なぜ脳卒中後に装具を使うことが勧められるか
歩行を改善するための装具とその種類
生活レベルに合わせた装具使用の具体例
脳卒中後は後遺症で運動麻痺が出現することが多く、退院時にそのままでは歩けなかったり、歩けても歩きづらさが残ってしまうことがあります。
装具を適切に使用することで歩行を改善できることがあります。
この記事では、脳卒中後に装具を使用する理由と装具の種類を生活レベルに合わせた使用例を挙げて解説します。
目次
なぜ脳卒中後の歩行に装具を使用するのか

脳卒中を発症すると運動麻痺が現れることがあります。
中でも筋肉が突っ張ってしまう痙縮(けいしゅく)は運動麻痺の症状の中でも生活動作に大きな影響を与えます。
運動麻痺は経過の中で徐々に改善しますが、後遺症として脚の動かしにくさや筋力の低下が残ることがあります。
脚が思ったように動かないと、歩く時に躓きや体重をうまく支えられなくなることがあり、転倒のリスクが上がります。
その際に、低下した筋力や思ったように動かなくなってしまった足を補助する装具を使用することで、安定して歩けるようになることがあります。
脳卒中の治療指針を示した脳卒中治療ガイドライン2021改定2025でも、脳卒中の後遺症の痙縮に対して装具を使用することを推奨しています。
しかし、症状に合っていない装具を使用すると歩きづらさや転倒のリスクが上がるため、注意が必要です。
ちなみに装具は脳卒中を発症後すぐのリハビリテーションに使用する治療用装具と、生活を行いやすくする目的の更生用装具の2種類に分かれますが、この記事では更生用装具について解説します。
歩行を安定させる装具の代表的な種類
脳卒中後に使用する装具は様々な種類があります。
中でも足首の関節の機能によって制限、制動、遊動のそれぞれの機能をもつ装具に分けることができます。
- 制限:関節がある一定の角度で止まります。
装具では足が固定されます。 - 制動:関節の動きがゆっくりになるようにブレーキをかけます。
踏み込んだ際に装具によって足がゆっくりと動きます。 - 遊動:関節の動きに影響を与えません。
装具をつけていても遊動方向には制限なく動きます。
装具の種類によって使用する関節の機能が変わるため、目的によって選ぶ装具を検討します。
また、素材によってもそれぞれの機能の強さが変わります。
主に装具は金属もしくはプラスチックでできています。
同じ足部を制限する装具でも、金属を使用した両側金属支柱付き下肢装具とプラスチック装具のシューホーンブレイスでは金属装具の方が固定する力が強いです。
そのため、痙縮の重症度によってどちらを使用するかが変わります。
症状や生活レベル別のおすすめ装具
ここからは生活シーンによって使用する装具を紹介します。
痙縮が強く体重を乗せることが難しい場合
痙縮が強く体重を乗せること自体が難しい場合は足の関節を強固に固定できる金属支柱付き短下肢装具を使用します。
もし、プラスチック装具でも固定が可能な痙縮の程度であればシューホーンブレイスも検討します。
装具を使用し体重を乗せることができれば、安定性の高い四点杖などの体重を預けやすい杖を使用して歩行します。
これらの装具を使用する場合は足の関節を固定しているため、屋内をゆっくり転倒しないように歩くことを目指します。
痙縮はあるが関節可動域の制限がない場合
痙縮があっても関節可動域が制限されていない場合はプラスチック装具の中でもジレットを使用します。
ジレットは足の関節を上方向には遊動、下の方向を制限する装具です。
上方向が遊動のため、歩幅を大きくした際に装具が邪魔にならないようにできています。
また、下方向は制限されているため足を前に振り出す際に躓きにくくなります。
この装具を使用する際は屋外での歩行で使いやすい一本杖を使用して、歩幅を大きくしながら歩きやすくなります。
痙縮の症状は少ないが重心移動がぎこちない場合
痙縮が少なく、麻痺している脚が着いてからすぐに膝が伸び切ってしまうような歩行になる場合は金属支柱付き短下肢装具のゲイトソリューションを使用します。
脚が地面に着いてすぐに膝が伸び切ると、歩く速度が低下するだけでなく膝への負担が大きくなってしまいます。
この現象の修正のために使用するゲイトソリューションは上方向には遊動、下方向には制動の機能を持っている装具です。
歩行では麻痺している側の踵が地面についた際に急激に足の裏が地面に着くことを防ぎ、足の動きが滑らかになるのを補助します。
また、制動の強さは設定することができ、それぞれの障害度合いによって調整をすることができます。
ゲイトソリューションは一本杖もしくは、歩行補助具なしで屋外を速いスピードで歩く場合に適しています。
これらの例のように、装具にはそれぞれ適応と特徴があるため、医師や理学療法士などの専門職とどの装具を使用するかを相談しましょう。
まとめ
この記事では歩行がしやすくなる装具の選び方について、例を挙げながら解説しました。
脳卒中後は痙性や筋力低下などの運動機能に後遺症が残ることがあり、運動機能を補うために装具を使用します。
装具には種類があり、目的によってどの装具を使用するかを決定します。
脳卒中で残存した神経障害の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 装具は全額自己負担で作りますか?
- 装具を作る際は入院中であれば治療用の装具が1つ、更生用装具が1つ医療保険を適用して作成することができます。
作成する場合は始めに装具の料金を一旦支払った後、市役所などに申請を行い、それぞれの自己負担割合に応じた金額が返金されます。 - 装具が壊れた場合はどうしたらいいですか?
- 装具が壊れた際は作成した義肢装具会社に連絡をとるか、装具外来を行っている病院を受診します。
耐用年数は種類によって変わりますが、概ね1年半とされているため1年半程度同じものを使用した後に、再度医療保険を使用して作成し直すことができます。
<参照元>
(1):脳卒中治療ガイドライン2021改定2025:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf
(2):下肢装具のバイオメカニクス|J-stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo/38/3/38_199/_pdf/-char/ja
(3):春名 弘一ら 油圧制動短下肢装具Gait Solutionの継続使用による脳血管障害片麻痺者の歩行変化|J -stage 理学療法科学 26(5): 673–677, 2011:https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/26/5/26_5_673/_pdf/-char/ja
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