・進行性核上性麻痺の症状
・進行性核上性麻痺に対してのリハビリテーションの重要性
・具体的なリハビリ方法
進行性核上性麻痺は進行性の神経変性疾患です。
病気の進行とともに身体機能が低下し、寝たきりになります。
身体機能を少しでも保てるように、リハビリテーションを行うことがとても重要です。
この記事では、進行性核上性麻痺の方に対してのリハビリテーション方法、ご家族が出来る関わりを具体的に説明しています。
目次
進行性核上性麻痺のリハビリテーションの重要性
進行性核上性麻痺(PSP:progressive supranuclea palsy)は脳の神経細胞が徐々に減少し、様々な症状が現れる指定難病の神経変性疾患です。
パーキンソン病と比べて進行が早く、根本的な治療法はありません。
発症年齢の多くは60歳代です。
男性の方が多い傾向にあり、日本における有病率は人口10万人当たり10~20人程度で、増加傾向にあります。
進行性核上性麻痺の症状
進行性核上性麻痺の症状を以下にご紹介します。
- 歩行障害:この疾患の最も特徴的な症状が初期の段階から何度も転倒を繰り返すという点です。
転倒の際にとっさに手を出して支える反射が起こりにくくなるため、顔面や頭部に大きな怪我をしてしまうことがあります。
歩行しようとしても足がすくんで前に出しづらくなったり、歩いているうちにスピードが速くなってしまう症状もあり、転倒しやすさの原因とも考えられます。 - 眼球運動障害:「垂直性核上性注視障害」と呼ばれる眼球の運動障害が出現します。
上下方向への眼球運動が障害されることによって、さらに転倒しやすくなってしまいます。
進行するにつれて左右の眼球運動も障害され、眼球が正中位から動かせなくなくなってしまうこともあります。 - パーキンソニズム:進行性核上性麻痺におけるパーキンソニズムは、パーキンソン病で出現する症状とは少し異なるのが特徴です。
進行性核上性麻痺では固縮が頚部体幹に強く発現します。
また、パーキンソン病と違って、初期には動きが鈍くても、関節が固くて動かしにくいということはないのが一般的です。
動きが止まった状態から突然立ち上がったりすることもあるので、転倒に注意しなければなりません。 - 構音障害・嚥下障害:初期の段階から構音障害による喋りづらさが見られます。
嚥下障害は、発症後3~5年程度で出現するといわれています。 - 認知障害:前頭葉性の認知障害を中心とした症状が出現します。
情動や性格に変化が生じて無気力・無関心になったりします。
危ないから一人で動かないようにと伝えても、一人で動いて転んでしまうことがあります。
その場になると状況判断ができず、環境依存的に行動してしまう傾向があります。
リハビリテーションの重要性
進行性核上性麻痺の根本的な治療はまだありません。
パーキンソン病の治療薬や抗うつ薬が効く場合もありますが、一時的な効果しかありません。
症状の軽減や進行予防のためには、リハビリテーションを行うことが非常に重要となってきます。
PSPに特化したリハビリテーションの方法
進行性核上性麻痺では、体や首が硬くなったりバランス能力が低下したりするため、転倒リスクが高くなります。
また、進行するにつれて体が動かしにくくなると、筋力低下にもつながります。
リハビリでは、できるだけ身体の運動機能を維持できるように、様々なトレーニングを行います。
自主練習する際は、ご家族の見守りのもとで転倒しないように注意して行いましょう。
ストレッチ
体幹、足首の固さが見られたり、頸部が後方に反ってしまうことがあるため、筋肉や関節が固くならないようにストレッチを行います。
以下の運動をゆっくり行い、10秒程度保持します。
- 頸部の前屈運動(椅子座位)
- 頸部の左右回旋運動(椅子座位)
- 体幹前屈運動(椅子座位)
- アキレス腱伸ばし(立位)
筋力トレーニング
病気の進行とともに体を動かしにくくなると、筋力低下につながります。
筋力が落ちて姿勢が歪んでしまわないように、筋力トレーニングをします。
以下の運動をゆっくり行い、10秒程度保持します。
- お尻上げ運動(仰向け、膝立て姿勢)
- 足上げ運動(仰向け)
- 膝伸ばし運動(椅子座位)
バランストレーニング
病気の進行とともにバランスを保つことが難しくなるため、バランストレーニングを行います。
転倒しないように、手すりにつかまったりテーブルに手をついて行いましょう。
以下の姿勢を10秒程度保ちましょう。
- スクワット
- 片足立ち
- つま先上げ
- 踵上げ
歩行訓練
歩行機能を出来るだけ長く保てるように、歩行訓練を行います。
バランスが不安定となり、転倒のリスクもありますので、状態によっては歩行補助具を導入します。
リハビリ担当者に相談して、状態に合った歩行補助具を選んでもらいましょう。
進行性核上性麻痺患者に家族が自宅でできること
進行性核上性麻痺になると、転倒が非常に多く、病気が進行して歩行できなくなってからも車椅子やベッドからの転倒が生じます。
そこで、家族は環境整備を行い、患者が安全に生活できるようにしていく必要があります。
歩き出しや歩行中、方向転換時などに転びやすいため、身の回りを整理して、周囲に躓きそうなものがないかチェックしましょう。
家具の角に足をぶつけることもあるので、クッションテープで覆うなど工夫すると良いでしょう。
いつも使うものは手の届くところに置いたり、落ちないような工夫も必要です(例:ティッシュは滑り止めを下に敷いて置く)。
また、トイレに行きたくなって、慌てて一人で行こうとして転倒するといったような、排泄関連での転倒が多く聞かれます。
排泄パターンをある程度把握し、余裕をもってトイレに誘導したり、トイレに行きたくないか声かえをすることも大切です。
まとめ
進行性核上性麻痺は進行性の神経変性疾患であり、根本的な治療はなく、治療薬による効能も一時的です。
病気の進行と共に身体機能が低下してしまうため、身体機能を少しでも維持するためにリハビリテーションを行うことが重要と考えられています。
神経そのものの治療が必要とされるなか、注目されているのが再生医療です。
ニューロテックでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害の軽減を目指します。
進行性核上性麻痺に対しても再生医療の対象となりますので、興味のある方は是非ご連絡ください。
よくあるご質問
- 進行性核上性麻痺のケアは?
- 1人でトイレに行こうとして転倒してしまうことが多いため、排泄パターンに合わせて前もってトイレに行くか声かけをして促すようにしましょう。
他にも、入浴時は目を離さないようにするなど、転倒に対してのリスク管理を徹底します。 - 進行性核上性麻痺の環境調整とは?
- 転倒リスクが高いため、つまずきやすい物はよけておきましょう。
テレビのリモコンなど日常で良く使うものは手の届く所に置くようにし、落ちないような工夫も重要です。
トイレやベッドに手すりを設置し、起立、歩き出しや姿勢変換時に動作が安全に行えるようにしましょう。
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<参照元>
・日本神経治療学会:進行性核上性麻痺 診療ガイドライン2020:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/37/3/37_435/_pdf/-char/ja
・健康長寿ネット:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/parkinson/mahi.html
・難病情報センター:進行性核上性麻痺 診断とケアマニュアル:https://plaza.umin.ac.jp/neuro2/pdffiles/PSPv4.pdf
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