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脳梗塞後の左片麻痺のリハビリテーション

この記事を読んでわかること
脳梗塞の後遺症(特に右半球の梗塞)
左半身麻痺が生じたあとのリハビリテーション


脳梗塞は血管が詰まった部位で症状が異なります。
左片麻痺が出る場合は、右の脳が障害を受けていることが多く、注意障害や半側空間無視などの高次脳機能障害を合併することがあります。
後遺症が出た場合は自宅生活・社会復帰のためにリハビリテーションが必要です。
この記事では左片麻痺を発症した場合のリハビリテーションについて解説します。

左片麻痺に合併する脳梗塞の後遺症

左片麻痺に合併する脳梗塞の後遺症

左片麻痺とは左の手足が動かしにくくなる後遺症です。
右の大脳半球や中脳・橋の右側を障害されることで生じます。
左片麻痺というと運動について想起されることが多いですが、他にも

運動障害以外

  • 温度
  • 痛み
  • 触ったことがわからない表在感覚障害
  • 手足の位置・動きがわからない深部感覚障害

といったものも合併することがあります。
また右大脳半球の梗塞が起きた場合は、

右大脳半球の梗塞

  • 病態失認(疾病を発症して後遺症があることを正しく認識できない)
  • 注意障害(物事に適切に注意を向けることができない)
  • 半側空間無視(左側の世界を認識できない)
  • 運動無視(麻痺側の手足の存在を忘れてしまう)

といった症状を合併することがあり、リハビリテーションへの影響だけでなく、自動車運転や復職にも大きく関わる後遺症が出ることがあります。

後遺症を減らす治療・リハビリ

後遺症を少なくするためには、まずは早期診断と早期治療が必要です。
特に脳梗塞の場合はrt-PA(静注血栓溶解療法)や血栓回収療法という治療により、梗塞により機能が停止する部位を減らすことが期待できます。
どちらの治療も適応には時間の制限があり、また早ければ早いほどよいと言われています。
どのような治療が行われたかによらず、早期からのリハビリテーションも有効です。

急性期では全身状態の様子を見ながら、まずは離床や歩行からリハビリテーションが行われます。
急性期治療が終われば回復期リハビリテーション病棟で、自宅退院に向けたリハビリテーションを行うことになります。
社会復帰や復職、運転を目指すなど、退院後もリハビリテーションを行う場合もあります。
左片麻痺が重度の場合は、長下肢装具を用いた起立・歩行訓練などから始め、能力に合わせて訓練を行います。
また、上肢で麻痺が中等度〜軽度の場合はCI療法(敢えて健側の上肢を制限して麻痺側の活動を促す)も有効です。
上肢・下肢ともにロボットやVR(Virtual Reality)、MR(Mixed Reality)を用いたリハビリテーションも発展してきており、今後も注目していく必要があります。

左半身麻痺の回復可能性

左片麻痺は適切なリハビリテーションが重要
左片麻痺は適切なリハビリテーションがあれば、最初の半年間が大きく伸びる時期です。
脳卒中という大きな括りでみれば、20-64歳での発症後3ヶ月で日常生活ができるようになるのは73%と言われています。

近年は高齢化が凄まじく、脳梗塞後に介護を必要とする人はもっと多いと予測されます。
しかし、どの程度回復するかは梗塞が起きた場所・範囲が大きく影響しますし、日常生活が介助なしに行える=後遺症がないわけではありません。
多彩な高次脳機能障害のこともあり、後遺症の個人差は非常に大きいと言えます。

リハビリテーションでの改善事例

公開可能な範囲から左半身麻痺の症例報告を紹介します。

1つ目は栃木理学療法士学会からの症例報告です。
心原性脳塞栓症で広範囲の脳梗塞になってしまい、左半身麻痺となった80代女性の症例です。
回復期リハビリテーション病棟に転院時には立位の保持も困難でしたが、5ヶ月間のリハビリテーションmにより短下肢装具と杖を用いて歩行ができるまで回復しました。

2つ目は日本老年医学会雑誌に投稿された論文です。
60代の男性で脳梗塞による左半身麻痺は軽度でありながら、重い注意障害が後遺症として残ってしまいました。
しかし「運転をしたい」という希望に向けて通所リハビリテーションを継続し、発症約1年後に運転再開が可能となりました。

まとめ

この記事では脳梗塞により生じた左片麻痺のリハビリテーションについて解説しました。
左片麻痺は注意障害や半側空間無視を合併することが多く、リハビリに難渋することもあります。
また、自宅生活ができるようになっても高次脳機能障害で自動車運転再開や復職が困難な例もあります。
発症したほぼ全員がリハビリテーションを行うこととなりますが、どうしても後遺症が残ってしまう人はいます。
当院ではニューロテック®という「神経障害は治るを当たり前にする取り組み」を行っています。
取り組みの中の一つであるリニューロ®では、同時刺激×神経再生医療™、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリをおこなうことで神経障害の軽減を目指しています。
少しでも後遺症で悩む方が減るように、最新の情報を集めながら医療を提供していきたいものです。

よくあるご質問

脳梗塞で左半身麻痺になるのはなぜ?
脳梗塞では血管が詰まることで神経の働きが停止します。
このとき、左半身の運動を司る経路で梗塞を起こしてしまうと、左半身麻痺になります。具体的な部位としては右大脳半球、中脳・橋の右側などが該当します。

左片麻痺はどちらの脳に障害があるのですか?
大脳皮質から出発する錐体路は、延髄で交叉して対側の運動を支配します(錐体交叉)。
よって、左片麻痺が生じた場合、錐体交叉より上の右側の障害もしくは錐体交叉より下の左側の障害が考えられます。

関連記事


<参照元>
・脳卒中治療ガイドライン2021「心原性脳塞栓症により左片麻痺を呈した症例 ~姿勢制御の改善から歩行獲得へ向け脳機能を考慮した治療介入~」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pttochigicon/18/0/18_021/_pdf/-char/ja
・脳梗塞発症後,通所リハビリテーション利用にて注意機能訓練実施により安全運転のための運転能力向上を認めた1例:https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/59/1/59_59.102/_pdf/-char/en

<外部サイトの関連記事>左半身麻痺のリハビリ方法




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