頸椎症性脊髄症に対する保存療法と手術療法の違い
頸椎症性脊髄症に効果的なリハビリと日常生活の工夫
再発や進行を防ぐために注意すべき生活習慣
頸椎症性脊髄症の治療法には薬やリハビリなどで症状の進行を抑える保存療法と神経の圧迫を直接取り除く手術療法があります。
この記事ではそれぞれの治療法の特徴や適応について、また頸椎症性脊髄症に効果のあるリハビリの方法や再発・進行を予防するために注意すべき生活習慣について詳しく解説しています。
目次
頸椎症性脊髄症:保存療法と手術療法の違いと適応基準
頸椎症性脊髄症は頚部の脊柱管が狭窄することで脊髄が圧迫されて四肢の筋力低下や疼痛、しびれなどが生じる疾患です。
頸椎症性脊髄症の治療には保存療法と手術療法があり、以下にそれぞれの特徴をご紹介します。
保存療法とは
まず保存療法は、症状が軽度で進行が緩やかな場合に選択されます。
保存療法の主な目的は症状の進行を抑え、日常生活に支障がない範囲での管理を目指すことです。
この保存療法では消炎鎮痛剤や神経障害性疼痛治療薬などを利用した「薬物療法」やリハビリテーション(以下、リハビリ)や生活指導を行う「運動療法」、頸椎カラーなど装具を使用した「装具療法」などがあります。
手術療法とは
上記のような保存療法を続けても症状の改善が見られない場合や日常生活に支障が出るレベルの症状がある場合に手術療法が検討されます。
手術療法の主な目的は脊髄の圧迫を除去し、症状の進行を防ぐことです。
そして頸椎症性脊髄症の手術の方法には前方除圧術と後方除圧術の2種類あります。
これらの手術の適応基準としては、一般的に保存療法を3か月以上続けても改善が見られない場合や筋力低下または麻痺が進行し日常生活に著しい支障がある場合、さらには排尿障害などの脊髄症状が重度の場合などが挙げられます。
頸椎症性脊髄症にはどんなリハビリが効果的?日常生活でできる工夫
頸椎症性脊髄症のリハビリは症状の進行を防ぎ、日常生活の質を向上させるために重要です。
以下に、効果的なリハビリ方法と日常生活での工夫について解説します。
- 筋力強化訓練
頸椎症性脊髄症では脊髄の圧迫により筋力低下が生じることがあります。
リハビリでは残存する機能を最大限に活用し段階的な筋力向上を目指すため、圧迫されている脊髄の位置とそれによる筋力低下の場所を正確に評価し、適切な方法で筋力の強化を実施します。
特に手指の筋力を回復させる際には電気刺激療法の導入も有効です。
また頚部の支持力を高めるために首周りの筋肉を鍛える運動も取り入れます。 - 関節可動域訓練
頸椎症性脊髄症では痺れや筋力の低下により、関節の可動域が制限されることがあります。
リハビリでは定期的な関節可動域訓練を行い肩や肩甲骨、手、足などの動きの範囲を確保します。
ただし頚部の可動域訓練は症状の悪化を引き起こす恐れがあるため、避けるべきです。 - 正しい姿勢の指導
悪い姿勢は頸椎症性脊髄症の原因の一つでもあり、頸椎への負担を増加させて症状を悪化させる可能性があります。
そのためリハビリでは壁や鏡を利用して姿勢を確認しながらのトレーニングやパソコンディスプレイやデスクの高さ、椅子の高さの調整など作業時の姿勢指導を行います。
特にこの姿勢の改善は日常生活の中で実行可能なリハビリ手段のひとつです。
専門家の指導を受けて正しい姿勢を理解し、日々の動作に反映させる工夫が重要です。
再発や進行を防ぐために気をつけたい生活習慣
頸椎症性脊髄症の再発や進行を防ぐためには日常生活での習慣や姿勢、動作に注意を払うことが重要です。
特に「首に負担のかかる行動を避ける」ことは生活習慣の中で気をつけたいポイントです。
以下にどのような行動が首に負担がかかってしまうのかご紹介していきます。
- 首を曲げた状態で長時間同じ姿勢でいる
首を前に傾けた姿勢(ストレートネックの状態)で長時間過ごすと、頸椎前方への圧力が増し、神経の圧迫を助長する原因となります。
特に現代ではスマートフォンの使用やパソコンなどのデスクワークで長時間同じ姿勢でいることが多いです。
こうした習慣を日常的に繰り返すことで症状が徐々に進行してしまうことがあるため、意識して首の位置を正しい姿勢に保つことが重要です。 - 寝る時の姿勢が不適切
寝る時に高すぎる枕を使用したり、うつ伏せで寝たりすると首に負担がかかり症状を悪化させる可能性があります。
特にうつ伏せで寝ると首を左右どちらかにねじる必要があるため、長時間にわたって片側の神経や筋肉に負担がかかるリスクがあります。
適切な高さの枕や寝具を使用し、睡眠中の頸椎への負担を軽減しましょう。 - 首に過度な負担のかかるスポーツ
頸椎症性脊髄症の方にとって適度な運動は筋力維持や血流改善に効果的ですが、一部のスポーツは首への過度な負担をかけてしまい症状を悪化させるリスクがあります。
特に首への衝撃や過度な曲げ伸ばし動作が必要なスポーツは注意が必要です。-
【注意が必要なスポーツの一例】
- ラグビーやアメリカンフットボール
- 水泳
- ウェイトトレーニング
スポーツは体に良い反面、首に負担をかけるものもあります。
特に運動中に痛みやしびれが強くなる場合はすぐに中止し、専門家に相談するようにしましょう。
まとめ
頸椎症性脊髄症の治療には、まずは薬物療法やリハビリを中心とした保存療法が行われ、症状が強い場合や進行の悪化が見られる場合には手術療法が検討されます。
それぞれの治療法には適応やタイミングがあり、主治医と相談しながら判断していくことが大切です。
またリハビリでは首や体幹の筋力を維持・強化する運動や姿勢を整える工夫が効果的です。
特に日常生活の中で姿勢に気を配ることや首への負担を避ける生活習慣を身につけることは、再発や進行の予防にもつながります。
スポーツや睡眠時の姿勢なども首に負担をかけていることもあるため専門家の指導のもとで安全な動き方を知り、自分の体と上手に付き合っていくことが回復への第一歩です。
さらに近年では再生医療の研究も進められており、今後の新たな治療法の選択肢として期待されています。
よくあるご質問
- 頚椎症性脊髄症の生活上の注意は?
- 首に負担をかける姿勢を避け、正しい姿勢を保つことが重要です。
特に長時間のうつむき作業や高すぎる枕、衝撃の強いスポーツは控えるようにしましょう。
また睡眠時の姿勢や日常生活の動作にも注意し、再発や進行の予防に努めることが大切です。 - 頚椎症性脊髄症のリハビリでどんなことをするのでしょうか?
- 首回りや体幹の安定性を高めるための筋力強化訓練に加え、首以外の関節が硬くならないように関節可動域訓練などが行われます。
また頚部の負担を軽減するために、正しい姿勢を身につけるための指導も合わせて行われます。
<参照元>
(1)頚椎症に伴う神経障害性疼痛|疼痛.jp:https://www.toutsu.jp/Pain/Keitsui
(2)頚椎症性脊髄症について|西陣病院だより:https://www.nishijinhp.com/departments/outpatient/orthopedics-2/spine/
(3)頚椎症性脊髄症|白石脊椎クリニック:https://shiraishi-spine.com/keitsuishouseisekizuishou/
(4)頚椎症|人形町整形外科ペインリハビリクリニック:https://spr-cl.jp/
(5)頚椎症性神経根症|症状や治療法、手術、再発予防など解説|東京脊椎・関節クリニック羽田:https://www.haneda-spine-joint.clinic/medical-content/spinal/cervical-spondylotic-radiculopathy/
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