・失読症と言語障害の発生メカニズム
・視覚と言語領域の損傷による読み書き能力の影響
この記事では脳梗塞後の失読症と言語障害について解説します。
脳梗塞は脳の血管が詰まり脳の神経組織が壊死する疾患であり、病変部位により様々な症状が出現します。
その中で、失読症は読解能力に障害を来し、文字や単語を理解できなくなります。
言語障害は、話すことに障害を来たす失語症、言葉を発する際に不明瞭な発音になる構音障害があります。
脳梗塞の原因と生活上の影響
この記事では脳梗塞後の原因と生活上の影響について解説します。
原因として、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や、心臓疾患が挙げられます。
これらの原因が血栓や塞栓を形成し、脳の血管を詰まらせることにより脳梗塞が起こります。
その他、悪い生活習慣も影響します。
例えば、
- 食事バランスの乱れ
- 運動不足
- 過剰なストレス
- 喫煙
などが該当します。
これらの改善は、脳梗塞の発症リスクを下げるばかりでは無く、日常生活の質を向上させるので重要な取り組みです。
脳梗塞による生活上の影響として問題となるのは後遺症です。
片側の手足が動かなくなるなどの運動麻痺、言葉が話せなくなったり理解できなくなったりする言語障害、冷たい、熱いなどの感覚が鈍くなる感覚障害、視野障害などが起こります。
中には、意識障害など命に関わることもあります。
こういった症状は、日常生活に大きな影響を与えるばかりでは無く、仕事や趣味などの社会的活動が制限されたり、家族や介護者のサポートが必要になったりする場合もあります。
更に、医療費や介護費などの費用が嵩み、経済的負担が大きくなることも念頭におく必要があります。
失読症と言語障害の発生メカニズム
この記事では失読症と言語障害の発生メカニズムについて解説します。
脳梗塞は、脳の障害部位によって様々な後遺症が現れます。
その中でも、失読症と言語障害は、意思疎通に必要な言語機能に影響を与える重大な後遺症です。
漢字やひらがな、カタカナなどを読むことが困難になる症状を失読症といいます。
失読症は、主に左脳の後頭葉にある文字の視覚情報を処理する視覚野や側頭葉にある文字の視覚情報を意味として理解する言語野の損傷によって起こります。
話す、聞くといった言語機能全般に障害が現れる症状を言語障害といいます。
言語障害は言語理解、言語表現、言語記憶などの障害である失語症と発声器官に問題がなく、言葉を発する際に不明瞭な発音になる構音障害に分類されます。
言語障害は、主に左脳の側頭葉にある言語の理解、表現、記憶などに関わる機能を有する言語野の損傷によって起こります。
これらの症状は脳の損傷の範囲や程度によって異なるため、失読症と言語障害が併発する場合もあります。
視覚と言語領域の損傷による読み書き能力の影響
この記事では視覚と言語領域の損傷による読み書き能力の影響について解説します。
脳梗塞の後遺症の中でも、視覚と言語領域の損傷は、読み書きの能力に大きな影響を及ぼします。
視覚領域は、文字を見る、文字の形を認識するといった処理に関与しています。
従って、この部位が障害されると、
- 視力が低下したり視野が狭くなったりなどの視力障害
- 視野の半分が見えなくなる半盲
- 物体や文字を認識できなくなる視覚失認
- 文字の形を認識できないために読むことが困難になる読字困難
などの症状が現れます。
言語領域は、文字の意味を理解する、言葉を発するといった言語処理に関与しています。
従って、この領域が損傷されると、
- 言語の理解や表現
- 記憶などが障害される失語症
- 文字の意味を理解できないため読むことが困難になる失読症
- 言葉を書き出すことが困難になる失書症
などの症状が現れます。
視覚領域と言語領域の両方が損傷されると、読み書き能力は大きく低下し日常生活に大きな支障を来たします。
まとめ
今回の記事では、脳梗塞後の失読症と言語障害について解説しました。
脳梗塞は血管がつまり脳神経が壊死する疾患です。
壊死した範囲が広いと後遺症が残り日常生活に支障を来します。
そのため、神経を再生する治療が望まれます。
神経の再生医療は最も盛んに研究されている現状です。
脳や脊髄の損傷に対して、「ニューロテック®」と呼ばれる「神経障害が治ることを当たり前にする取り組み」も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
さらに、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」があります。
脳梗塞の後遺症に苦しむ患者に対して、神経を再生する医療は新たな治療の選択肢として期待がもてます。
よくあるご質問
- 脳梗塞後の言語障害にはどんなものがありますか?
- 脳梗塞後の言語障害には、言葉を話すことに障害を来たす失語症、言葉を流暢に話すことができない構音障害、文字を書くことに障害を来たす失書症などがあります。
いずれも後遺症として読み書きに支障を及ぼしますので早期の介入が必要です。 - 脳梗塞による失語症は回復しますか?
- 回復には個人差がありますが、多くの場合、適切なリハビリテーションや言語療法により改善することが多いです。
そのため、早期の介入が重要であるとともに、継続的な治療と患者の積極的な取り組みが不可欠です。
個々の症状や脳の損傷の程度に応じて、回復のプロセスは異なります。
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<参照元>
・脳卒中治療ガイドライン:
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html
・厚生労働省 e-ヘルスネット:
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html
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