・不整脈と脳梗塞の関連性
・脳梗塞後遺症があるなかでQOLを高める方法
・不整脈があるうえでの運動時のリスク管理
脳梗塞の後遺症があり、なおかつ不整脈の症状がある方は、脳梗塞の再発リスクが高いので、栄養管理や適度な運動等規則正しい生活を意識することが大切です。
しかし、麻痺があると運動をすることが難しい場合もあります。
この記事では麻痺の程度に合わせて安全にできる運動や運動時の工夫等を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
脳梗塞と不整脈による長期的な影響とリハビリによる対策
不整脈は脳梗塞の発症の原因の一つです。
脳梗塞の再発を予防するうえで、不整脈のリスク管理は避けては通れません。
本来リハビリとして体を動かすことは、後遺症の改善に良い効果をもたらしますが、その運動が過負荷であった場合はかえって体にとって悪影響となることもあるのです。
この記事では、脳梗塞と不整脈の影響とリハビリを交えた生活のポイントを解説していきます。
脳梗塞の後遺症を克服してQOLを高めるための具体的な方法
脳梗塞は多かれ少なかれ後遺症が残りやすく、これまでの生活に大きな変化をもたらします。
脳梗塞の後遺症で運動麻痺が残り体が動かしにくくなってしまい、より運動習慣が減ってしまった方もいるでしょう。
体を動かさないことで、筋力が低下してしまったり、関節の拘縮が進んでしまったり、体の血流が悪くなり、痛みや違和感が生じやすくなってしまいます。
運動をすることで筋力がつき、さらには血管が拡張しやすくなり血液循環が良くなるので、心臓への負担の軽減が期待できます。
自律神経も安定することで不整脈を予防できます。
そのため、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけることは、長期的に見てQOLを高めるために非常に重要です。
もし、麻痺の程度が重く一人で移動するのも大変な方は、寝たままや椅子に座ってできる体操でもいいのです。
両手を組んで上肢や体幹を軽く動かしたり、非麻痺側の足を動かしたりするだけでも、廃用症候群を予防できるでしょう。
さらに、QOLを高めるためには、運動機能面の維持だけでなく、心理面にも着目しないといけません。
脳梗塞後遺症により活動範囲が狭まり、今まで楽しんでいたことができなくなり、精神的にストレスを感じうつにつながるケースも珍しくありません。
例えば散歩に出かけその景色を見て空気を吸い、気分転換を図ることも大事でしょう。
家族だけでなく、友人や近所の方等の他者とコミュニケーションをとったり、地域の行事に参加したりと社会とのつながりを作ることも大切です。
自力で移動が難しい方はデイサービスを利用してみたりしてもいいでしょう。
自分の居場所を作ることは生活にメリハリを生み、体も脳も適度に刺激し心身ともに良い効果を与えるので、QOL向上につながるでしょう。
不整脈が日常生活に及ぼす影響と安心して暮らすための対策
不整脈とは心臓の電気信号が正常に伝達されなくなり、心臓の拍動が不規則の状態になることです。
不整脈には様々な種類があり、なかには症状を伴わず、治療も必要としない不整脈もあります。
しかし、無症状でも治療が必要な不整脈もあり、代表的な不整脈の一つが「心房細動」です。
心房細動自体は生命の危機に直結する症状ではありません。
しかし、心房細動が起こると心房内から血液がスムーズに送り出せなくなり、血液がよどんで血栓ができやすくなってしまいます。
その血栓が脳の血管のなかで詰まり、脳梗塞を引き起こしてしまうのです。
症状としては「階段を上ったり運動をしたりすると息が切れやすい」「疲れやすい」「ちょっと胸が苦しくなる」等がありますが、見逃してしまいやすいのも現状です。
特に脳梗塞や心不全といった持病がある方はもちろん、加齢や高血圧、糖尿病、飲酒や喫煙習慣の有無といった日常生活の影響も、心房細動を引き起こすリスクとなっています。
つまり、規則正しい生活をすることは健康を維持し、脳梗塞の再発につながるといえるでしょう。
脳梗塞や高血圧、糖尿病等の持病がある方は、専門家の指示に従い服薬管理をしましょう。
さらに、毎日の食事は塩分や糖分、アルコールの取りすぎに注意し、食べる量も腹八分目を意識するようにしましょう。
喫煙は血管を収縮させ、血流が悪くなり血栓ができやすくなるため、禁煙をしてください。
そして、適度な運動習慣をつけることも意識してみてください。
このように健康的な生活を送ることが不整脈の悪化や脳梗塞再発を予防することにつながっていくのです。
リハビリと不整脈治療を両立してより良い回復を目指すためのヒント
不整脈(心房細動)で治療が必要となった方は、血液を固まりにくくする抗凝固薬を服用することがあります。
この抗凝固薬は脳梗塞でも服用することがあります。
身体的に良い回復をするためには、上記でも解説した通り、適度な運動は欠かせません。
しかし抗凝固薬を服用している場合、転倒等の怪我による出血には特に注意が必要です。
立位でふらつきやすい方は座ってできる体操をするといった、安全に配慮した環境で体を動かすことが大切です。
ラジオ体操は立位でも座位でも実施でき、運動時間が3~4分と短いので毎日続けやすく、あまり負担なく全身を動かせるのでお勧めです。
立位ならば、何かにつかまってスクワットをするのもいいでしょう。
後遺症の程度が軽く、ウオーキングや自転車こぎ等の有酸素運動が可能な方は、目安として「常に人と話をしながらできる運動(息切れがしない)」程度の負荷を心がけてください。
運動前には準備運動として軽くストレッチし、体を動かしやすくすることで怪我を予防しましょう。
運動中・後に軽い息切れや動悸がした際には、自分で自身の脈を測る「検脈」をして、体調に異変がないか注意することも大切です。
日頃から運動をしたらどんな運動をどの程度したか記録するのもいいでしょう。
(例:〇月△日散歩20分)
ウォーキングであれば、歩数計を活用し歩数を記録するのもお勧めです。
日々の運動量を把握することで、体調の変化にも気づきやすくなり、通常よりも疲れやすい・異変がある等の些細な異変を見逃さずに速やかに病院を受診できます。
なお、運動を実施する際の注意点ですが、主治医や担当の理学療法士等にどの程度運動を取り入れていいか確認をしたうえで負担がない範囲で実施してください。
まとめ
この記事を読んで、脳梗塞と不整脈は関連性が高く、日常生活場面でも配慮するポイントが複数あることが分かっていただけたでしょうか。
「不整脈が心配だから」と運動を控えすぎては、体力が落ちてできることが減ってしまいます。
その反面で「体力をつけたい」「身体機能を改善したい」とリハビリを頑張りすぎるとかえって心臓に負荷がかかってしまうという、相反する問題を抱えています。
そのため、脳梗塞の後遺症だけでなく、心臓への負荷も踏まえたうえでのリハビリを実施することが大切です。
ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックでは、脳卒中・脊髄損傷を専門に、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』と神経再生リハビリ®を提供しております。
神経再生リハビリ®は、磁気刺激や電気刺激を入力し、神経回路を興奮させた状態で反復訓練を実施することで、特定の神経回路の強化や再構築を図れます。
脳卒中発症から時間が経ってしまい後遺症の改善を諦めていた方も、「神経再生リハビリ®で効果的に身体機能を改善したい」という方も、ぜひ一度再生医療を検討してみてはいかがでしょうか。
よくあるご質問
- 脳梗塞のリハビリで注意することは何ですか?
- 過負荷にならないよう運動量に注意したり、転倒予防のために安全にできる運動を選択したり環境調整をしたりすることが大切です。
不整脈がある方は、運動時にはいつもより息が苦しくないか、異変がないかという点を特に意識しなければなりません。
いきむ運動も避けてください。 - 不整脈を改善するにはどんな運動をすればいいですか?
- 運動の前段階である怪我予防目的のストレッチや、運動の耐久性を高める有酸素運動(例:ウォーキング)、筋力をつける無酸素運動(例:スクワット)を組み合わせることをお勧めします。
運動により体力がついたり、血管が拡張しやすくなったり、自律神経が安定しやすくなったりと、心臓の負荷を減らす様々な効果が得られます。
<参照元>
・公益財団法人 心臓血管研究所付属病院 心臓病予防-危険因子を知り生活習慣を見直そう!:https://www.cvi.or.jp/9d/489/
・公益財団法人 日本心臓財団 第23回 日常に潜む脳卒中の大きなリスク、『心房細動』対策のフロントライン―心不全の合併率も高い不整脈「心房細動」の最新知見―:https://www.jhf.or.jp/action/mediaWS/23/02.html
・不整脈ドットコム 心房細動のこと:https://fusei39.com/patient/af.shtml
・特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会 心臓病の基礎知識 – 心臓リハビリって何? Q.3 –:https://www.jacr.jp/faq/q119/
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