要点変形性股関節症は、股関節を過度に曲げる動作や内側に捻る動作などの禁忌肢位に注意が必要です。
禁忌肢位と合わせて禁忌肢位を避けるための日常生活上のポイントを正しく理解することは、変形性股関節症の進行防止の一助となります。
この記事では、変形性股関節症の禁忌肢位とリハビリ、また近年注目されている「再生医療」について解説します。
目次
変形性股関節症とは?
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り骨同士がぶつかることから引き起こされる疾患です。
原因は、股関節の原因は、股関節の受け皿(臼蓋)が生まれつき浅い臼蓋形成不全が全体の80%を占め、残りは加齢や外傷、関節への負担が長期間続いたことによる発症です。
症状は、初期段階の場合運動や長時間の歩行後に痛みやこわばりを感じる程度です。
症状が進行すると、股関節の可動域制限により日常生活動作へ支障をきたし、日常の歩行時や夜間の痛み、関節のこわばりがより強くなり、重度の場合は人工関節への置換術が適用となります。
肥満や、特定の動き・姿勢をとるスポーツや職業は変形性股関節症のリスクが大きくなるため十分注意しましょう。
変形性股関節症は、早期発見と適切な治療が重要な疾患です。
変形性股関節症|禁忌肢位とは?
変形性股関節症には、取ってはいけない姿勢(禁忌肢位)があります。
変形性股関節症の禁忌肢位は、以下の通りです。
- 膝を内側に傾けた姿勢:割り座(女の子座りとも言われる)や横座り
- 股関節を深く屈曲した姿勢:しゃがむ姿勢や長時間の跪座(ひざまずくこと)
- 股関節を捻る姿勢:足組みなど。ゴルフやテニスなど股関節を捻る動作を伴うスポーツも避ける
禁忌肢位を避けること以外にも、長時間同じ姿勢を取らない、寝る際は横向きか仰向け(膝下にクッション等を入れるのが望ましい)を心がけるなど変形性股関節症の悪化を防ぐ方法があります。
変形性股関節症の進行・悪化を防ぐため、普段の生活からできることを取り入れましょう。
変形性股関節症|禁忌肢位を避けるためのポイント
日常生活の中で少しでも股関節の痛みや違和感を感じたら、その姿勢や動作を避けて股関節への負担を少しでも減らせる方法に変更してください。
しかし、日々の生活の中で全ての禁忌肢位を排除して暮らすことは非常に困難です。
そこでこの章では、禁忌肢位を可能な限り避けるためのポイントを紹介します。
禁忌肢位を理解・意識する
日常生活の中で禁忌肢位を完全に排除することは困難ですが、禁忌肢位を取り続ける事は関節の損傷や痛みの増悪を招きかねません。
そのため重要なのは、「禁忌肢位を理解し、普段から意識する」ことです。
今まで長年行ってきた姿勢や動作は、無意識に出てしまうものです。
医師やリハビリ専門職からの指導の元、禁忌肢位を正しく理解し股関節への負担が大きい動作を減らしていきましょう。
環境を整える
生活様式を和式から洋式に変更することは、禁忌肢位を避けるために大変有効な手段です。
和式から洋式への生活様式の変更例は以下の通りです。
- 正座や胡座(あぐら)から椅子座位への変更
- 和式トイレから洋式トイレへの変更
- 布団から、ベッドやマットレスへの変更
など
毎日の禁忌肢位を避けた動作の積み重ねが、股関節の炎症や疼痛の進行に大きく影響します。
家族様にも変形性股関節症・禁忌肢位を理解してもらいながら、可能なことから取り入れていきましょう。
変形性股関節症|リハビリテーションの重要性
変形性股関節症のリハビリは重要です。
適切なプログラムにより、筋力や関節の柔軟性を改善し、動作能力の維持、改善を図ります。
また、日常生活の中で行う動作を確認し、避けるべき禁忌肢位や代償動作を学びます。
リハビリ内容は、主に以下の内容を実施します。
- 関節可動域訓練
- 筋力維持、増強訓練
- 動作指導
- 自主トレーニング指導
など
変形性股関節症は、リハビリにより痛みの緩和や動作改善、生活の質の向上が期待できます。
自己流の運動は、気がつかないうちに股関節への負担がかかりすぎたり無理な姿勢を取っていたりと、悪化の原因になってしまう場合もあるので正しい指導を受けることをおすすめします。
また、病院やクリニックで受けるリハビリの施術に加えて、自宅でもできるエクササイズやストレッチを痛みのない範囲で継続することで、リハビリ効果はさらに大きくなるでしょう。
まとめ
変形性股関節症は、股関節内の軟骨がすり減ることによって、疼痛や日常生活動作不全が引き起こされる疾患です。
すり減ってしまった軟骨は元に戻すことはできず、人工股関節への置換術を施行したとしても、術後の感染症や股関節脱臼などのリスク、また股関節の関節可動域や日常生活動作に制限があります。
そこで近年、変形性股関節症の治療法として注目されているのが「再生医療」です。
再生医療とは、ご自分から採取した細胞を増殖させ再び患部に移植することで、軟骨や骨などの組織を再生することができる治療法です。
変形性股関節症に対する再生医療は幹細胞治療が主流で、治療には高い技術が求められますが、股関節の人工関節術を回避し痛みを軽減する可能性があります。
幹細胞治療は、患者自身の細胞(脂肪など)から幹細胞を培養するため、他の採取方法と比べて安全性が高く副作用のリスクや身体への負担が少ないのが特徴です。
変形性股関節症に対する再生医療は、従来懸念された様々な負担やリスクを減らした最先端治療の選択肢の1つと言えます。
よくあるご質問
Q:変形性股関節症の禁忌肢位は?
A:割り座(股関節を曲げ膝を内側に捻る動作)は禁忌肢位です。
また、胡座(あぐら)や股関節を過度に曲げる姿勢(正座やしゃがみ動作)も股関節への負担が大きいため避けましょう。
Q:変形性股関節症のリハビリはどんなことをしますか?
A:ストレッチや筋力強化訓練を中心に、禁忌肢位を避けた日常生活動作や自主トレーニングの指導を行います。
炎症や疼痛に注意しながら慎重に進め、機能改善と生活の質の向上に努めます。
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<参照元>
・公益社団法人 日本整形外科学会HP
変形性股関節症について:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html
・医療法人石井会 石井病院
変形性股関節症の再生医療について:https://www.ishii.or.jp/regeneration
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