・脳幹出血からの回復の見込みがわかる
・脳幹出血における効率的なリハビリがわかる
脳幹とは脳の中でも非常に重要な機能を担う部位であり、運動や感覚機能はもちろん、呼吸や循環動態なども司る部位です。
そのため、脳幹出血は重篤な後遺症を残す可能性があり、その後の生活のためにも積極的なリハビリテーションが肝要です。
そこで、この記事では脳幹出血後のリハビリテーションについて詳しく解説します。
効果的なリハビリの進め方
脳幹とは、間脳(視床・視床下部)・中脳・橋・延髄の総称であり、まさに脳機能の根幹とも呼べる大変重要な機能を司る部位です。
呼吸・循環動態など生命維持に必要不可欠な機能を調整しており、その他にも、消化管・体温・睡眠・嚥下・構音などの機能も司っています。
脳幹出血は脳出血全体の5〜10%と言われており比較的稀ですが、担っている機能の重要性から全身に与える影響は小さくありません。
麻痺やしびれはもちろんのこと、眼球運動障害・嚥下障害・構音障害・意識障害・呼吸停止など引き起こす可能性もあります。
また厄介なことに、脳幹は頭蓋のより深部に位置する部位であるため、手術で直接的に止血したり、血腫を除去することが困難であることから、限定的な条件下でしか手術療法は選択されません。
そのため、一度生じた神経症状とは、後遺症としてその後も付き合っていく必要性が高いです。
そこで重要となるのがリハビリテーションであり、効率的なリハビリテーションのためには、より早期から介入し、フェーズに見合った負荷・目標のリハビリテーションの計画・実施が最も重要です。
脳幹出血後のリハビリテーションは主に3段階に分けられます。
脳幹出血後のリハビリテーション
- 急性期
- 回復期
- 維持期
急性期
急性期とは脳出血発症からまだ病状が不安定な時期を指し、発症後概ね2週間〜1ヶ月を指します。
これまで、急性期は血圧変動などを避けるために安静に過ごすことが主とされて来ましたが、近年ではリハビリ開始のタイミングが早ければ早いほど後遺症の回復状況が良いことが知られています。
そこで、早い場合は脳出血発症当日からリハビリを実施される方もいるくらいです。
病状によってリハビリの負荷も異なりますが、主に着衣や脱衣の練習・寝返りなどの体位変換・歩行器による歩行訓練などが行われます。
また、脳幹出血では嚥下障害が生じる可能性が高いため、誤嚥性肺炎予防の嚥下訓練や口腔ケアも実施されます。
急性期のリハビリ目標は、ベッドで寝たきりにならないようにして、次の回復期へ移行することです。
回復期
回復期とは、脳出血の急性期を経て病状は安定したものの、後遺症の症状は固まりきっていないため、リハビリ次第で予後にも影響が出る時期です。
脳出血発症後、数週間〜数ヶ月の時期を指し、自宅復帰を目指して日常生活に必要な動作や機能の回復を目指します。
リハビリテーションを専門とする「回復期リハビリテーション病棟」に移り、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士とともに、症状に見合ったリハビリプログラムを実施します。
脳幹出血では構音障害をきたす可能性も高く、言語聴覚士による発声・発音練習なども社会復帰のために肝要です。
維持期
維持期とは、医療機関から自宅などに戻った後の期間であり、発症から数ヶ月以降を指します。
この時期には、回復期で取り戻した機能の維持や、社会復帰のための訓練を行います。
場合によっては訪問作業療法の手を借りつつ、体力の維持・向上などを目指します。
軽度の脳幹出血と回復のプロセス
一般的に、軽度の脳幹出血、具体的には発症時の出血量が少なく、意識状態が良好で、麻痺も軽度の脳幹出血であれば、回復が見込めます。
とはいえ、爪や髪の毛の細胞のように切ってもすぐに再生するわけではないため、脳細胞における回復とは、細胞そのものの再生ではなく、あくまで機能の改善という意味合いが強いです。
例えば下肢の麻痺であれば、リハビリによる関節可動域の強化や周囲の支持組織の強化によって、歩行機能を改善するわけです。
脳幹出血に伴う後遺症からの回復のためには、急性期はもちろん、回復期・維持期の継続的なリハビリテーションが必要不可欠となります。
まとめ
今回の記事では、脳幹出血後のリハビリテーションについて詳しく解説しました。
脳幹出血は他の部位の脳出血とは異なり、発症部位が脳深部であるため外科的アプローチが困難であり、後遺症改善におけるリハビリテーションの重要性も大きいです。
より早期にリハビリテーションを実施し、その後の回復期・維持機における適切な負荷のリハビリテーションが非常に肝要です。
また、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、脳幹の細胞の機能改善・再生が期待されます。
よくあるご質問
脳幹出血から回復するにはどうしたらいいですか?
脳幹出血の後遺症から少しでも回復するためには、急性期から可能な限り積極的にリハビリテーションを実施することが肝要です。
リハビリテーションは早く始めれば始めるほど良いとされています。
また、急性期を脱しても回復期・維持期と継続したリハビリが重要です。
脳幹出血の後遺症は?
脳幹出血の後遺症は、麻痺などの運動障害・しびれなどの感覚障害をはじめ、構音障害や嚥下障害などが挙げられます。
また、眼球や顔面の運動も障害されることがあります。
特に嚥下障害は、誤嚥性肺炎を併発するリスクが高まるため、注意が必要です。
関連記事
このページと関連のある記事
2024.05.28
脳幹出血後遺症のリハビリテーション治療
脳幹出血は出血量が多いと脳出血の中でも最も重症で予後不良となることが多い病気といわれています。状態により重症度は様々ですが、早期より関節可動域訓練実施や離床を進め、拘縮を始めとした廃用症候群を予防することが重要です。また、促通反復療法を取り入れ、脳の可塑性による新たな神経回路の形成を促すアプローチも...
<参照元>
・回復期リハビリテーション.net:
https://kaifukuki.doctorsfile.jp/sick/02
・慶應義塾大学病院:
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000220.html
コメント