・外傷性くも膜下出血の治療法について
・治療後のリハビリプログラムと回復までの流れ
・リハビリで重要なポイント
この記事では、外傷性くも膜下出血の治療法として手術と保存療法の選択肢について詳しく解説します。
また、リハビリの重要性や長期的な視点での取り組みの必要性についても解説します。
外傷性くも膜下出血の治療とリハビリに関する基本的な情報を知りたい方、回復を目指す方やその家族に向けて役立つ内容をまとめています。
目次
外傷性くも膜下出血の治療方法:手術と保存的療法
脳の表面は軟膜、くも膜、硬膜という3層の膜に覆われており、軟膜とくも膜の間をくも膜下空といいます。
頭部外傷など頭に強い衝撃を受けた際にこのくも膜下空に出血が生じることを外傷性くも膜下出血といいます。
外傷性くも膜下出血の治療には「手術療法」と「保存療法」があります。
手術療法
重度の外傷性くも膜下出血では手術が必要となることがあります。
大量の出血がある場合は脳内の圧が上昇し、脳ヘルニアなど命の危険を脅かす可能性があります。
この場合は緊急に脳圧を下げる手術が必要となります。
また、血腫が大きい場合や動脈が損傷し出血が止まらない場合も血腫の除去や止血をする手術が必要となります。
保存療法
軽度の外傷性くも膜下出血では保存的療法が選択されます。
まずは入院して血圧や脳内の圧の管理、呼吸や栄養の管理などをしながら経過観察を行います。
また、抗けいれん薬や血栓予防薬などの薬物療法、身体機能の障害に対するリハビリテーションなどがあります。
治療後のリハビリプログラムと回復までの流れ
くも膜下出血後は適切なリハビリが重要となります。
リハビリでは発症直後から数週間の急性期、発症数週間から数カ月の回復期、発症数カ月から数年の維持期の大きく3段階に分けられ、それぞれの時期に合わせたリハビリが必要となります。
急性期
発症直後から数週間の急性期では、生命維持と二次的な合併症を防ぐことが目的となります。
長時間同じ姿勢で動かずにいると、背中やお尻、踵など圧が集中する部位に褥瘡が生じる可能性があるため、定期的な体位変換が必要となります。
また、筋力や体力の低下を防ぐためにできる限り早期に起き上がりから座位保持、車椅子への移乗、立位保持の練習などを開始します。
呼吸機能が低下すると誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、嚥下訓練や呼吸トレーニングも実施していきます。
回復期
発症数週間から数カ月の回復期では、身体機能の回復を目的として積極的なリハビリを行っていきます。
歩行訓練やバランス訓練に加え、食事、着替え、トイレ、入浴などの日常動作訓練を実施し基本的な日常生活の自立を目指していきます。
また、言語障害や嚥下障害が生じる場合には言語聴覚士による専門的なリハビリが必要となります。
維持期
数カ月から数年後の維持期では、回復した機能を維持しながらさらなる向上を目指していきます。
病院を退院後も定期的に外来でのリハビリを継続していきます。
また、生活動作の自立だけでなく社会復帰に向けて職場や家庭での適応訓練を実施します。
維持期では患者の不安やストレスを軽減させるために専門のカウンセリングを受けるなど心理的なサポートも重要となります。
外傷性くも膜下出血後のリハビリで重要なポイントとは?
外傷性クモ膜下出血後のリハビリテーションは、出血の程度や合併症の有無により一人一人異なってきますが重要なことは早期介入です。
外傷性クモ膜下出血の患者は意識障害や運動麻痺、感覚麻痺、言語障害などを伴うことが多いため、急性期の治療が落ち着いて安定した状態となったらできるだけ早期にリハビリを開始することが重要です。
また、リハビリでは身体機能の回復に注目されがちですが身体機能だけでなく認知機能の回復も重要となります。
外傷性クモ膜下出血では注意障害や記憶障害、言語障害など脳機能障害が現れることがあります。
特に言語障害がある場合には言語聴覚士による専門的なリハビリが必要となります。
身体機能や認知機能に障害が現れると患者は孤立感と不安感が増していきます。
家族や周囲の人が患者の状態を冷静に把握し、前向きにサポートしていくことも重要です。
外傷性クモ膜下出血のリハビリは短期間ですぐに効果の現れるものではないため、長期的な視点で取り組む必要があります。
数カ月から数年におよぶ場合もあります。
病院でのリハビリが終了し退院した後も外来でリハビリを継続したり、自宅での継続的なリハビリが必要となります。
地域のリハビリ施設や訪問リハビリを活用していくことをおすすめします。
まとめ
この記事では外傷性クモ膜下出血の治療法とリハビリの重要性について解説しました。
外傷性クモ膜下出血は頭部への強い衝撃により発生する危険な疾患ですが、適切な治療とリハビリによって回復を目指すことが可能です。
手術療法と保存療法の選択は出血の程度や症状によって判断されますが、その後のリハビリが特に重要となります。
リハビリは急性期、回復期、維持期と段階を経て進められます。
早期からのリハビリが重要で長期的な視点で取り組むこと、家族や周囲の人のサポートが必要となります。
また、最近では再生医療が注目されています。
再生医療は、これまで難しかった損傷した組織や神経自体の修復を促進させることで症状の改善が期待できます。
再生医療とリハビリを組み合わせることで組織の修復と運動機能の改善が同時に得られることで効果を最大限に引き出すことができます。
最近では「ニューロテックⓇ」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んに行われています。
神経の再生を促す再生医療とリハビリを組み合わせた「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、今まで難治であったクモ膜下出血の改善が期待できます。
再生医療も治療法の選択肢の一つになります。
よくあるご質問
- 外傷性くも膜下出血のその後はどうなりますか?
- 回復には出血の程度や状態により個人差があり、軽傷であれば数か月で社会復帰が可能ですが、重症の場合は長期的なリハビリが必要となります。
また、運動麻痺や認知障害といった後遺症が残る可能性があります。 - くも膜下出血のリハビリ期間はどのくらいですか?
- リハビリ期間には急性期、回復期、維持期があり、出血の程度や状態により個人差がありますが急性期は治療後~2週間程度、回復期は2週間~6か月程度、維持期は6か月~数年が目安となります。
<参照元>
・くも膜下出血患者の早期離床の効果とアウトカムに影響を与える要因の検討|J STAGE:
:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/38/3/38_10351/_pdf
・くも膜下出血とは?原因、症状、治療法について解説|MYメディカルクリニック:
https://mymc.jp/clinicblog/163558/
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