MOG抗体関連脊髄炎のケアと予後のQOLを向上させる方法

脊髄炎で日常生活で気をつけるべきポイント

ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白（myelin oligodendrocyte glycoprotein：MOG）は、中枢神経の髄鞘（ずいしょう、つまり神経を取り巻くさやのようなもの）を構成する蛋白質の一つで、髄鞘の最外層に発現する免疫グロブリン構造を有する膜蛋白質です。
最近、このMOGを標的とする自己抗体であるMOG 抗体が中枢神経に炎症性病変を生じるうることが報告されるようになり、MOG抗体関連疾患（MOG-IgG associated disorders：MOGAD）として新たな疾患概念が確立しつつあります。
MOG抗体関連疾患の中でも、炎症が脊髄に発生したものをMOG抗体関連脊髄炎（Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody-Associated Disease: MOGAD）と呼びます。
MOGADは、脊髄の炎症を引き起こし、様々な神経症状をもたらす自己免疫疾患です。
この疾患と共に生活するためには、日常生活の中でいくつかの重要なポイントに注意することが必要です。
まず、定期的な医療チェックが不可欠です。
MOGADは慢性的な経過をたどることが多く、症状の悪化や新たな症状の出現を早期に発見するために、専門医による定期的な診察が求められます。
MRIなどの画像診断を定期的に受けることで、脊髄の状態をモニタリングすることも重要です。
次に、適切な薬物療法を継続することが必要です。
ステロイドや免疫抑制剤が一般的に使用され、炎症を抑えるとともに、病気の進行を遅らせる効果があります。
薬の副作用を管理するためにも、医師の指示に従って定期的に検査を受けることが重要です。
また、日常生活においては、無理のない範囲での適度な運動が推奨されます。
リハビリテーションの一環として、物理療法士や作業療法士の指導のもとで筋力を維持し、関節の柔軟性を保つ運動を行うことが効果的です。
これにより、二次的な障害の発生を防ぎ、全体的な生活の質（Quality of Life: QOL）を向上させることができます。
さらに、バランスの取れた栄養摂取も重要です。
抗炎症作用を持つオメガ3脂肪酸や抗酸化物質を豊富に含む食品を積極的に摂取し、体の免疫機能をサポートすることが大切です。
ビタミンDの不足は自己免疫疾患のリスクを高めるとされているため、日光浴やサプリメントを活用して適切なビタミンDの摂取を心がけましょう。
心理的なサポートも忘れてはなりません。
慢性的な病気に伴うストレスや不安は、症状を悪化させる可能性があります。
カウンセリングや心理療法を受けることで、精神的な負担を軽減し、前向きな気持ちを保つことができます。
最後に、感染症の予防にも注意が必要です。
免疫抑制剤を使用している場合、感染症に対する抵抗力が低下するため、日常的な手洗いやうがい、適切なワクチン接種などを徹底することが求められます。
風邪やインフルエンザの流行時には、外出を控えるなどの予防策も考慮しましょう。

家族のサポートが重要な理由

MOG抗体関連脊髄炎を抱える患者にとって、家族のサポートは非常に重要です。
家族は患者の日常生活を支え、精神的な安定を保つための重要な役割を果たします。
まず、患者が治療を継続するためには、家族の理解と協力が欠かせません。
病院への通院やリハビリテーションのスケジュール調整、薬の管理など、患者自身では難しい部分を家族がサポートすることで、治療の効果を最大限に引き出すことができます。
また、心理的なサポートも重要です。
MOGADは慢性的な疾患であり、症状の変動や治療の副作用などにより、患者はストレスや不安を感じることが多いです。
家族が理解と共感を示し、患者の話を聞くことで、精神的な負担を軽減し、前向きな気持ちを保つことができます。
さらに、家族が一緒にリハビリテーションに参加することも有効です。
共に運動やエクササイズを行うことで、患者は孤独感を感じることなく、モチベーションを維持することができます。
家族がリハビリの進捗を共有し、励まし合うことで、より良い成果を上げることができるでしょう。

再生医療とリハビリで見える新たな希望

近年、再生医療とリハビリテーションの進歩により、MOG抗体関連脊髄炎の患者に新たな希望が見えてきました。
再生医療は、損傷した組織や神経を修復することを目的とし、リハビリテーションは機能回復をサポートします。
これらの治療法を組み合わせることで、患者の生活の質を大幅に向上させることが期待されています。
再生医療には、幹細胞治療や遺伝子治療などが含まれます。
幹細胞治療は、患者自身の幹細胞を用いて損傷部位に移植し、神経の再生を促進する方法です。
この治療法は、まだ研究段階ではありますが、初期の臨床試験では有望な結果が報告されています。
将来的には、MOGAD患者に対する治療選択肢として確立される可能性があります。
一方、リハビリテーションは、患者の機能回復をサポートするために欠かせません。
リハビリテーションには、物理療法、作業療法、言語療法などが含まれ、患者の具体的な症状やニーズに合わせてプログラムが組まれます。
特に、神経リハビリテーションは、損傷した神経の再生を促し、機能回復を支援する重要な役割を果たします。
再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで、MOGAD患者の生活の質を向上させることが可能です。
再生医療によって損傷部位が修復されることで、リハビリテーションの効果がより高まり、患者の機能回復が加速します。
また、リハビリテーションを通じて日常生活の動作を改善することで、患者はより自立した生活を送ることができるようになります。

まとめ

再生医療とリハビリテーションの進歩により、MOGAD患者に新たな希望が見えてきました。
再生医療は損傷した組織や神経を修復し、リハビリテーションは機能回復を支援します。
これらの治療法を組み合わせることで、患者の生活の質を大幅に向上させることが期待されます。
今後の研究と技術の発展により、より多くの患者がこれらの治療法の恩恵を受け、より良い生活を送ることができるようになるでしょう。
当院ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害の軽減を目指します。
脊髄炎に対するリハビリや再生医療においても、今後さらなる知見が望まれるでしょう。

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＜参照元＞
・抗 MOG 抗体関連疾患の臨床像.Neuroinfection.2022;62(27): 60-63.：https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnd/27/1/27_60/_pdf
・（症状編） 多発性硬化症（MS）視神経脊髄炎（NMOSD）MOG抗体 関連疾患（MOGAD）日本神経学会：https://www.neurology-jp.org/public/disease/ms_nmosd_mogad.html