・片麻痺の階段昇降の手順
・片麻痺の階段昇降で注意する点
片麻痺患者の日常生活動作において、階段昇降は難しい課題の一つです。
しかし、段差が全くない家は多くはなく、屋外でも段差は多くあるので階段・段差昇降の能力は求められます。
階段昇降には麻痺や筋力の改善だけでなく、残存機能の活用や手すりなどの環境調整が望ましいです。
この記事では階段昇降のリハビリテーションについて解説します。
目次
片麻痺患者にとっての階段昇降
脳卒中の後遺症の一つに片麻痺があります。
片麻痺とは左右どちらか一方の手足が不自由になる後遺症で、全く動かすことができない状態や健側とほとんど変わらないほど動かせる人まで様々です。
手足が不自由なのですから、当然動作にも支障を来します。
日常生活動作の中でも最も困難になりやすい動作の一つが階段昇降です。
階段昇降では歩行よりも重心移動が大きく、筋力も強く協同した発揮が求められます。
一方で転倒した際の怪我のリスクは平地歩行よりも大きいです。
片麻痺向けの階段昇降リハビリテーションプログラム
片麻痺患者が階段昇降を獲得するためには、まずは歩行の獲得、麻痺側下肢での体重支持が必須です。
ついで、適切に健側を振り出せるか、麻痺側を揃えられるかが重要になります。
過去の論文からも、麻痺側に荷重ができるかが階段昇降自立と関連したというものもあります。
支持性が得られない場合には下肢装具を活用するのも良いです。
膝折れがない場合は背屈方向への動きがある装具を選ぶことで、よりよい階段昇降を目指すことができます。
階段昇降のリハビリテーションを行うにあたって筋力の強化も求められます。
最も効率的な運動の一つが起立動作です。
麻痺側下肢にも荷重を行いながら、重心をコントロールして起立することで、大殿筋や大腿四頭筋などの下肢筋力の強化を行います。
階段昇降に特化した訓練も有効です。
有効なのは小さな段差から実際に昇降を行うことです。
足を上げる動作を繰り返す、体を持ち上げる動作を繰り返すなど、各動作を分割して集中的に取り組むことも有効です。
直接的に階段昇降の訓練を行うことで、筋力強化になるだけでなく重心移動などの動作そのものを学ぶことができます。
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片麻痺患者の階段昇降の実際
片麻痺患者の階段昇降では筋力以外にも、動作の順番が重要です。
階段を昇るときは
杖 → 健側 → 麻痺側
の順番で体を動かします。
降りるときは
杖 → 麻痺側 → 健側
の順番になります。
「健側が上側の段差になるように」というのが覚えやすいです。
前向きに降りることが困難な場合には、後ろ向きに降りることも有効です。
また、手すりの追加や段差を小さくするなどの環境調整も有効です。
環境調整によりできるようになったり、できる場合でも安定性が増したりします。
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家でできる日常的なトレーニング
家でできるトレーニングとしては起立やスクワット動作、その場での足踏みがあります。
麻痺側への荷重を意識しましょう。
一人での立位の動作が危険な場合には、ブリッジ動作などベッド上で行うトレーニングも有効です。
自宅でする際の注意点
自宅は病院よりも環境が整っておらず、難易度が高いです。
病院では靴を履いて整えられたフロアをセラピストとともに練習を行います。
一方で自宅では靴下もしくは裸足で、滑りやすいフローリングになります。
介助者が一緒にいればまだ安全ではありますので、慣れないうちに一人で練習を行うのはやめましょう。
自宅の階段では手すりが片側にしかないこともあります。
手すりが片側であれば、必然的に上りか下りのどちらかで健側に手すりがないことになります。
杖や壁を利用したり、後ろ向きで下りたりなど、環境にあった昇降法を検討しましょう。
まとめ
この記事では片麻痺の階段昇降のリハビリテーションについて解説しました。
自宅での生活を考えるにあたって、階段や段差の昇降は多くの患者さんにとって課題となります。
身体機能改善だけで足りない場合は、段差解消や手すりなどの環境調整も行えると良いですね。
脳梗塞では発症したほぼ全員がリハビリテーションを行うこととなります。
しかし、どうしても後遺症が残ってしまう人はいます。
当院ではニューロテック®という「神経障害は治るを当たり前にする取り組み」を行っています。
取り組みの中の一つである狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療™、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリをおこなうことで神経障害の軽減を目指しています。
少しでも後遺症で悩む方が減るように、最新の情報を集めながら、目の前の患者さんの思いを傾聴し、医療を提供していきたいものです。
よくあるご質問
- 麻痺側を下にしてはいけない理由は何ですか?
- 片麻痺患者では自動運動を十分に行えず、感覚障害があることもあります。
側臥位で麻痺側を下側にすると褥瘡や皮膚障害の原因になったり、四肢を巻き込んで疼痛の原因になったりします。 - 片麻痺の患者の介助はどちら側に立つべきですか?
- 片麻痺患者は非麻痺側に杖を持つことが多く、介助では麻痺側に立つことになります。
麻痺側に立つことで麻痺側への注意や荷重を促すことができます。
振り出しがしにくい場合にも介助を行いやすいです。
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<参照元>・脳卒中片麻痺患者における段差昇降動作の可否に関する機能的要因の検討:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2012/0/2012_48101198/_pdf
・片麻痺患者における階段の降り方―後方アプローチの有効性についての検討:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/25/2/25_KJ00001305235/_article/-char/ja/
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