・脳幹梗塞のリハビリについて
・嚥下障害や呼吸障害に対する専門的ケアについて
・家族や介護者が知るべき支援制度
脳幹梗塞は生命維持に関わる脳幹に発生し、重篤な後遺症を伴う疾患です。
この記事では脳幹梗塞後のリハビリテーションや生活支援の重要性、運動機能回復のためのリハビリの進め方、嚥下障害や呼吸障害に対するケア、家族や介護者が理解しておくべき支援制度について詳しく解説します。
脳幹梗塞の後遺症と向きある方々に役立つ情報を提供します。
目次
脳幹梗塞後のリハビリと生活支援
脳幹とは大脳と脊髄を繋ぐ部分であり、中脳、橋、延髄の3つから構成されています。
脳幹は呼吸や循環、意識レベルの調整など生命維持に重要な役割を担っており、この部分を巡っている血管が詰まることで起こる脳幹梗塞では重篤な後遺症が残る可能性があります。
そのため、発症後のリハビリや生活をしていく上でさまざまな支援が重要となります。
脳幹梗塞後のリハビリ
脳幹梗塞の症状は梗塞の程度や部位により個人差がありさまざまですが、
- 運動麻痺
- 感覚障害
- 嚥下障害
- 言語障害
- 視覚障害
- 聴力障害
- 意識障害
などがあります。
脳幹梗塞のリハビリでは主に機能の回復と代償手段の獲得を目標に実施していきます。
機能回復は損傷した脳の部位の代わりに他の脳の部位を使って動作を獲得していくことを指し、代償手段の獲得は障害を補うために道具を使ったり環境を整えるなど別の方法を用いることを意味します。
生活支援のポイント
食事や排泄、入浴、移動といった日常生活動作(ADL)の補助やバリアフリーなどの環境整備、福祉用具の活用といった支援により自立した生活を送れる可能性が高まります。
また、家族や周囲の人の精神的な支えも患者のリハビリへのモチベーションや心理的ケアとして重要となります。
運動能力回復を目指したリハビリテーションの実践例
脳幹梗塞により歩行など日常生活動作が困難になります。
そのため、リハビリによる運動能力回復が重要となります。
運動機能回復のためのトレーニング
運動麻痺や筋緊張の異常により筋肉が硬くなり関節の可動域に制限が生じてきます。
そのため、ストレッチなどの関節可動域訓練を行います。
筋力低下の予防、改善のために筋力トレーニングを行います。
しかし、運動麻痺がある中での無理な筋力トレーニングは誤った動き方の学習に繋がってしまう可能性があるため、無理のない適切な負荷量で実施する必要があります。
座った姿勢や立った姿勢のバランスを向上させ、転倒を防止するためにバランス訓練を取り入れます。
また、日常動作の獲得のために歩行訓練や立ち上がり動作訓練などを実施していきます。
リハビリの進め方
リハビリは発症からの時期によって進め方が異なってきます。
発症直後から数週間の急性期ではベッド上での体位変換や徐々に起き上がり座位保持訓練を開始していきます。
発症後数カ月の回復期では本格的な歩行訓練や日常動作訓練などを積極的に取り入れていきます。
発症後半年以降の維持期では継続的な運動と社会復帰に向けた準備、取り組みを行っていきます。
嚥下障害や呼吸補助に対応する専門的ケア
脳幹梗塞の後遺症として嚥下障害や呼吸障害が生じることがあります。
これらの障害により自立した生活が難しくなるため、生活の質の向上に向けてしっかりと対応していく必要があります。
嚥下障害への対応
嚥下障害は誤嚥性肺炎のリスクを高めてしまうため、適切なケアが必要です。
まずは口腔内の感覚を刺激したり、舌の運動を促したりする嚥下訓練を実施します。
また、嚥下がしやすいようにとろみをつけた食事を準備するなど食事形態の調整も必要となります。
食事の際には姿勢も重要となります。
上を向いた姿勢や身体が前後左右に傾いている姿勢などは誤嚥しやすくなるため食事の前に必ず姿勢の調整が必要となります。
姿勢保持が難しい場合にはクッションを入れたり机の高さを調整したりして姿勢を安定させます。
呼吸補助の必要性
脳幹梗塞では呼吸障害が生じる可能性があるため、呼吸障害への対応も重要となります。
深呼吸や口をすぼめて呼吸の練習をするなど呼吸に対するリハビリを実施します。
また、痰が溜まると気道を塞ぎ呼吸困難に陥ることがあるため、吸引ケアも必要となります。
酸素が十分取り込めない場合には酸素療法を実施します。
呼吸筋の機能が著しく低下すると呼吸の維持が困難となり人工呼吸器が必要となる可能性があります。
家族や介護者が知るべき支援制度
脳幹梗塞の患者を支えるためには家族や介護者の支援が必要となります。
介護サービスや公的支援制度など活用できるサービスが多くありますので確認しておきましょう。
主な支援制度
介護保険制度は要介護認定をうけることで訪問介護やデイサービスなどを利用することが可能となります。
障害者総合支援法では身体障害者手帳を取得することで医療費の補助や公共交通機関の割引が受けられます。
また、高額療養費制度や難病医療費助成制度を活用することで医療費の助成を受けることができます。
住宅をバリアフリーに改修する場合にも助成金制度があるため活用することをおすすめします。
まとめ
この記事では脳幹梗塞後のリハビリや生活支援について解説しました。
脳幹梗塞後の運動機能、嚥下機能、呼吸機能の回復を目指したリハビリやさまざまな支援を活用することで生活の質を向上させることが可能です。
また、家族や介護者が支援制度を理解し、適切に活用することでより良いケアが実現できます。
リハビリや支援制度の他に最近ではもう1つの選択肢として再生医療が注目されています。
再生医療は、これまで難しかった損傷した組織や神経自体の修復を促進させることで症状の改善が期待できます。
再生医療とリハビリを組み合わせることで組織の修復と運動機能の改善が同時に得られることで効果を最大限に引き出すことができます。
最近では「ニューロテックⓇ」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んに行われています。
神経の再生を促す再生医療とリハビリを組み合わせた「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、今まで難治であった脳幹梗塞の後遺症の改善が期待できます。
再生医療も治療法の選択肢の1つになります。
よくあるご質問
- 脳梗塞のリハビリの重要性は?
- 運動機能や認知機能の障害を改善し、自立した日常生活を送るために重要です。
特に早い段階から始めることで機能回復が促進されやすく、日常生活での制約が最小限に抑えられます。 - 脳梗塞後の余命は?
- 脳梗塞を発症した年齢や重症度など個人差がありますが、50歳男性の平均余命は約20年、50歳女性は30年と言われています。
いずれも健康的な人の平均余命より約10年短くなっています。
<参照元>
・高次脳機能障害支援に関する制度|国立障害者リハビリテーションセンター:https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/seido/
・脳卒中発症登録者に対する生命予後の検討:https://www.pref.tochigi.lg.jp/e60/thecreport/2018/documents/0501-2018.pdf
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