・頚椎損傷の治療法について
・理学療法や作業療法のリハビリプランについて
・心理的サポートの重要性について
頚椎損傷に対する手術と保存療法の選択肢、リハビリによる機能回復へのアプローチを詳しく解説しています。
理学療法や作業療法のリハビリプラン、補助具の活用、長期的な機能回復を目指すための心理的なサポートや日常生活の自立、社会復帰を目指す方法などを紹介。
頚椎損傷と向き合うすべての方に参考となる内容です。
頚椎損傷に対する手術と保存療法の選択肢
交通事故では強い衝撃により頭が大きく揺さぶられることで首に負担がかかり、頚椎(首の骨)を損傷してしまう可能性があります。
頚椎損傷では首の痛みや可動域制限が生じることが多く、骨折や脱臼をしている場合では頚椎の中を通る脊髄(頚髄)にもダメージが加わり、手足のしびれや運動麻痺などが生じる可能性があります。
この頚椎損傷に対する治療には「手術」と「保存療法」があります。
多くの場合は痛み止めなどの薬物療法、頚椎カラーなどで固定する装具療法、理学療法や作業療法、物理療法といったリハビリテーションなどの保存療法が適用となります。
しかし、神経の圧迫が強い場合や頚椎の不安定性がある場合、保存療法では効果が得られない場合など重度の障害では手術が必要となることがあります。
手術では椎弓という頚椎の後ろの部分を開いてその中を通る頚髄の圧迫を除去したり、骨折により不安定となっている部分を固定したり、頭蓋骨を牽引したりします。
手術後は早期にリハビリテーションを始めることも重要です。
理学療法や作業療法を活用したリハビリプラン
理学療法や作業療法などのリハビリは損傷の程度や生活の目標などに応じて患者ごとに個別化して計画されます。
理学療法では身体機能、動作の回復を主な目的として痛みの管理や関節可動域訓練、筋力強化訓練、バランス訓練、動作訓練などを理学療法士とともに行います。
受傷間もない急性期では安静を維持しながら関節の拘縮や筋の萎縮を予防するために軽い運動やストレッチを行います。
徐々に痛みが落ち着いてくる回復期では自主的な運動を積極的に導入して関節の可動域改善や筋力強化を図ります。
症状が一定となる慢性期では、少し強度を高めた筋力強化訓練や関節可動域訓練、バランス訓練や動作訓練を行っていきます。
作業療法では日常動作の回復など日常生活の自立、社会復帰を主な目的として食事や衣服の着脱、整容動作など上肢や手指の巧緻性の改善、補助具や自助具の活用、仕事復帰に必要な能力訓練などを作業療法士とともに行います。
理学療法も作業療法も早期から始めることが重要となります。
長期的な機能回復を目指すための心理的サポート
交通事故による頚椎損傷では身体的な障害だけでなく、心理的な影響をもたらします。
突然の身体機能の喪失に伴うショックや痛みなどの症状がいつ改善するかといった不安、症状を周りに理解してもらえないことからの孤立感などが起こりやすく、これらに適切に対応する必要があり、心理的なサポートが重要となります。
交通事故の被害者の精神的なショックを医療スタッフや家族、周囲の人たちが理解し、寄り添うことが重要です。
また、障害を被害者本人が適切に受容していく必要があります。
障害を受容するには5つの段階があると言われており、突然の交通事故により自分自身に何が起こったのか理解できない状態のショック期から始まり、障害から目を背けて認めようとしない否認期、怒りや悲しみ、抑うつなどの感情が不安定となる混乱期、障害を受け入れようとする努力期、障害を受け入れて前向きになる受容期があります。
身体的な機能回復を効果的に進めるためにも被害者自身が現状を受け入れ、前向きに生活しながらリハビリを行っていくことが重要となります。
そのため、長期的な機能回復を目指すために医療スタッフなどの専門職や家族、周囲の人たちの障害受容の5段階に合わせた共感や理解、現実をしっかりと受け入れるための説得などの心理的なサポートが必要不可欠となります。
まとめ
今回は頚椎損傷に対する治療法やリハビリプラン、心理的サポートについて解説しました。
治療法は損傷の程度によって手術か保存療法が選択されます。
リハビリプランは損傷の程度や生活の目標などに応じて個別化して計画され、理学療法や作業療法など専門家によるリハビリが計画的に行われます。
頚椎損傷では程度によって後遺症が残ってしまう可能性があり、特に頚椎の中を通る脊髄(頚髄)やそこからでてくる神経に障害が生じると神経自体の回復は難しくなるため後遺症が残りやすくなります。
これまでは一度損傷した脳細胞や神経細胞はもとに戻ることはないとされていました。
そのため、主な治療はリハビリテーションで機能回復を目指すことでした。
しかし、最近では損傷した神経自体を修復させて機能回復を目指す再生医療が注目されています。
「ニューロテックⓇ」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んに行われています。
神経の再生を促す再生医療とリハビリを組み合わせた「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、今まで難治であった神経障害の改善が期待できます。
再生医療も治療法の選択肢の1つになります。
よくあるご質問
- 頸椎損傷の治療法は?
- 頚椎を固定する装具療法や痛み止めなどの薬物療法、理学療法や作業療法などのリハビリテーションといった保存療法があります。
損傷の程度が重要で骨折や脱臼、脊髄やそこから出る神経に障害が生じる場合では手術をすることもあります - 脊髄損傷のリハビリテーションではどんなことをするのでしょうか?
- 低下した身体機能の回復や合併症の予防、日常生活への適応を目標に理学療法や作業療法を行います。
急性期では安静にしつつ関節の拘縮予防や筋委縮の予防をしていきます。
回復期では積極的な関節可動域訓練や筋力強化訓練、動作訓練を行います。
慢性期では日常生活の自立や社会復帰訓練を行います。
<参照元>
・「障害の需要」再論|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/57/10/57_57.890/_pdf
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