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フレイル予防を目的とした運動

この記事を読んでわかること
フレイル予防のための運動
フレイル予防のための運動をするコツ


フレイルは入院を必要とする病気や怪我の危険性を高め、入院後はさらに自立できなくなってしまう危険性がありますので、できる限り予防したいところです。
しかし、2012年に日本各地の65歳以上の方2,206名を対象に行った訪問調査によると、8.7%の人がフレイル状態にあることがわかりました。
さらに40.8%の方がフレイルになりかかっている、プレフレイルの状態であったこともわかっています。
このように高齢者にとって、社会問題ともなっているフレイルですが、早期に発見し生活習慣を改善することで、進行を防ぐことができることもわかっています。
そこで今回の記事では、フレイルの予防に役立つ運動について、ご説明したいと思います。

フレイル予防のための運動

フレイル予防を目的とした運動
フレイル予防のために、取り組むと良い運動についてご説明します。

有酸素運動

ウォーキングやスイミングを行う有酸素運動は、フレイル予防に非常に効果がある運動です。
有酸素運動がフレイルの予防に効果があると考えられているメカニズムには、最大酸素摂取量の改善と筋肉量の増加の2つがあります。
最大酸素摂取量は、激しい運動をしている時に測定される最大酸素消費率と定義され、持久運動能力や運動耐容能と密接に関連しています。
フレイルの男女64名を対象とした介入研究では、最高心拍数の約80%に達することを目標とした筋力トレーニングとウォーキングを9カ間実施したところ、最大酸素摂取量が14%改善し、持久力が向上することがわかりました。
また、健康な高齢の座りがちな女性を対象とした研究では、12週間の自転車エルゴメーターのトレーニングにより、最大有酸素能力がベースラインから30%向上することがわかりました。
この研究では、有酸素運動である持久力トレーニングをすることによって大腿四頭筋の筋肉量が12%増加したことも示されました。

レジスタンス運動(筋力トレーニング)

加齢とともに筋力が低下することはよく知られています。
さらに、筋肉量も加齢とともに減少します。
そして高齢者の筋力低下は、この加齢による筋肉量の減少に起因することがわかっています。
したがってフレイルを予防するために筋力を維持する、あるいは向上させるためのトレーニングが必要ですが、高齢者に強い負荷を要する筋力トレーニングは困難でしょう。
そこで推奨されるのがレジスタンス運動です。
これは筋肉に抵抗(レジスタンス)を加える動作を繰り返すことで、スクワットや腕立て伏せが該当します。
確かに10代や20代のときのように、筋肉が増えることは期待できませんが、レジスタンス運動に取り組むことによって、ある程度の筋肉量を増加させ、筋力も増加させることがわかっています。
41の論文を系統的に評価した研究では、高齢者のレジスタンス運動は筋力の向上と関連していること、また高齢者の運動能力もレジスタンス運動をすることで、向上することが示されています。
またその改善は、運動を反復して行うことでより改善効果が高いこともわかっています。

バランス訓練

バランス運動もフレイル予防には効果的です。
バランスをとる能力は、静止した状態の姿勢を保つことや動いているときに乱れた姿勢を元に戻すために必要となる能力です。
これが欠けていると、容易に転倒してしまい、大きな外傷につながります。
訓練には不安定な面上で安定した姿勢を保つトレーニングが一般的です。
バランスボールのような器具を使うことも有効です。
なおバランスボールに座って体を維持すると、体幹の訓練にもなりますし、股関節のストレッチなどにもつながります。

運動によるフレイル予防の効果を高めるためにできること

フレイル予防のための運動
では次に、運動を取り入れてフレイル予防に取り組む際に、さらに効果を高めるためにできることをご紹介します。

複数の種類の運動を取り入れること

フレイルの発症・進行を予防するためには、レジスタンス運動(筋力トレーニング)、バランストレーニングなどを組み合わせる、多因子運動プログラムが推奨されています。
また運動強度は個人に合わせて軽いものから徐々に上げていき、最終的には強い強度で行うことが重要です。
大腿骨骨折に対する手術を受けた高齢者を対象とした研究では、有酸素運動に加えて、徐々にレジスタンス運動の強度を強くする運動プログラムを指導者のもとで6カ月間実施したところ、歩行速度が平均で毎分19メートル向上し、バランスや筋力も効果的に向上した報告もあります。

食事をしっかりと取ること

運動をするとお腹が空きますが、しっかりと食事を取ることも重要です。
エネルギー源となる炭水化物、筋肉量をふやすためのタンパク質を意識して取るようにします。
なお夏場は汗をかき電解質を失いがちですので、イオン飲料も含めしっかりと電解質を補充しましょう。

グループで取り組むこと

一人で運動に取り組むと、長く続けるために強い意志が必要になります。
そこで、できる限り地域の知人・友人たちと一緒に活動することが一案です。
運動プログラムに参加すると、広範囲の人たちとの交流にもなり、フレイルで失われてしまうことが懸念される社会性の向上にもつながりますので、一石二鳥です。

まとめ

フレイル予防を目的とした運動についてご説明しました。
運動習慣のない方にはいきなり取り組むことは困難かもしれません。
その場合は、意識して階段を利用する、家事をしながらふくらはぎの強化を意識して爪先立ちをする、テレビや読書をするときにバランスボールを使うなど、手間をかけないでできることに取り組むとよいでしょう。
この記事が、フレイル予防に少しでも役立てば幸いです。

よくあるご質問

フレイル予防のために取り組むと良い運動とは?
フレイル予防のためには、ウォーキングやスイミングを行う有酸素運動や、レジスタンス運動(筋力トレーニング)が良いとされています。
また、バランス運動もフレイル予防には効果的です。

フレイル予防のための運動をするコツは?
運動を一人で行うのではなく、知人・友人たちと一緒にグループで活動すると長く続けやすいです。
フレイルに伴い、失われてしまうことが懸念される社会性の向上にもつながります。

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<参照元>
・Murayama H, et al. National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey. Archives of Gerontology and Geriatrics, 2020. Aug 9;91:104220.
・Ehsani AA, et al. Attenuation of cardiovascular adaptations to exercise in frail octogenarians. J Appl Physiol. 2003 Nov;95(5):1781–1788
・Harber MP, et al. Aerobic exercise training improves whole muscle and single myofiber size and function in older women. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2009 Nov;297(5):R1452–1459.
・Latham NK, et al. Systematic review of progressive resistance strength training in older adults. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2004 Jan;59(1):48–61
・Binder EF, et al. Effects of extended outpatient rehabilitation after hip fracture: a randomized controlled trial. JAMA. 2004 Aug 18;292(7):837–846.

<外部サイトの記事>小脳性運動失調の特徴とリハビリ




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