精神的なケアを始め、早期からのケアが大切です。

パーキンソン病の日常生活の改善方法

日常生活の活動量を維持することは、パーキンソン病の治療の1つといっても過言ではありません。

そのために、安全な動作方法の習得は必要不可欠です。

この章では、日常生活の改善方法と、日常生活上の注意点について解説します。

日常生活の改善方法

日常生活の改善には、日常生活動作に対するアプローチと環境設定に対するアプローチの両者が大切です。

それぞれのアプローチ方法を解説します。

日常生活の改善方法|日常生活動作に対するアプローチ

日常生活の動作に対するアプローチ例は、下記の通りです。

食事:箸やスプーンの使用時、持ち方や操作方法を意識して箸先を見ます。食べ物を上手く口に運べない場合は、鏡を見るのも有効です。

整容:歯ブラシや洗顔で立位をとる際は、片手を洗面台で固定すると姿勢保持がしやすくなります。

更衣:見えない箇所が難しい場合は、自身の体を触って認識し体をつたいながら衣服をつかみます。鏡を利用するのも良いでしょう。 など

日常の動作全体を通して、複数の課題を同時遂行することは避け、1つの動作に集中することが重要です。

日常生活の改善方法|環境設定に対するアプローチ

環境設定に対するアプローチ例は、下記の通りです。

段差:スロープの設置や、カーペットやマットなどのヘリをテープで固定

テープや足跡ガイド:歩幅に合わせてテープや足跡のガイドを貼る

衣服(上衣):前びらきのシャツで、大きめのボタンやマジックテープがおすすめ

衣服(下衣):腰部分は緩めのゴム製で、余裕のある大きさのものが穿きやすい

ドア:開き戸に比べて引き戸の方が安全で、ノブよりもレバーや取っ手の方が扱いやすい

トイレ:洋式に変更し、L字手すりを適切な高さに設置する

浴室:シャワーチェア・浴室マットを設置し、必要箇所にL字手すりを設置する など

環境設定は、出現している症状や使用する本人の動作パターンをよく理解した上で行います。

日常生活上の注意点

自宅で日常生活を送る上で、注意を必要とする項目は下記の通りです。

・転倒

・運動不足

・過度の運動

・薬の副作用による日内変動

「適度な運動」は疾患の進行予防・動作改善に有効なので、自宅での運動量についてはリハビリのセラピストから具体的な運動方法・運動量・転倒予防策を教えてもらうと安心です。

運動をしないことで引き起こされる、立ちくらみ、起立性低血圧や睡眠障害、またうつや幻覚などの精神症状もあります。

日内変動に十分気をつけて、1日のスケジュールの中に運動する時間を確保しておきましょう。

作業療法を用いた事例紹介

作業療法の介入により運動症状・非運動症状に改善がみられた事例を、パーキンソン病の重度別に紹介します。

・初期:運動症状は少ないものの、今後の病状や生活に不安を感じていることが多い時期です。

作業療法では、運動機能の評価・生活上で困ったことを聴取した上で、自主トレーニング指導の実施に加え、仕事や車の運転など今後予測される問題に対するアドバイスを行います。

初期段階からの積極的な作業療法の介入により、運動症状の軽減だけではなく、不安の軽減や意欲向上に繋がることが示されています。

・中等度:運動症状、非運動症状ともに進行が進み、筋力・関節可動域の低下やすくみ足等により転倒リスクが高まる時期です。

筋力増強訓練や関節可動域訓練、日常生活動作訓練に加え、必要に応じて福祉用具や住宅改修のアドバイスを実施します。

作業療法が継続的にフォローすることで、定期的に身体機能や日常生活動作を評価し介入方法を検討する機会が増え、体幹機能や上肢機能をはじめ、日常生活動作や生活の質の維持、向上に貢献します。

・進行期:関節の拘縮や無動による筋力低下が進み歩行が困難になり、誤嚥などの嚥下障害により自立した生活が困難になる時期です。

全般的な認知機能の低下や、抑うつなどの精神障害も顕著に出現し、介護の負担が大きくなります。

作業療法は、関節可動域訓練や褥瘡予防対策の実施、また言語聴覚士と協力して誤嚥対策を行い肺炎予防に努め、患者さんとご家族さんができる限り安全に楽に過ごせるよう関わります。

まとめ

この記事では、パーキンソン病に対する作業療法士のリハビリについて解説しました。

従来の薬物療法とリハビリを併用して治療することで、運動症状や非運動症状の維持や向上が認められる可能性はありますが、根治困難であることがパーキンソン病の現状です。

しかし、近年急速に発展を遂げている再生医療がパーキンソン病にも適用できないかと注目されており、治験が国内でも始まっています

再生医療により病気の原因となっている脳の部位そのものに対する治療が可能になることで、パーキンソン病のさらなる症状改善の見込み・根治への道が期待されます。

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