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上肢の片麻痺は、脳卒中により見られる症状です。
脳が損傷されると脳神経の可塑性により、神経細胞の活動が変化し、新たな神経細胞間のネットワークが形成されます。
片麻痺上肢の積極的な使用を促すことにより、新たな神経細胞のネットワークが形成されるため、リハビリテーションでの積極的な上肢機能訓練が重要となります。
片麻痺の原因と上肢に及ぼす影響
片麻痺とは、脳の損傷で体の片側が動かなくなる症状を指します。
この損傷は、梗塞により脳の血流が途絶えたり、出血により脳の一部が損傷する脳卒中が原因です。
脳卒中とは、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」があります。
- 「脳梗塞」は脳の血管が細くなったり、血栓が詰まったりして脳に酸素や栄養が送られなくなることで脳の細胞が障害を受けます。
- 「脳出血」は脳の中で出血が起こった状態をいい、原因は様々ですが、最も多いのは高血圧性の脳出血です。
- 「くも膜下出血」はくも膜と脳の間を走っている血管に動脈瘤が出来て破裂する病気です。
では、上肢の片麻痺にはどのような症状があるのでしょうか?
具体的な例を以下に説明します。
運動麻痺
運動麻痺は、脳卒中の後遺症で最も代表的な症状です。
脳の損傷によって体に麻痺が現れます。
麻痺の重症度にもよりますが、時間の経過とともに筋肉が緊張して手足が突っ張る痙縮や、筋肉や関節が固まってしまう拘縮につながることもあります。
上肢においては手指が握るような形で固まってしまい、物を持ったりつまんだりできない、肘や手首が曲がったまま伸びず、着替えの際に上肢を延ばす動作がしづらいなど日常生活に支障をきたします。
感覚障害
感覚障害があると、手や足が何かに触れていても、その感覚がない(弱い)という状態になります。
上肢に感覚障害があると、作業をするために物を持つ際、どのくらいの力で握ったら良いか、どんな手の構えをして握ったら良いか感じられず、作業や操作が十分に出来なくなってしまいます。
効果的なリハビリテーションの目的と基本原則
リハビリテーションを効果的にするには、発症早期よりリハビリテーションを実施することが重要とされています。
また、発症からの時期、回復過程に適したリハビリ内容を積極的に行い、日常生活動作能力の向上を目指すのです。
脳の中では環境の変化に対応するために、絶えず新しい神経回路が生成されています。
つまり、常に可塑的な神経系の働きが誘発されているのです。
神経可塑性は、新しい経験を経て、神経細胞の活動が変化し、新たな神経細胞間のネットワークが形成され、そのネットワークの機能が変化することといえます。
神経障害は脳の可塑性を促進できるようアプローチすることが重要です。
介入する際に原則として認識しておいた方が良い項目を以下に挙げます。
- 使わない神経回路は減退する:麻痺側上肢を使わないと神経回路が減退する。
- 特定の脳機能を練習すると、その機能は改善する:麻痺側上肢をアシストしながら正しい運動の練習をする。
- 十分な反復訓練を行う:麻痺側上肢の獲得したい運動を反復的に行うことで、運動学習が出来る。
- 十分な運動強度にて行う:麻痺側上肢の麻痺の回復段階に応じた強度にて上肢運動を促す。
患者が目標に向かって自発的に繰り返し動作を行うことが非常に重要となります。
誤った神経回路の強化を避ける方法
脳卒中後の回復の仕方は、脳卒中の部位や程度、年齢やそれまでの持病などにより様々です。
麻痺のある期間は、麻痺側上肢が上手く使えず、麻痺のない方の上肢を積極的に使うようになります。
これを、学習性不使用と呼びます。
麻痺側上肢の不使用によって感覚入力および運動指令の必要性とその頻度が低下すると、その領域に対応する運動野の支配領域は縮小もしくは消失し、機能低下をより進める可能性があります。
つまり、脳卒中後に生じる麻痺手の学習性不使用は、脳卒中によって生じた麻痺の程度を更に悪化する可能性があるのです。
脳卒中後のリハビリテーションでは、この概念をしっかり理解し、これらの予防に取り組むことで、二次性の機能悪化を最小限に止める必要があるといえるでしょう。
まとめ
脳は一度損傷を受けると回復が困難と言われていますが、脳の可塑性によって繰り返し運動の訓練をすることでその機能が改善することが分かりました。
上肢の片麻痺により着替えやトイレ動作などの日常生活動作に支障をきたす場合もあるため、発症早期からリハビリを積極的に行い、上肢操作の訓練を繰り返し行うことは非常に重要といえます。
また、近年再生医療も注目を浴びています。
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よくあるご質問
- 上肢機能の役割は?
- 上肢は目的物に上肢を伸ばす(reach)、目的物を握る(grasp)、つまむ(pinch)動作を上手く使って操作をします。
食事をする、服を着る、歯を磨くなどの生活動作における上肢動作はこれらを組み合わせて操作しています。 - 片麻痺の上肢の予後は?
- 病巣の大きさや部位によって予後は様々ですが、発症後1か月は神経可塑性が高められる時期であり、回復の大部分は発症後3か月以内に起こるとされています。
この時期に、いかに麻痺手の使用頻度を増やすかが予後に大きく影響するといわれています。
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<参照元>
・理学療法学第 37巻第8号 (2010 年 )「脳の可塑性と理学療法」:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/37/8/37_KJ00006912749/_pdf
・理学療法学 第 40巻第 8 号 (2013年)「運動学習とニューロリハビリテーション」:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/40/8/40_KJ00009392307/_pdf
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