・内反尖足に対する装具療法の効果と適応について
・内反尖足に対して手術を行う際の適応基準について
・重度の片麻痺に対する治療法の選び方について
内反尖足は歩行や立ち上がり、階段昇降など日常生活において大きな制限を生じさせるため、効果的な治療法やリハビリテーション、装具の使用が重要となります。
また、重度の片麻痺においては身体の状態だけでなく心理的な負担や生活環境、社会的サポートなども考慮するなど多角的なアプローチが重要となります。
目次
内反尖足に対する装具療法の効果と適応
脳卒中や脳外傷による片麻痺などでは足首周囲の筋緊張の異常により「内反尖足」という足の変形が生じることがあります。
内反尖足は足の裏が内側を向き、つま先が下を向いた状態でつま先を上に向けることが困難となります。
この内反尖足では歩行時に足の裏全体を地面に接地することができず十分に体重を支持することができないため不安定となり、足を振り出すときも地面につま先を擦るおそれがあり転倒するリスクが高まります。
そのため、足首と足部が正しい位置にくるように矯正する装具療法が用いられます。
装具により内反尖足を矯正することで歩行中の足の運びがスムーズになり、歩行が安定し歩幅や歩行速度の向上が期待できます。
内反尖足が軽度であれば軟性装具、中等度であればプラスチック製装具、重度であれば金属製装具といったように内反尖足の程度によって装具の適応が異なります。
手術による内反尖足の矯正はどのような場合に適用されるのか?
片麻痺に伴う内反尖足の治療において、手術による矯正が選択されることがあります。
手術の適応基準には以下のようなものがあります。
保存療法で十分な効果がない場合
重度な内反尖足で理学療法や装具療法などの保存療法では十分な効果が期待できず、歩行困難など日常生活において大きな影響がある場合に手術が検討されます。
歩行や立ち上がりなどの日常生活動作に大きな影響がある場合
内反尖足により足の裏が地面にしっかりと接地することができない場合、十分に体重をのせることができないため不安定な歩行となります。
また、つま先が下を向いていることで足を振り出すときに地面に擦ってしまう可能性があり転倒するリスクが高まります。
歩行だけでなく椅子からの立ち上がりやトイレ動作、階段昇降など日常生活動作においても著しく制限される場合は手術が検討されます。
痛みが強い場合
内反尖足では足の筋緊張の不均衡や足関節、足部にかかる負担が大きくなるため痛みが強くある場合があります。
そのため、痛みの軽減を目的とした手術が検討されます。
合併症のリスクがある場合
内反尖足により足関節、足部の可動性が低下している状態では歩行時など足の一部分に負荷が集中し皮膚の潰瘍などが生じる可能性があります。
また、可動性が低下している状態が長期間続くと関節拘縮に進行するリスクがあります。
このような合併症のリスクがある場合は手術が検討されます。
片麻痺重度の患者における治療法の選び方と注意点
重度の片麻痺の治療法は身体の状態だけでなく心理的な負担や生活環境、社会的サポートなども考慮する必要があります。
そのため、以下の治療法を多角的に組み合わせていくことが重要です。
理学療法
自立した日常生活を送れるように関節可動域訓練や筋力強化訓練、バランス訓練、寝返りや起き上がり、立ち上がり、歩行、トイレ動作などの日常生活動作訓練を中心に行います。
作業療法
日常生活の質を高めるために上肢機能を中心に食事や整容、着衣などの動作訓練を行います。
日々の生活に必要な応用的動作や社会適応能力の回復などを目指します。
装具療法
歩行の安定や関節拘縮の予防、痛みの軽減などを目的に装具を使用します。
装具にはプラスチック製のものや金属製のものといった矯正強度の違いや継手の有無、コンパクトなものなどがあり、身体機能や生活様式に合わせたタイプを選択します。
手術
内反尖足が強く、歩行が困難であったり関節拘縮が進行する場合には腱延長術などの手術を行います。
術後のリハビリも機能回復において非常に重要となります。
社会支援サービス
家庭での介護負担の軽減や効果的なリハビリを行うために訪問リハビリやデイケア、デイサービスなどの社会支援サービスを活用することができます。
まとめ
今回は内反尖足に対する装具療法の効果や手術の適用、重度片麻痺患者の治療法の選択などについて解説しました。
内反尖足は片麻痺患者にみられる特徴的な症状で歩行など日常生活に大きな影響が生じます。
そのため、装具療法や手術など内反尖足への治療は非常に重要となります。
一方で、最近は再生医療の研究が進んでおり、「ニューロテックⓇ」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んに行われています。
神経機能の再生を促す再生医療とリハビリを組み合わせた「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、今まで難治であった片麻痺の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 内反尖足は転倒の原因になりますか?
- はい。
転倒の原因となります。
足の裏全体を地面に接地することができず、十分に体重をのせることが困難となるためバランスが不安定となります。
また、つま先が下を向いた状態で足を振り出すためつま先が地面を擦りやすくなります。 - 脳卒中になると内反尖足が起こるのはなぜですか?
- 脳卒中により脳からの運動指令にエラーが生じ、筋肉が過緊張状態となります。
特に足部では下腿三頭筋というふくらはぎの筋肉が過緊張を起こしやすく、足底を内側、つま先を下に向けた内反尖足が生じやすくなります。
<参照元>
・脳卒中に対する装具療法:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/27/8/27_KJ00001308650/_pdf/-char/ja
関連記事
このページと関連のある記事
2024.05.01
片麻痺上肢を動かすための具体的なリハビリ方法
片麻痺は脳卒中の後遺症の中でも、その後の生活に大きな影響を与えます。片麻痺の上肢リハビリは様々な評価、介入が研究されていますが、その中には自分でできるものもあります。この記事では、片麻痺の上肢リハビリの概要とどのような視点で行えばよいかについて解説します。...
2023.11.29
脳梗塞後の痙縮とリハビリの重要性
脳梗塞の後遺症は運動障害や高次脳機能障害、嚥下障害が見られることがあります。運動障害のなかで「痙縮」という症状があります。痙縮は身体が強ばってしまい、歩行や日常生活動作に支障をきたすことがあるのです。この記事では、痙縮の症状やメカニズム、痙縮に対してのリハビリ手法について詳しくご紹介します。...
コメント