・CIDPは運動機能と感覚機能に深刻な影響を与えることがわかる。
・CIDPに対するリハビリテーションは、筋力回復、関節の柔軟性維持、日常生活動作の自立促進、精神的健康の向上、神経再生の促進など、多方面での効果をもたらすことがわかる。
・CIDPに対するリハビリテーションを受けた患者が再び歩行できるようになったり、日常生活動作が改善されたりする具体例があることがわかる。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は、免疫系の異常により末梢神経が攻撃される疾患です。
リハビリテーションは、CIDP患者の生活の質の向上に不可欠です。
これにより、患者の精神的健康が改善され、神経の再生も促進されます。
今回の記事では、CIDPに対するリハビリテーションの効果や改善例についても解説していきます。
目次
CIDPにおけるリハビリテーションの重要性
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は、慢性的な免疫性の神経障害で、末梢神経の脱髄を引き起こします。
この病気は、運動機能と感覚機能の両方に深刻な影響を与え、患者の日常生活に大きな制約を与えてしまいます。
一方で、リハビリテーションは、CIDP患者にとって以下のような多くの重要な役割を果たします。
1. 筋力と持久力の回復
CIDPは筋力の低下を引き起こしますが、適切なリハビリテーションを通じて筋力を維持し、回復することが可能です。
筋力トレーニングや有酸素運動は、筋肉の萎縮を防ぎ、持久力を向上させます。
2. 関節の柔軟性と可動域の維持
関節の硬直や拘縮を防ぐために、ストレッチングや関節可動域訓練が重要です。
これにより、関節の柔軟性を維持し、痛みを軽減することができます。
リハビリはまた、関節の可動域を広げるためのエクササイズも含まれています。
3. 日常生活動作(ADL)の自立促進
リハビリテーションは、日常生活動作(ADL)の自立を促進することができます。
4. 精神的健康の向上
CIDPの患者は、病気の進行と共に精神的なストレスや不安を感じることが多いです。
リハビリテーションは、患者が自分の身体の機能を回復し、日常生活に参加できるようになることで、精神的な健康を改善します。
これにより、患者の全体的な生活の質が向上します。
5. 神経の再生促進
リハビリテーションは、神経の再生を助ける役割も果たします。
適切な運動を通じて、神経の再生が促進され、機能の回復が早まる可能性があります。
特に、神経の機能を再び学び直すためのリハビリテーションは、神経系の再生に有益です。
CIDPに特化したリハビリテーションの方法
CIDPに対するリハビリテーションは、患者の具体的な症状や状態に合わせてカスタマイズされます。
以下に代表的なリハビリ方法を紹介します。
筋力トレーニング
筋力低下を防ぐために、抵抗運動(レジスタンス運動のこと、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動)や等尺性運動(関節を動かさない運動、壁に手をついて、力一杯壁を押す運動など)が行われます。
これにより、筋肉の萎縮を防ぎ、日常生活動作の基盤を築くことができます。
関節可動域訓練
関節の硬直や拘縮を予防するために、ストレッチングや関節の動きを促進するエクササイズが含まれます。
これにより、柔軟性を維持し、痛みを軽減することができます。
有酸素運動
ウォーキングや水中運動など、持続可能な軽度の有酸素運動は、全身の持久力を高め、心肺機能の向上に役立ちます。
作業療法
作業療法士が日常生活動作(食事、入浴、着替えなど)の自立を支援します。
これには補助具の使用方法や住環境の改善も含まれます
リハビリテーションの効果と成功例
それでは、ここからリハビリテーションの効果と成功例について解説します。
成功例1:筋力の回復と歩行の自立
ある患者は、CIDPによって歩行が困難になりましたが、専門のリハビリを受けることで筋力が回復し、再び自力で歩行できるようになりました。
定期的な筋力トレーニングと有酸素運動が、この患者の回復に大きく寄与しました。
成功例2:日常生活動作の改善
別の患者は、CIDPにより食事や着替えが困難でしたが、作業療法士の指導のもとで補助具の使用方法を学び、効率的な動作を実践することで、自立が大幅に向上しました。
これにより、患者は自信を取り戻し、生活の質が向上しました。
まとめ
CIDPにおけるリハビリテーションは、患者の機能回復と生活の質向上に重要な役割を果たします。
個々の患者に合わせたリハビリプログラムが効果を発揮し、筋力トレーニング、関節可動域訓練、有酸素運動、作業療法などが含まれます。
成功例からも分かるように、継続的なリハビリは患者の自立と健康維持に大きく寄与します。
CIDPと診断された場合は、専門の医療チームとともに適切なリハビリプランを立て、積極的に取り組むことが重要です。
当院では、『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義し、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®にて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞®、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
再生医療とリハビリの併用で、治療効果を高めることが期待できます。
今後も、再生医療の発展に期待が持たれるところです。
よくあるご質問
- CIDPの余命はどのくらいですか?
- CIDPは生命予後に影響を与えることは少なく、適切な治療を受ければ長期間にわたって生活することができます。
患者の大半は治療により症状の改善やコントロールが可能です。 - CIDPは難病ですか?
- はい、CIDPは日本の厚生労働省によって難病に指定されています。
難病指定により、医療費の助成を受けることができます。
そして、専門的な治療とケアが受けられます。
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<参照元>
・CIDP・MMNに対してリハビリテーション治療は有効?:
https://www.takeda.co.jp/patients/cidp_mmn_navi/rehabilitation/
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー:
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4090
・Cureus | Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy (CIDP): Overview, Treatment, and a Case Study:
https://www.cureus.com/articles/191838-chronic-inflammatory-demyelinating-polyneuropathy-cidp-overview-treatment-and-a-case-study#!/
・Guidelines for Physical and Occupational Therapy:
https://www.gbs-cidp.org/wp-content/uploads/2012/01/PTOTGuidelines.pdf#:~:text=URL%3A%20https%3A%2F%2Fwww.gbs
・Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: a rare cause of falls | BMJ Case Reports:
Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: a rare cause of falls | BMJ Case Reports
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