この記事を読んでわかること
・失語症とは何か
・失語症の様々な種類とその症状について
・失語症に対するリハビリの介入方法について
失語症とは、一度獲得した言語機能を失うことであり、「話す」「聞く」「読む」「書く」などの機能がうまく働かなくなってしまう状態です。
障害された部位によって様々な症状があり、失語症の種類も変わってきます。
この記事では、失語症の様々な種類や症状、リハビリ方法についてご紹介します。
失語症とは?
失語症とは、大脳が損傷されて、正常に獲得されている言語機能が失われることをいいます。
大脳が損傷すると、「話す」「聞く」「読む」「書く」などの言語機能が上手く働かなくなってしまいます。
会話や文字を使って表現したり、理解する能力が障害されるため、日常生活において支障をきたす場面が多いです。
右利きの人と左利きの人の約3分の2は、言語機能が左半球に局在しており、左利きの残り約3分の1の人は右半球に局在しています。
失語症の原因、種類とその症状
失語症には様々な症状があります。
失語症の原因と、様々な種類とその症状について説明していきます。
失語症の原因
失語症は以下のような病気が原因で起こります。
- 脳梗塞、脳出血などの脳の血管に起こる障害
- 交通事故・転倒などで起こる頭部外傷
- 脳炎とよばれる脳の感染症
- 脳腫瘍など進行性の病気
失語症の原因の多くは脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中です。
脳腫瘍のような進行性の病気の場合、腫瘍が増大するにつれ、言語機能を制御している脳領域が圧迫され、言語機能の障害がさらに重篤になる可能性があります。
失語症の種類とその症状
失語症には様々な種類があります。ここでは、代表的な4つの失語を説明します。
①感覚性失語
側頭葉のウェルニッケ野の障害により起こります。
- 流暢に話せるが、言い間違えや錯誤が多く見られる。
- 話されている言語、書かれている言語の理解が困難である。
- 自分では言い間違えに気づかず、多弁になる傾向がある。
- 復唱することが困難である。
- 文章レベルで話すことは出来るが、内容は質問が状況に合わないことが多い。
- 喚語困難(言いたい言葉が出てこない)があり、発話量のわりに内容がほとんどない空疎な発話のことがある。
②運動性失語
前頭葉のブローカ野の障害により起こります。
- 非流暢な発語を特徴とし、相手が言ったことを真似する復唱も障害されている。
- 聴覚的理解は比較的保たれている。
- 喚語困難が強い。
- 呼称障害がある。
- 書字による表出も障害されており、書字困難なことが多い。
③伝導性失語
頭頂葉下部の障害によって起こります。
- 流暢な話し方で、聞いたことの理解は保たれている。
- 音韻性錯誤が目立ち、自己修正をする。
- 相手の言ったことを真似する復唱が困難。
- 呼称障害に対しても音韻性錯誤が見られる。
「りんご」と言おうとしたのに、「にんご」と言ってしまうといったような、音の一部を間違った場合を音韻性錯誤といいます。
④全失語
脳の広範な障害にて起こります。
- 言語の表出、理解、復唱がいずれも重度に障害された状態である。
- 発話は全く見られず無言または意味不明の発話であることが多い。
- 理解障害は重度であり、日常物品の名称に対して「はい/いいえ」で応える質問への応答が出来ない。
- 復唱も重度に障害されている。
失語症の診断
失語症の診断は医師が患者と話し、流暢性や復唱、話し始めの様子などを確認して評価します。
他に、神経心理学的検査、CTやMRIの画像診断も実施されます。
神経心理学的検査では、「標準失語症検査(SLTA)」「WAB失語症検査(日本版)」が使われます。
SLTAは、話す・聞く・読む・書く・計算を6段階で評価します。
失語症の有無の判定が可能で、重症度や種類の診断も可能です。
WABは自発話、話し言葉の理解、読み、書字、呼称、復唱、行為、構成の8項目で検査します。
結果は点数化され、失語症の病型の分類や全般的な重症度を示します。
失語症のリハビリの目的と効果
これまで、失語症の症状や診断についてお話ししてきました。
では、失語症の方のリハビリではどのようなことを行うのか、ご紹介します。
失語症のリハビリは、コミュニケーションがとれる状態を目指して言語聴覚士によって行われます。
失語症は急性期より言語聴覚士によるリハビリを行うことが有用とされており、早期介入が望ましいです。
聞く:短い文章を聞き、その内容について答える。
話す:絵をみて名前をいう、言葉の復唱、マンガの絵をみて内容を説明する。
読む:簡単な文章を読み、内容についての質問に答える。
書く:その日の予定をメモする、短くて良いので日記を書く。
対象の方にとって効率的なコミュニケーション方法を探す事も大切です。
本人からコミュニケーションを始められるようにジェスチャーや筆談などを行い、取り入れやすいコミュニケーション方法を見つけていきます。
まとめ
失語症には様々な症状がありますが、どの症状に関してもコミュニケーションが困難となり、日常生活に支障をきたすことが多いです。
早期からのリハビリテーションの介入が望ましく、急性期から関わることで回復が期待できます。
しかし、失語症は後遺症を残す人が多くいるのも事実です。
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よくあるご質問
失語症は回復するのか?
失語症は回復するものの、後遺症が残る人も多くいます。
早期よりリハビリを行うことが大切で、早期リハビリを行った方が回復が期待できるといわれています。
失語症のリハビリの目的は何ですか?
日常生活におけるコミュニケーションが取れるように、聞く、話す、読む、書くなどの機能回復を目指してリハビリを行うことです。
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<参照元>
・障害保健福祉研究情報システム:失語症とリハビリテーション:https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n428/n428004.html
・MSDマニュアル 家庭版プロフェッショナル版:失語 – 07. 神経疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版:msdmanuals.com
・恩賜財団済生会:失語症 (しつごしょう)とは | 済生会:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/aphasia/
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