・嚥下訓練の目的と対象
・医療職の連携
・作業療法士の役割
嚥下訓練とは、飲食物を飲み込む機能に障害をおった患者に対して行うリハビリの1つです。
一般的に、嚥下訓練は言語聴覚士が行うイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、実際の嚥下訓練は医師・看護師・管理栄養士・リハビリ専門職などさまざまな医療職が連携して行うのです。
この記事は、嚥下訓練における作業療法士の役割について解説します。
目次
嚥下訓練とは
嚥下訓練とは、飲食物の飲み込みに関わる嚥下機能に障害をおった患者に対して行うリハビリの1つです。
誰もが安全に食事を楽しめることを目的とし、飲食物の飲み込みに必要な筋肉を動かしたり、口腔周囲に刺激を与えたりして運動機能や感覚機能の改善を促します。
脳梗塞や口腔周囲の疾患によって嚥下機能障害が起きたとしても、嚥下訓練を行うことで改善する可能性があります。
また、高齢者など老化によって嚥下機能の低下を認める方に対する誤嚥予防としても嚥下訓練は効果的です。
脳梗塞になる方の多くが嚥下障害を併発してしまいます。この記事では、なぜ脳梗塞で嚥下障害が起きるのか?治るのか?について、脳と嚥下の関係、脳梗塞により障害が出るメカニズムとその治療方法について説明しています。
嚥下訓練における作業療法士の役割
嚥下訓練は、医師や看護師、管理栄養士など様々な専門職が関わります。
リハビリにおいても、言語聴覚士だけでなく作業療法士や理学療法士もそれぞれの専門知識を活かして嚥下訓練を行うのです。
ここでは、嚥下訓練における作業療法士の役割についてご紹介します。
作業療法士とは
作業療法士は、運動機能や認知機能に障害がある患者に対し、日常生活に必要な動作の訓練や環境調整を主に行うリハビリ専門職の1つです。
具体的には、食事やトイレ、着替え、入浴など日常生活の基本となる身の回りの動作が自立してできるようにサポートします。
また、患者の社会的背景に合わせて家事動作や買い物、交通機関を利用しての外出などを行うこともあります。
時には、復学・復職に向けて必要な訓練をしたり、自助具や生活環境についてアドバイスをしたりします。
嚥下訓練に作業療法士が介入する目的
嚥下訓練は、医師や看護師、管理栄養士など様々な専門職が関わり、広い視点から介入しなければなりません。
その中でも、作業療法士は嚥下障害をもつ患者の動作能力や心身機能の維持・向上を目的に嚥下訓練を実施します。
例えば、食事動作を自立してできるように咀嚼や飲み込みやすい姿勢の調整を行います。
自助具や環境調整の知識が豊富な作業療法士の強みを活かしてアプローチするのが作業療法士の役目です。
嚥下訓練において作業療法士ができること
嚥下訓練において作業療法士ができることは、嚥下機能に関わる身体機能の維持・向上や高次脳機能障害や認知機能へのアプローチなどです。
具体的には、飲み込みに関わる筋力を高める訓練や反射を促す訓練を行います。
また、高次脳機能障害によって空間の認識や動作の遂行能力に障害を負った患者に対して食事の際の自助具や環境の調節を行うこともあります。
作業療法士が行う嚥下訓練
それでは、実際に作業療法士はどのような嚥下訓練を行うのかについてご紹介します。
機能訓練
主な機能訓練には、嚥下体操・頭部挙上訓練などがあります。
まず、嚥下体操とは、舌・口・喉など嚥下に関わる器官の体操を行い、咀嚼や飲み込みに関係する機能の維持・向上を図る訓練です。
次に、頭部挙上訓練は嚥下に必要となる喉頭の挙上を促すために必要な舌骨常勤群、喉頭挙上筋群の強化を行う訓練になります。
仰向けの体勢になり、おへそを見るように顎を引きながら頭を持ち上げる運動を繰り返します。
食事訓練
実際の食事を通して行う訓練です。
誤嚥のリスクもあるため、食事訓練が可能か患者の状態を評価した上で行います。
食事訓練で嚥下が問題なくできているかだけでなく、食事動作など自分で食事が食べられるかなどの評価もします。
必要に応じて、食事の配置や自助具など環境調整の必要性を判断します。
環境調整
環境調整では、嚥下障害をもつ患者がより食事を取りやすくするための環境作りを行います。
例えば、運動麻痺や高次脳機能障害がある患者に対して、食事が食べやすい姿勢を整えたり、食事の配置の工夫を考えるのも作業療法士の役割です。
また、食事動作をサポートする自助具の作成も検討します。
脳梗塞や脳出血の後遺症の一つに嚥下障害があります。麻痺や感覚障害と同様で、嚥下障害はその後の日常生活に大きな支障をきたします。嚥下障害は単に飲み込みが悪くなるだけではなく、場合によっては誤嚥を引き起こし、肺炎に至れば命に関わる危険性があります。そこで本書では、嚥下障害の原因や病態について詳しく解説していきます。
嚥下訓練に関わるその他のリハビリ職
作業療法士以外のリハビリ職も嚥下訓練を行います。
言語聴覚士
言語聴覚士は、リハビリ職の中でも嚥下障害を専門としています。
医師や看護師とともに嚥下機能の評価や間接・直接訓練を率先して実施するのが言語聴覚士の役目です。
理学療法士
理学療法士は、日常生活動作や生活関連動作に対して、機能訓練・動作訓練を行います。
食事姿勢の評価や嚥下に関わる機能の訓練、体力の維持・向上を図るのが役目です。
また、誤嚥予防のために排痰や咳嗽訓練などの呼吸理学療法を行うこともあります。
まとめ
今回は、嚥下訓練における作業療法士の役割についてご紹介しました。
嚥下障害の改善にはリハビリが欠かせません。
また、近年では脳卒中などの神経損傷によって生じた嚥下障害は、再生医療をリハビリに組み合わせることでより治療効果を得られる可能性が出てきました。
神経損傷による嚥下障害をもつ方はリハビリに加え、再生医療も治療の選択肢として検討すると良いでしょう。
よくあるご質問
- 嚥下障害の食事療法は?
- とろみをつけたり、食形態をペースト状や細かく刻んだりして嚥下障害の程度に合わせた食事形態の検討をします。
また、少量でカロリーがとれる食品等を利用して栄養が不足しないように指導も実施します。 - 作業療法士と理学療法士の違いは何ですか?
- 作業療法士と理学療法士はどちらも日常生活をスムーズに送れるように支援する仕事です。
理学療法士は座る・立つ・歩くといった身体の基本的な動作のリハビリを行うのに対し、作業療法士は食事動作や服を着る動作、トイレ動作などの患者に合わせた日常生活動作のリハビリを行います。
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<参照元>・嚥下訓練での作業療法士の役割は?具体的な作業療法とポイントを説明
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/29337
・摂食・嚥下チーム – チーム医療推進協議会
https://www.team-med.jp/archives/team/sessyoku
・その姿勢で大丈夫? 理学療法士による摂食・嚥下時のポジショニング介入 | セラピストプラス
https://co-medical.mynavi.jp/contents/therapistplus/career/upskilling/412/
・嚥下障害のリハビリ方法7選|リハビリの流れについて詳しく解説
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/target=https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/26476
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