・家事動作や趣味活動につながるリハビリについて
・リハビリの視点で見る治療機器の効果について
・社会復帰に向けての支援について
脳卒中後は運動麻痺や感覚障害、高次能機能障害などの症状が出現し、リハビリテーションを行います。
作業療法士によるリハビリは機能訓練だけでなく、日常生活動作訓練を実施したり、退院後の社会参加を見据えた訓練も実施するのです。
この記事では、脳卒中後の作業療法士の関わりについて詳しく説明しています。
目次
家事や趣味活動への応用動作練習
脳卒中になると運動機能障害や高次脳機能障害などの症状が出現します。
退院に向けての身体機能訓練はもちろん、その方の生活スタイルに必要となる家事動作や、生活の楽しみ・生きがいとなる趣味活動に対してリハビリテーションにて介入する場面があります。
もともと行っていた家事動作が病気によってできなくなってしまうと、自分の役割がなくなってしまったようで、生活のハリがなくなってしまうこともあるでしょう。
ここでは、家事動作と趣味活動についての具体例をご紹介します。
洗濯動作
洗濯動作は細かな動作の連続です。
洗濯物を洗濯機に入れる、洗剤を入れる、スタートスイッチを押す、洗濯機から取り出す、洗濯物を運ぶ、干す。
細かな動作の連続なのです。
その方の身体機能、高次脳機能で現在可能な動作なのか、それとも困難なのか評価します。
そして、困難な部分は動作が可能になるように機能訓練を実施します。
実際の機能回復が困難な場合は、代償的な動作を取り入れたり、道具を使って工夫することも必要となります。
例えば、ピンチハンガーは片手で洗濯物を持って、もう片方の手で洗濯ばさみを操作します。
片麻痺にて動作が難しい場合は、かけるタイプの道具を導入します。
調理動作
調理動作は準備も含めて考える必要があります。
献立を考える、買い物する作業には、スーパーまでの移動能力や、買い物する際の金銭管理能力も含まれます。
その方が実際にどの程度の範囲にて自力にて可能か評価する必要があります。
しかし、全てが出来ないといけないわけではありません。
本人がやりがいを持って行えるように、献立の計画、買い物、調理、配膳、片付けなど一連の動作で自信をもって出来るように一部の動作から取り入れても良いでしょう。
具体例を挙げてみると、調理動作にて自力で野菜を切れるようにするために自助具を導入します。
食材を安定させられるエッジのついたまな板、包丁を握りやすくするためにグリップの角度が変えられる包丁を導入します。
趣味活動
私たちの生活は、日常生活などの身辺処理動作が滞りなくできるだけでなく、趣味や生きがい、社会参加などその人にとって「意味のある作業」を毎日の生活で続け、その作業の結果から満足感や充実感を得ることができます。
趣味活動を再び楽しむために、リハビリテーションにて動作訓練を行うことがあります。
例えば、陶芸教室に通っていた方が、再び陶芸をやりたいと希望を持っている場合、陶芸に必要となる上肢を空間で保持する動作、上肢を空間で保持しながら、粘土の形を整える作業など、必要となる動作を分析してリハビリにて動作訓練を実施します。
こうして、趣味活動が再び行えるように支援するのです。
FESやt-DCSなどの治療器具の使用
作業療法のリハビリテーションには、徒手的な機能訓練、日常生活動作訓練などの他に、機能的電気刺激(FES)、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)という治療法もあります。
FES
FESは機能的電気刺激といって、電気刺激を用いて生体の失われた機能を再建する新しい治療法です。
中枢性運動麻痺に対しては、中枢神経を経由せず、直接末梢神経を電気的に興奮させて筋収縮を得ることができ、これを運動系のFESといいます。
肩や肘の麻痺が軽度で、手指の随意的な屈曲が可能であるが伸展ができない場合は、手指の伸筋群をFESで制御することによって、手指を伸ばすことができるようになり、握り離し動作が日常生活において使えるようになる希望があります。
t-DCS
tDCSは経頭蓋直流電気刺激法といって、頭蓋の外においた電極から微弱な直流電流を与えて、脳活動や行動を変容させる神経生理学的手法です。
研究により、脳卒中患者にtDCSを20分間行ったところ、刺激直後の上肢機能検査において遂行速度が改善されたとの報告があります。
また、上肢の運動機能障害に加え、
- 言語障害
- 記憶障害
- 半側空間無視
- 下肢運動機能障害
- 嚥下障害
- 感覚障害
など様々な機能障害をもつ脳卒中患者に対して,tDCS による課題成績や機能の改善効果が報告されています。
社会復帰支援に向けた活動
作業療法の目的は以下の3つの能力を維持・改善することです。
- 基本的能力:運動精神機能
- 応用的能力:食事、トイレ、生活で行われる活動
- 社会的適応能力:地域活動への参加、就労・就学
これらの能力を得るために、必要に応じて環境の調整や社会資源や諸制度の活用を促し、その人らしい生活の獲得を目指します。
その中でも、社会的適応能力は、社会の中で人それぞれが生きがいを見つけ豊かに生きるための目標となります。
脳卒中患者には、中高年の働き盛りの若い方もいます。
その場合、リハビリのゴールは在宅復帰ではなく、就労を目標にすることも多くあります。
退院後に地域障害者職業センターなどで職業訓練を行いながら仕事を探すこともできますが、入院時から就労を意識したリハビリテーションを行うこと、また作業療法士の専門性を生かした方法で就労支援を行うことも重要です。
身体機能障害だけでなく、高次脳機能障害のある方は就労を目標にするにあたり、困難と感じる場面が多くあるでしょう。
作業療法士はその方の症状を評価し、就労に必要となるリハビリプログラムを立案します。
まとめ
作業療法士が脳卒中の方のリハビリでどのように関わるのか紹介しました。
入院中だけでなく、退院後もその人らしく生活していけるように関わっていくことがとても大切です。
脳卒中により損傷された脳そのものは完全に治ることは困難と言われています。
そこで、近年は再生医療も注目を浴びています。
ニューロテックメディカルでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
また、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』をニューロテック®と定義し、生命の再生を促す再生医療を取り入れています。
再生医療だけではなく、リハビリも同時に行うことで(神経再生医療×同時リハビリ®)、より治る力を高めていくのです。
ご興味ある方は是非、お問い合わせください。
よくあるご質問
- 作業療法士にとって一番大切なことは何ですか?
- 障害と折り合いをつけながら、活き活きとしたその人らしい豊かな生活を送れるように、活動を通してリハビリをし、支援することです。
- 作業療法士は具体的に何を行いますか?
- 運動機能や高次能機能に対しての機能訓練、日常生活動作などの応用動作に対しての訓練、地域活動への参加や就労など社会復帰に向けての支援を行います。
その方の症状や社会的背景を把握し、必要となる訓練内容を立案、実施します。
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<参照元>
・日本作業療法士協会 「作業療法」:
https://www.jaot.or.jp/files/page/kankobutsu/pdf/informationbook1.pdf
・日本作業療法士協会 「人は作業をすることで元気になれる」:
https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2011/04/h22rokenjigyo-digest.pdf
・日本作業療法士協会 「はたらくことは、いきること」:
https://www.jaot.or.jp/ot_job/to_live/detail/9/
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