頸椎損傷の予後を改善するためのリハビリとは

頸椎損傷に対する効果的なリハビリテーションの紹介

脊髄は、脳からの指令を手足の細い神経に伝える太い神経の束のようなものです。
強い力で脊椎が折れたりずれたりすると、その中の脊髄も一緒に損傷を受けてしまうことがあります。
これが、脊髄損傷です。
脊髄損傷の中でも、損傷が首のあたりにある頸髄のレベルで起こるものを頸髄損傷といいます。
脊髄損傷は、日本では年間約5,000人の方に起こっています。
20歳代と60歳代に多く、頸髄6割、胸腰髄4割程度となっています。
日本では高齢者が転倒し脊髄損傷が起こってしまうことが多く見られます。
脊髄損傷の病型分類には、横断型、中心性脊髄型、ブラウン・セカール型、前脊髄動脈症候群型など、さまざまなものがあります。
頸髄損傷を受けた部位によって、可能となる日常生活動作も異なります。
例えば、第2〜4頸髄レベルでは、日常生活はほぼ全介助となります。
一方で、第7頸髄レベルでは、着替えや自動車の運転は可能となります。
この頸椎損傷後のリハビリテーションは、さまざまなアプローチを組み合わせることが求められます。
まず、リハビリの初期段階では、損傷した部位を保護しながら、筋肉の硬直を防ぐための軽いストレッチングや関節運動を行います。
この段階では、専門の理学療法士が患者の状態を慎重に評価し、個別のプログラムを作成することとなります。
次に、患者がある程度の回復を見せ始めた段階では、筋力強化訓練や持久力向上のためのエクササイズを導入します。
例えば、軽いウエイトトレーニングや有酸素運動が有効です。
また、バランストレーニングや姿勢の改善も重要な要素であり、特に日常生活での動作を円滑に行うための訓練が含まれます。
さらに、頸椎損傷の患者には心理的サポートも欠かせません。
損傷後の心理的ストレスや抑うつ状態を軽減するために、カウンセリングやグループセラピーが効果的です。
これにより、患者は自身の回復に対する前向きな態度を持つことができます。

リハビリ中に必ず注意すべき３つのポイント

頸椎損傷のリハビリテーション中には、以下の三つのポイントに特に注意する必要があります。

痛みの管理

リハビリ中に痛みが生じることは避けられませんが、無理をして痛みを我慢することは逆効果です。
痛みを感じたらすぐに医療スタッフに報告し、適切な処置を受けることが重要です。

定期的な評価とプログラムの調整

頸髄損傷が起こってしまったばかりでは、麻痺の状態は流動的です。
特に、不全麻痺（完全に麻痺しているわけでは無い）の患者さんにおいては、時間ごとに症状が変化します。
そのため、麻痺の症状やリハビリの進行状況を定期的に評価し、その結果に基づいてプログラムを適宜調整することが必要です。
これにより、患者さんの状態に最適なリハビリを継続的に提供できます。

自己管理と家族のサポート

リハビリは患者自身の努力だけでなく、家族のサポートも不可欠です。
家族が積極的にリハビリに関わり、患者を励ますことで、回復へのモチベーションを高めることができます。

頸椎損傷への幹細胞治療とリハビリの効果

幹細胞治療は、損傷した神経組織を再生するために幹細胞を用いる治療法です。
幹細胞は自己複製能力と多分化能を持ち、特定の条件下で神経細胞や支持細胞に分化することができます。
頸椎損傷に対する幹細胞治療の主な目標は、損傷部位の神経再生を促進し、機能回復を図ることです。
幹細胞治療の基本的な方法は、以下の通りです。

幹細胞は損傷した神経組織に分化し、神経回路の再構築を促進します。
特に、間葉系幹細胞（MSC）や神経幹細胞（NSC）は、神経細胞や支持細胞に分化する能力が高く、損傷部位での神経再生を助けます。
また、幹細胞は抗炎症効果を持ち、損傷部位の炎症を抑制します。
これにより、損傷部位の環境が改善され、神経再生が促進されます。
特に、間葉系幹細胞は免疫反応を調整し、炎症を軽減する効果があります。
幹細胞は神経保護効果を持ち、既存の神経細胞を保護します。
これにより、損傷の進行を防ぎ、機能回復が促進されます。
幹細胞治療とリハビリテーションを組み合わせることで、より高い回復効果が得られます。
幹細胞治療により再生された神経組織が、リハビリを通じて適切に機能するようになるためです。
幹細胞治療後、再生された神経組織はリハビリを通じて刺激を受けることで、機能が向上します。
例えば、筋力トレーニングや関節運動を行うことで、再生された神経回路が強化され、運動機能の改善が促進されます。
幹細胞治療とリハビリを組み合わせることで、長期的な機能改善が期待できます。
治療直後の回復だけでなく、長期的なフォローアップを行うことで、持続的な機能回復が可能になります。
特に、幹細胞治療によって再生された神経組織が、リハビリを通じて継続的に刺激を受けることで、長期的な機能維持が図られます。

まとめ

頸椎損傷の予後を改善するためには、効果的なリハビリテーションが欠かせません。
適切なプログラムを構築し、痛みの管理や定期的な評価を行うことが重要です。
また、幹細胞治療とリハビリを組み合わせることで、より高い回復効果が期待できます。
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頸髄損傷に対する再生医療とリハビリテーションについてご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。

＜参照元＞
・脊髄損傷者に対するリハビリテーション.Spinal Surgery.2016;30(1):58-67.：https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/1/30_58/_pdf
・脊髄損傷｜一般社団法人日本脊髄外科学会：https://www.neurospine.jp/original62.html
・「脊髄損傷」｜日本整形外科学会 症状・病気をしらべる：https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html
・脊髄損傷後のリハビリテーション – MSDマニュアル家庭版：https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
・脳梗塞と脊髄損傷の再生治療　厚生労働省：https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai18/siryou6.pdf
・脊髄損傷の再生医療とリハビリテーション(2).Jpn J Rehabil Med.2017;54:726-728.：https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/9/54_726/_pdf

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