・頚椎症性筋萎縮症についての病態がわかる。
・頚椎症性筋萎縮症のリハビリはどのようなことを行うのかわかる。
・再生医療とリハビリを両方行うことの重要性がわかる。
加齢により頸椎の形状が変化する病気を頚椎症といいます。
頚椎症は3つの病気に分類され、その1つが頚椎症性筋萎縮症です。
この記事では、頚椎症性筋萎縮症とはどんな病気か、リハビリ方法とその予後について解説します。
また、再生医療についても解説していますので、最後までご覧ください。
目次
頚椎症性筋萎縮症とは
加齢により頸椎の形状が変化する病気を頚椎症といいます。
頸椎(首の骨)や椎間板が変形、変性して脊髄や神経根が圧迫されると、手足の痛みやしびれが見られ、動きが悪くなります。
頚椎症は症状によって3つの病気に分けられます。
- 頚椎症性脊髄症:脊髄が圧迫を受けて脊髄症を発症する
- 頚椎症性神経根症:椎間孔を狭窄し、肩甲骨周囲や上肢の痛みが発症する
- 頚椎症性筋萎縮症:肩甲骨周囲や上肢の筋萎縮(細くなる)、筋力低下を発症する
頸椎の神経が圧迫されたり障害されると、様々な症状が見られます。
その中の1つが「頚椎症性筋萎縮症」です。
頚椎症性筋萎縮症は、手や上肢の筋力が低下し、筋肉が萎縮します。
肩や上肢が挙がりにくくなる近位型と、指を動かしにくくなる遠位型がありますが、大半が近位型といわれています。
上肢の脱力や筋萎縮を主症状とし、明らかな感覚障害や疼痛がないか、あっても軽微な障害にとどまります。
リハビリの具体的な手法
リハビリの具体的な手法としては、以下の運動療法があります。
関節可動域訓練
肩をすくめる、上肢を前方や側方に挙げる、後方に伸ばすような動きをするときの筋力の低下が症状として見られることが多いです。
自力で動かすことが出来ないと、関節の動く範囲が狭くなってしまいます(関節可動域制限)。
リハビリでは、関節の動きが悪くなったり固まらないようにする目的で、肩関節や肘関節の動きを補助して動かします。
筋力強化訓練
肩関節周囲、肘関節周囲の筋力低下が起こりやすいため、筋力の低下した部分に対して強化訓練を行います。
上肢を垂らした姿勢で、自力で動かせる範囲で動かします。
動かそうとしても自力では困難な場合は、動きを補助して行います。
訓練を継続的に行い、自力で動かせるように徐々に補助を外していきます。
筋力がついてくると、補助を外しても自力で保てるようになってくるのです。
立位、座位でこの運動が困難なときは、仰向け姿勢で行っても良いです。
実施する姿勢の難易度としては、仰向け姿勢→座位→立位の順なので、状態に合わせて姿勢は選びます。
電気刺激療法
低周波を使用した経皮的電気刺激療法は、従来より麻痺筋の廃用性萎縮の予防と神経線維の再生を促進する目的で使われていました。
頚椎症性筋萎縮症では、肩関節周囲の三角筋などの筋委縮が認められ、萎縮のある筋に対しての低周波療法が行われることがあります。
運動療法の他に、牽引、温熱療法などが実施されることもあります。
頚椎症性神経根症は、頸髄から分岐した神経が周囲の骨や椎間板に圧迫されることで、主に片側の上肢にしびれや麻痺をきたす病気の事です。不用意に頸部に負担のかかる動きや姿勢によって神経症状が悪化するため、日頃から注意が必要な病気です。そこで今回の記事では、頚椎症性神経根症の人がやってはいけないことに関して解説していきます。
継続的なリハビリがもたらす効果
上記で紹介したリハビリ手法を症状に合わせて取り入れて継続的なリハビリを実施します。
継続的なリハビリ(牽引、温熱、運動療法など)を実施することで、頚椎症性筋萎縮症の一部は約3か月以内に改善傾向が見られるとの報告があります。
保存的治療(手術以外の治療法)で約6割が日常生活に支障がない程度に回復するといわれていますが、高齢になるほど回復が悪くなる傾向が見られます。
3~6か月の運動療法で改善を目指すのが目安です。
実際のリハビリの進行例とポイント
実際のリハビリの進行例を以下にご紹介します。
過度に右手を使って、翌日から肩の痛み、上肢が挙がらない症状が出現しました。
2週間様子を見ましたが、痛みは緩和したものの、上肢は挙がらない状態ということで病院を受診し、リハビリを開始することになりました。
リハビリ開始時、上肢が挙がらないという訴えのみで、痛みやしびれ、感覚障害は認められませんでした。
リハビリは以下の内容で進めました。
- 右肩関節の関節可動域制限予防のため、右肩関節に対して関節可動域訓練を実施。
- 頸部の姿勢に歪みがあり、僧帽筋、肩甲挙筋に硬さが見られたため、横断伸長法を実施。
- 右肩関節の三角筋に筋萎縮が認められたため、低周波療法を実施。
低周波が流れるタイミングにて肩関節の動きを補助しながら動かしました。
リハビリ介入5週目から徐々に右肩関節の関節可動域の改善が認められ、10週目で上肢が前方に90度挙がるようになり、13週目で120度まで挙がるようになりました。
頸部の姿勢の歪みは頸部への負担となり、症状の改善を阻害する要因となるため、リハビリを実施して症状の改善状態をみながら姿勢修正を行うのもポイントです。
まとめ
頚椎症には様々な症状があり、その中の1つが頚椎症性筋萎縮症です。
頚椎症性筋萎縮症は肩甲骨周囲や上肢の筋肉の脱力が見られることが多く、日常生活における手の使いにくさが生じます。
リハビリによる運動療法を行うことで、約6割の方は日常生活に支障がないレベルまで回復するといわれています。
しかし、年齢とともに自分で治す力が急激に弱くなるのも事実です。
リハビリだけでなく自分で治す力をできるだけ高め、リハビリを行う前の下地作りをしてあげる再生医療がとても重要となります。
「神経再生医療×同時リハビリ™」による治療で、回復の可能性を高めていけると考えているのです。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しています。
頚椎症性筋萎縮症でお悩みの方やご家族の方は、ぜひご相談ください。
よくあるご質問
頚椎症のリハビリ期間はどれくらいですか?
リハビリを継続的に行うことで、頚椎症性筋萎縮症の一部の方は3か月以内で回復傾向が見られると報告されています。3か月継続して回復が困難な場合は、手術療法を検討します。
手術を行う場合は、術後の機能回復に向けた入院リハビリの目安は150日です。
頚椎症はストレッチで悪化する?
過度な運動、痛みを伴う運動は悪化する可能性があるので、控えましょう。
医師やリハビリの療法士にアドバイスをもらって、ご自身の症状に合わせたストレッチを行うことをお勧めします。
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<参照元>
・東京医科歯科大学 整形外科 頚椎症 – 東京医科歯科大学 整形外科 (tmdu-orth.jp):https://tmdu-orth.jp/spine-disease/post-3982/
・総合せき損センター、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、頚椎症性筋萎縮症、頚椎後縦靭帯骨化症 | 総合せき損センター (johas.go.jp):https://sekisonh.johas.go.jp/department/plastic/disease03
・Mindsガイドラインライブラリ 頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン:https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0034/G0000096/0034
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